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「SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと」チャールズ・ユウ著・円城塔訳:仮想空間+タイムマシンもの。円城塔が好きな人に♪ [本:SF]

SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

  • 作者: チャールズ・ユウ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/06/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7.5点

建造中に若干の損傷を受け、途中で開発計画を放棄された「マイナー宇宙(MU)31」。
作業が中止された時点で、物理法則は93%しかインストールされていなかったため、
予想不可の現象が起きる。
主人公チャールズ・ユウは、タイムマシンの修理とサポートの為、TM31-娯楽用タイムマシンに乗り、
サポートコンピューターのアニメのお姫様声で自己評価が低く泣き虫でも、一生懸命
のタミー(ビジュアル的には「眼鏡っこ」か?)と、不実在犬エドと一緒に、
「現在-不定形」の無時制の状態で10年近く過ごしている。
タイムマシン開発の研究をしていた主人公の父は時空のどこかに行ってしまい失踪。
母は、心を病み「60分の切り取られた時間の中」で、幸福な時間をループして過ごす施設で暮らす。

「タイムマシン」は、過去を窓から覗き見るようなもの・・・という設定なので、
タイムパラドックスものではなく、量子力学を基調とした多次元宇宙論がベース(?)。

舞台となる宇宙も、「タイム-ワーナー・タイム社」が所有する宇宙であり、
その宇宙に関して、「ニューヨークとロサンゼルスが不可視的に非可逆的にマージされ、
ハワイとアラスカも飲み込み、かつてアメリカであったものを包括した一つの巨大都市」
「グレーター・トウキョウが時空断層にそって自発的に分岐し、一つのトウキョウは地球を横断し、
もう一方は位置を確定されずロスト・トウキョウと呼ばれている」・・・と、部分的には
描かれているが、がっちり書かれているわけでもない。

きっちりしたハードSFではなく、後書きにあるように、SF風な純文学に近い内容。

断片的に語られる、でもトータルの量は膨大な、タイムマシンの原理、この宇宙の様子、
この世界の主軸をなす「継時上物語学」・・・・の合間をぬって進んでいくのは、
主人公の、少年時代、家庭環境、孤独な人生、そして父親探しのストーリー。

で、読み始めて、「すっごく円城塔っぽい!」と思ったら、訳が円城塔でした(^^;)。
今までの彼の作品と同じく、リズム感のよい、フワフワした、でも掴みどころがないような
不思議な文章で語られてます。
どうも、原文もそんな感じなので、円城塔訳というのは、正解なのかもしれない。
でも、円城塔の作品に比べると、主人公であり、作者と同じ名前のチャールズ・ユウ、
個人の人生を深く追った作品。
円城塔は、登場人物の一人の物語をじっくり掘り下げるというよりは、世界観書きという印象が。

内容も、わかるようでわからない部分が多数で、人を煙に巻いた印象。
それでも、このとらえどころの無い話が、面白く感じるのは、円城塔の文章の魅力もあるのかも。

円城塔が好きならお勧めな気がする。

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「オニキス」下永聖高著:多次元宇宙を題材にした、ちょっとお伽話チックなSF短篇集。 [本:SF]

オニキス (ハヤカワ文庫 JA シ 8-1)

オニキス (ハヤカワ文庫 JA シ 8-1)

  • 作者: 下永 聖高
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/02/07
  • メディア: 文庫
7点

多次元宇宙(本作では並行宇宙)を舞台にした短編2つと、SF短編2つ、
そしてエッセイ的な短編1つの、計5編の短編が収められている。

「オニキス」:過去を書き換えるマナという物質。
書き換えられた過去により並行宇宙が生まれる。
人々は、過去の書き換えによって記憶が変わっても、それを認識することはできない。
しかし、マナによる情報保存が可能になり、どのように書き換えが起きているか、
頭につけた装置により、記憶を保存することでチェックするというモニターに応募した主人公。
本に挟んだ栞の位置が変わっていたり、飼っていた熱帯魚の種類が違っていたり・・・
主人公を取り巻く環境は、書き換えの度に、変化していく。
それだけでなく、起きていなかった戦争が起きていたり、主人公の仕事も住まいも次々に
書き換えられ、恋人でさえも・・・。

「神の創造」:「妖精発生装置」という異世界と現実を結びつける装置。
それを部屋に置くと、部屋のあちこちで異世界の様子が観察できるようになる。
茶碗を洗い、掃除をすると、流し台の隅に歓喜する群衆が見え、お風呂に入れば湯けむりの向こうに
帆船の軍団が・・・・。
部屋と、異世界は互いに影響を受け合い、部屋が散らかり混沌とすれば、その辺りにある異世界の
国も混沌とする。
整理整頓され綺麗な場所では、異世界も秩序あり平和な状態が維持される・・。
異世界の住人から人は「神」として、人から異世界の住人は「妖精」として認識される。
自分の行動や部屋に置くものが、異世界にいろいろ影響を与え、確かに、
「妖精発生装置」のを使うと、人々は気まぐれな神のような立場になれる・・・。
流行りは終わってしまったが、それを使い続ける主人公・・・。

「猿が出る」視界の中に猿が出現するようになった主人公。
最初は、ストレスによる幻覚かと思っていたが、幻覚の猿は、徐々に進化していることに
気がついた・・・。

「三千世界」並行宇宙から来た人物に、しばらくの間交換渡航して欲しいと持ちかけられた主人公。
しかし、借金に追われる現実から逃れるため、平行宇宙を行き来するナビゲーターを
奪い、平行宇宙を次々と渡り歩くことに・・・。

「満月(フルムーン)」:タイの南方にある島に旅行した男が思うことは・・・。

自分が神のような存在、部屋を掃除したり、指輪をおいたり・・・そういう些細なことが異世界へ
多大なる影響を与えることができる「神の創造」は、あとがきにもあったけど、
ドラえもんの世界みたいで、ミニュチュアの世界を構築していくような楽しさがあって面白かった。
他の作品も、カツカツと科学交渉したり、設定をがっちり作ったりしたというよりは、
「こんな世界があったら」という、「ドラえもん的」というか、「おとぎ話的」というか、そんな印象。

次々に書き換えられる現実を描いた「オニキス」や、自分の世界と、ちょっとだけ違う世界
(通貨が違ったり、首都が関西だったり・・・)を渡り歩く「三千世界」も、
次々と移り変わる現状・世界の様子が面白かった。

でも、描かれる世界、アイディアは面白くても、ストーリーの方は、ちょっとまったりしていて
(よく言えば、優しいというか、語り口が甘いというか)、自分的にはすっきりせずイマイチ。
多くの主人公が、大変な状況でも、大きく動かず流されてる・・・って印象なのが、
すっきりしない理由かも。

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「My Humanity」長谷敏司著:「人間性」を中心に据えた、近未来SF短篇集。 [本:SF]

My Humanity (ハヤカワ文庫JA)

My Humanity (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 長谷 敏司
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/02/21
  • メディア: 文庫
7.3点

タイトルから推測できるように、「人間性」をテーマにした近未来SF短篇集。

「地には豊穣」脳内に擬似神経系を構築することができる「擬似神経制御言語ITP」の開発により、
経験などを簡単に他に人の脳に、移すことができるようになった近未来。
最初にアメリカ人によって開発されたそれは「英語」をベースに行われており、
他の文化から「英語圏文化」への洗脳との批判も多かった。
日本語をベースにしたITP開発を行っているケンゾーは、日本文化の継続保護よりも、
より合理的な方向を目指していたが・・・。

現在もグローバル化によって均一化しつつある世界だが、それが技術革新により、
それがより進むことになったら、各国が持っている文化は消えてしまうのか?
ということをテーマに、「日本人らしさ」に関しても触れている話。

「allo,toi,toi」幼い少女を殺した小児性愛者チャップマン。
無期懲役で刑務所に収監された彼は、「性犯罪者」として、刑務所で一番下の扱いを受けていた。
ITPを移植することにより、その小児性愛の嗜好を矯正する実験に協力することなった彼。
死ぬまで出られない刑務所での過酷な生活の中、彼の脳内には、幼い声で話しかけ、
励ましてくれる存在が出現する・・・。

小児性愛者チャップマンの、自己中心的過ぎる気持ちが延々と語られ、それが脳内に作られた
少女の幻想との会話により、どう変わっていくかが描かれている。
チャップマンの自己弁護と自己中心的主観に満ち溢れた考えを延々と聞かされる(読まされるのは)、
不快だし、嫌悪感も強いが、酷い事をした人間だからと、チャップマンが刑務所内で、
リンチされたりするのを傍観する「倫理観のある人」(自分もこちらの立場だ)の思考もまた不快。
実録犯罪史などに比べると、人間の心の闇が浅い感じも。

「Hollow Vision」人々の多くが、宇宙コロニーに移住し、人工知能によって、統括されている世界。
貧富の差が拡大する中、軌道ステーションで起きたテロ。
盗まれた高度コンピューターの技術が拡散すれば、世界を揺るがしかねない自体になる。
国際人工知能(IAIA)に勤務するヘンリーは、奪われたコンピューターを取り戻す為に、
辺境のコロニーに降り立つ。

どんな事態が起きても、合理的に迅速に判断できる「人工知能」が統括する世界。
以前読んだゾンビが世界に溢れる世界を描いた「WORLD WAR Z」で、
被害を食い止める為に、多くの人を敢えて見殺しにする選択を、人々は葛藤しつつも行うが、
人工知能は、葛藤無くそういう決断を下す。
それが是なのか否なのか・・・すごく難しい。

「父たちの時間」放射線を吸収して低減させる自己増殖機能を持つナノマシン
「クラウズ」。
原発事故や、古くなった原子炉を廃炉にするために使われているそれらに突然変異が。
世界各地に広がり、自己増殖する「クラウズ」は、恐ろしいほどのスピードで、進化していく。
「クラウズ」に対抗するためのナノマシンの開発を行う洋一。
急がれる研究と秘密保持のため、監禁状態に置かれている彼は、入院している
息子の事が心配だったが・・・。

ナノマシン禍ものは、好きなネタなので、一番おもしろく読んだ。
ただ、テーマである「父親」の存在、立場に関しては、あまり共感できず、
ストーリーの流れは面白いけど、テーマはどうでもいい・・・って感じに(^^;)。

さて、この短篇集、ちゃんとまとまっており、秀作揃いだと思う。
でも、でもすごく気になった部分が。
この短篇集のテーマ「人間性」。
それぞれの作品で、文化について、罪について、倫理観について、父親という立場について・・・
登場人物の心象が、深く語られている。
その部分が、とても「今」なのだ。
近未来で変化した人の意識ではなく、SF的なガジェットを使わなくても、
「現代を舞台にした普通の小説」でも、同じ事が語れそうな内容と思えた。
舞台は未来でも、登場人物の考え方は完全に「今風」というのは、スペオペなど、
他のSFでもよくあることだけど、この短篇集の作品の場合、その部分に非常に
ページを割いているため、違和感が強かったというか。

文化が変わると人の考えも全く違ったりする、時代が変われば、同じように
今当たり前のことが当たり前ではなくなったりする、そういう価値観の変化・違いが、
作品にうまく反映されているものが好きなので、その辺、メインの部分が「今」過ぎたのが、
ちょっと物足りなかった。

SFを通して、現代社会の歪を再認識させるってのが狙いなのかもしれないけど。
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「ブラックライダー」東山彰良著:世界滅亡後ウェスタン時代に戻ったようなアメリカ。人は人肉を、そして牛と人間を掛けあわせた「牛」を喰う。その世界で生きる人々が思うことは・・・。 [本:SF]

ブラックライダー

ブラックライダー

  • 作者: 東山 彰良
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/09/20
  • メディア: 単行本

7.8点

「このミステリーがすごい2014」3位になった作品。

「6・16」と呼ばれる世界大戦後の、荒廃した世界。
世界は冷えきり、多くの動植物が滅亡した。

アメリカで生き残った人々は、ウェスタン時代に戻ったように、馬に乗り、牛を飼う。
そして、何かあれば、銃が火を吹く、弱肉強食の世界。
違うのは、あまりの食糧難に、人が人を喰うことが普通になったこと。

そして、そんな食糧難を解決するために造られたのは、牛と人間を掛けあわせた「牛」だった。
新たな「牛」の誕生によって食糧難が解決しつつあり、「人肉を食べることが禁止される法律」もでき、
一度破壊された文明は徐々に発展し、「秩序」を取り戻しつつあるように思えた。
しかし、謎の赤い寄生虫、知能の高いパッと見には人間の姿をした「ユダの牛」の誕生・・・・
変わりつつある世界には、またもや災厄の予兆が・・・・。

荒廃した未来を舞台に繰り広げられる、ウェスタン+黙示録的なストーリーはおもしろい!
ただ、ただ、ただ、とにかく読みにくいのが問題。

翻訳小説を意識したと思われる文体は、あまりにも意識し凝りすぎて、意味をとるのに一苦労。
台詞中心のストーリー展開なので、情報は小出し。
いくつもの情報を拾い集めて、世界観を想像しなきゃいけないんだけど、
情景描写があまり得意じゃないらしく、本書から読み取れる情報だけでは、
細部まで想像できず、自分の想像力をかなり駆使しないと、世界観がぼんやり。

例えばファンタジーで「ドラゴンが現れた」とあった時、「巨大な赤いドラゴン」とだけ
書いてあるのと、「研ぎ澄まされた爪は大理石のように黒光りし・・・」と詳細まで書いてあるのでは、
自分が想像する「ドラゴン像」は変わってくる。
そして、前者では、自分の知ってる「ドラゴン」を漠然と思い浮かべることになる。
この本の場合、この「前者的な表現」がメインで、自分で世界を想像しなきゃいけない。

それプラス、変に凝った読みにくい文章。
その上、登場人物も多く、物語の中心になる人物も何度か変わり、それを把握するのも一苦労。

読みにくい凝り過ぎた文体に関しては、最初の50ページくらいが非常に凝ってて読みにくく、
その後は凝るのが大変になったのか、徐々に凝り過ぎ感は緩和し、世界観を想像する為の
情報もある程度揃った中盤以降は、かなり読みやすくなる。
でも、最初の100pくらいは、読むのが大変。

イカレタ登場人物ばかりが登場する西部劇小説「シスターズ・ブラザーズ」(リンク先感想)的な、
アメリカウェスタン小説っぽさと、近未来をうまく融合させたストーリーは、
読了後、「おおおおっ!!!!!」と思えるまとまりを見せるけど、
文章の読みにくさと、描写力の弱さがもったいない。
近未来世界を描いているので、もうちょっと描写力が欲しかった。
でも、ストーリーはおもしろいので、最初の読みにくさを乗り切って、最後まで読んで欲しい小説。

作品には、現代文明へのアンチテーゼもかなり含まれている。
「人を殺して食べることはいい。でも、食べないのに殺すことは恥ずべきこと、悪である」
「食料になった人に感謝して食べる。自分が食べられる時も感謝する」というような概念など、
状況が変われば、常識が変わるという視点や、
文明が進むにつれ、以前「当たり前」だったことが、非常識として頭から否定されていく過程や
それが理不尽だと感じる気持ちと、新しい価値観を受け入れなければならないという葛藤など、
人々の意識変化に関する描写は面白い。

食べ物に飢えてた頃は、食べ物が手に入っただけでも幸せだったのに、
飢えの心配が無くなると、先のことが不安になり、欲がどんどん大きくなるということなど、
満ちているからこその不安などは、今の社会をそのまま暗示している。

そして、文明がすごい勢いで再構築されつつある実情を見て、文明が進んでいくと、
人の意識が変化し、また人はそれを破滅させるような事、「6.16」と同じことを繰り返すのでは
ないかという作中の人物が感じる不安も、今の社会に通じるものがある。

しかし、文明の進歩と価値観・モラルの変化、その狭間で、逞しく生きる人々を、
興味深く描いている作品でもある。

お勧め(^-^)ノ。
序盤、読みにくいのを我慢して読もう!!
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「影が行く-ホラーSF傑作選」ディック、クーンツ、ライバー、ゼラズニイ等のホラーSF短編、表題作は「物体X」の原作! [本:SF]

影が行く―ホラーSF傑作選 (創元SF文庫)

影が行く―ホラーSF傑作選 (創元SF文庫)

  • 作者: フィリップ・K. ディック
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2000/08
  • メディア: 文庫
7.8点

P・K・ディック、ディーン・R・クーンツ、フィリッツ・ライバー、ロジャー・ゼラズニイ、
リチャード・マシスン、アルフレッド・ベスター、ブライアン・W・オールディス等、
錚々たる顔ぶれが揃った、ホラーSF短篇集。
作家の顔ぶれを見てもわかるように、1950年代~1970年代の作品が中心で、
ホラーやファンタジー・幻想と、SFの境が曖昧だった頃、
古き良き古典SFの香りが感じられる良作揃い♪

・「消えた少女」リチャード・マシスン著:映画化された「アイ・アム・レジェンド
(旧題:地球最後の男)」が有名な著者。
アメリカのホラーSFドラマ「ミステリー・ゾーン」の1話として放送された作品の原作。
室内で消えた幼女。泣き声は聞こえても姿が見えない事に、恐れ戦き、必死で娘を探す両親。
「あーー、こういうテレビドラマありそう!」という、小粒な佳作。
マシスンの作品は、正統派幽霊屋敷もの「地獄の家」が好き。

・「悪夢団(ナイト・メア・ギャング)」ディーン・R・クーンツ著:モダンホラーの巨匠クーンツの初期短編。
ルイスという男の支配下に置かれた男たち。
その指示に逆らえば恐ろしい事が起こり、逃げようとすれば、死が待っている。
ある夜、ルイスが出した恐ろしい命令とは・・・?

クーンツというと、ジワジワと迫り来る脅威、ヒーローの頑張り、ヒロインの健気さ、
王道に盛り上がるストーリー展開・・と、エンターティメントモダンホラーとして
楽しめる長編が多いけど、この作品は初期の頃の作品なせいか、
どよ~んとした重い雰囲気で、ちょっと毛色が違うのが面白かった。
モダンホラーの作家として有名だけど、SFを書いてたこともわかる作品。

・「群体」シオドア・L・トーマス著:未知の生物が、それも粘液みたいな生き物が人を襲う話と
いうのは、一般受けもいいらしく、これもそういう作品の一つ。
大きなひねりは無いし、粘液クリーチャー王道パターンではあるんだけど、
それでも読んでて気持ち悪くて、楽しい♪

・「歴戦の勇士」フィリッツ・ライバー著:時間を越えて移動することができ、
過去の有名な戦争も、未来に起きるという戦争も、見てきたように語る男マックス。
誰も本気にしていなかったが、ある夜、闇に光る不気味な真っ赤な目を目撃した
マックスの友人フレッドは、マックスに脅威が迫っている事を察する。

ライバーの連作「改変戦争シリーズ」(「ビッグタイム」+いくつかの短編)の中の一つだそう。
SFより、ライバーらしいというか、ファンタジー色を強く感じた。

・「ボールターのカナリア」キース・ロバーツ著:ポルターガイストの噂がある僧院を撮影した
2人の若者が遭遇した怪異。
特に印象なし。地味。
キース・ロバーツ、一作も読んでいないんだけど、
改変歴史物として有名な「パヴァーヌ 」を買おうか、
イヤ、本を発掘すると出てくるかもっ?と、ずっと悩んでる作家(^^;)諦めて買うべき?

・「影が行く」ジョン・W・キャンベル・ジュニア著:この原作を元に「遊星よりの物体X(1951年)」
「遊星からの物体X(1982年)」(カーペンター監督)が作られ、
「遊星からの物体X」の前日という設定の「遊星からの物体X ファーストコンタクト」も2011年に制作。

カーペンターの「遊星からの物体X」は、クリーチャーものの名作として有名で、
私も最初に見た時は、「物体X」の異形な姿と動きの素晴らしさに、感動しまくった!
本物そっくりに擬態する宇宙生物が入り込んだ南極基地で、人々が疑心暗鬼にかられる様など、
映画と似てる!・・・・って読んで思ったけど、こっちが原作なんですよね(^^;)。
「物体X」の怖さを盛り上げている、閉塞感や不信感などが、原作でもしっかり描かれていて、
とても面白かったし、これが映画「遊星からの物体X」の原作なのかーとしみじみもしてしまった。
映画を既に見ていても、小説版も楽しめます♪
さすが表題作になってる作品!と思える一作。

・「探検隊帰る」P・K・ディック著:宇宙から、やっとのおもいで帰還した宇宙飛行士達。
しかし、それを迎える人々の反応は、彼らを歓迎するものではなかった・・・。
ディックの短編は、一時期読みまくっていたので、何かすっごく懐かしい気持ちになった。
人々の心の奥底に潜む恐怖を上手く描いた、ディックの短編らしい秀作。

・「マスク」デーモン・ナイト著:体中、人工物になり、生きている・・、生かされている男の話。
昔のSFって、教訓めいたもの、考えるべき事を内包しているのがはっきりわかる作品が
多いけど、これもそう。
全身「人工物」になったとしても、生き続けるべきなのか、それは幸せなのか・・を問うている。

・「吸血機伝説」ロジャー・ゼラズニイ著:ロボットの吸血機の話。
ロボットだけが活動する近未来の様子や、「吸血機」という概念を、
オリジナル「吸血鬼」へのオマージュも含め、簡潔に感動的に、
そしてちょっとしたウィットも入れて、短い中にまとめた傑作!
表題作「影が行く」は映画への思い入れもあり、読めて嬉しかった作品だけど、
この短篇集で、純粋に好きな、面白かった話は?と聞かれたら、この作品と答えると思う。

・「ヨー・ヴォムヴィスの地下墓地」クラーク・アシュトン・スミス著:
現地人は決して足を踏み入れない火星の古代遺跡。
そこを研究調査の為に訪れた1団が遭遇したものは・・・。
「太古の呪い」的な要素があって、なんとなくクトゥルフをイメージしてしまう作品。
年代が近いからかも。

・「五つの月が昇る時」ジャック・ヴァンス著:5つの月が昇る惑星で、灯台守りをしている男の話。
幻想小説よりで、ジワジワ来るような怖さと、5つの月のイメージが印象的。
イマジネーションを駆使して楽しむ作品。

・「ごきげん目盛り」アルフレッド・ベスター著:狂ったアンドロイドを所有した男の悲劇。
アンドロイドが犯罪を犯す度、星から星へと逃げまわる男。
何故、アンドロイドは狂ってしまったのか?
狂ったアンドロイドの描写と、所有者の男の不甲斐なさが、
メインストーリーは陰惨なのに、コミカルな印象を作品に与えている。
なかなか面白かった作品。
ベスターの代表作「虎よ、虎よ!」って読んでないんだけど、読みたくなった。

・「唾の樹」ブライアン・W・オールディス著:隕石が落下した農園。
被害はなかったが、家畜たちは次々と子を産み、植物は巨大化する。
異変に気がついたグレゴリーは、農家の主人を説得しようとするのだが・・・。

「H・G・ウェルズ」の長編のモチーフを、要所要所に散りばめたメタSFと解説があった。
ウェルズの作品はそれほど読んでいないけど、「神々の糧」とは同じ系列。
巨大化した生き物話って、映画も小説も好きなので、この話も嫌いじゃないんだけど、
どうもオールディスの作品は、読んでると、まだるっこしくて苦手。
好きなテーマなのに、のめり込めなくて残念。

昔なつかしい香り満載だけど、今読んでも「おおっ!」っと思う部分があったりして、
とっても楽しんで読めました♪
ホラーテイスト(それほど強く無いけど)を持つSFが読みたい人に、お勧め(^-^)ノ。
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「Running Pictures: 伊藤計劃映画時評集1」「Cinematrix: 伊藤計劃映画時評集2」伊藤計劃のブログから抜粋した映画評 [本:SF]

Running Pictures: 伊藤計劃映画時評集 1 (ハヤカワ文庫JA)

Running Pictures: 伊藤計劃映画時評集 1 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 伊藤 計劃
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/01/25
  • メディア: 文庫
7点

Cinematrix: 伊藤計劃映画時評集2 (ハヤカワ文庫JA)

Cinematrix: 伊藤計劃映画時評集2 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 伊藤 計劃
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/03/22
  • メディア: 新書
7点

虐殺器官」「ハーモニー」などの傑作を残して急逝してしまった伊藤計劃が、
Web上に残した映画レビューをまとめた本2冊。

伊藤計劃の作品の文章を読んで脳裏に浮かぶ映像は、ブレードランナーなどに代表される
色彩や、ディテール、光や陰影にこだわった映像美あふれる映画のようなイメージだ。

円城塔との合作(というより、伊藤計劃の未完の話を円城塔が完成させた)
屍者の帝国」(リンク先感想)を読んだ時、円城塔の文章に変わった途端、
あまりに脳裏に浮かぶ映像の色彩が、イメージが変わり衝撃を受けるほどで、
知らなくてもそこできっと書き手が変わっただろうと確信できるくらい、
伊藤計劃の小説は、映画的映像を喚起する。

かなりの映画マニアだったらしい伊藤計劃。
カメラワーク、映像美、ライティングなどにすら、かなりこだわりがあったよう。
伊藤計劃の細かな映画へのこだわり。
それらが、伊藤計劃の映画レビューを読むと、ガンガンと伝わってくる。

映画を見る時、カメラワークなどを意識せず、漠然と見てしまっている私にとっては、
「そっか、こういう部分でも監督の違いがでるのか~」と参考になるレビューも多数。
さすがに何度も見た「ブレードランナー」だけは、どのシーンも、どのシーンも、細部まで
こだわりを持って撮られるのがわかって、リドリー・スコットって完璧主義者ですごすぎる!思ったけど。


で、この映画レビュー、かなり映画には厳しい伊藤計劃が、敢えて批判はせず、
自分が気にいった新作の良さを紹介し、みんなに映画館に行ってもらおうという趣旨で書いたもの。
ただこのレビューが書かれた当時(1998年~2004年)の新作映画中心なので、
数多くの映画の中から「これっ!」って感じでは無いのが残念。

「Running Pictures: 伊藤計劃映画時評集1」では「マトリックス」「GODZILLA」
「ディープ・インパクト」「ブレイド」「スターシップ・トゥルーパーズ」
など、現在でも「埋もれていない」作品がメインで紹介されてるけど。

伊藤計劃の映画へのこだわり、映画を見る新たなる視点、紹介されてる映画監督などの特徴等
映画の雑学・・etcがわかるのは面白いけど、伊藤計劃のファン向けな感じも。

基本、最初の趣旨通りいいところをピックアップして褒めているけど、
「ゴジラ2000 ミレニアム」だけは、酷評。
他が、褒めてるだけに、その酷評っぷりが笑えた。

ラインナップがメジャーなのが多いせいか、この本を読んで初めて知り、
「これが見たいっ!」ってのが、無かったのは残念!
「ガタカ」のように、以前から気になっていて、やっぱり面白そうだなーってのはあったけど。

「Cinematrix: 伊藤計劃映画時評集2」で、メジャーところは「ダンサー・イン・ザ・ダーク」
「ハンニバル」「WXIII 機動警察パトレイバー」「ロード・オブ・ザ・リング」「マトリックス・リローデット」
「ターミネータ3」などかな??

初期に書かれたものを集めた「Running Pictures」に比べると、書き方が熟れていて、
こちらの方が面白く読める映画評が多かった。
「マトリックス・リローデット」のアクションシーンを「消化試合」と評してたり、
「ターミネータ3」が前作と違い、そして決定的に足りないものへの考察とか、
「スターリングラード」の序盤の、ストーリーからの乖離具合の解説とか、
なるほど~とか、「おっ?」と思えるものがいろいろ。

「ブラックホーク・ダウン」の兵士たちの見分け方(みんなヘルメットに軍服なので、
同じに見えるんだ、これが)等は、ある意味、非常に参考になった。

伊藤計劃のファン、もしくは、映画がものすごく好きで、いろんな書評を読みたい人向け。
1998年~2004年に公開された映画限定ということが、どうしても読者層を狭めてるなー。
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「ウルトラマンメビウス アンデレスポリゾント」朱川湊人著:メビウスのノベライゼーション。本作見てないとちょっと厳しい [本:SF]

ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント

ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント

  • 作者: 朱川 湊人
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/12/17
  • メディア: 単行本
6.5点

ウルトラマンメビウス」のノベライゼーション。
ちょびさんのブログ「自転車に乗って」で知りました。

最初から、ヒビノ・ミライがウルトラマンメビウスだと「対怪獣防衛チーム・CREW GUYS」の
メンバーには知られているなど(本編では途中でバレるらしい)、若干違いはあるけど、
大まかな設定、登場人物のキャラクターなどは、TV版オリジナルを忠実に踏まえ、
真面目に真面目に書かれた、ウルトラマンメビウスの小説版。

TV版メビウスは、それまでのウルトラマンシリーズの集大成として、
過去のウルトラ兄弟が出まくりだったらしく、小説版でも、他のウルトラマンや、
過去のウルトラシリーズに出た怪獣や宇宙人について、史実や過去のデータとして語られ、
ニヤリとしてしまう部分がいろいろ。
懐かしい怪獣も出てきます。

ただ、TV版を見ていれば思い入れできたかもしれない登場人物に全然思い入れができず、
また話の展開も、遊びが無く、真面目にウルトラマンのテレビシナリオを、
小説版にしたという感じで、どうも入り込めなかった。

登場人物がみな良い人過ぎるし(メビウスになるヒビノをアンサイクロペディアで、
「性格そのものはいたって純粋でいい子であり、悪く言えばアホの子」と評してるけど、納得(^^;)!
他の登場人物も、性格も違えど、すごくわかりやすい良い人タイプいろいろ)、
宇宙人も真面目だし、「子どもを救おうとして事故に合い将来を諦めた」などわかりやすい
「良いエピソード」満載。
TV版ならそういうわかりやすさ満載も、ありなんだろうと思えるんだけど、
小説で読むとなると、汚れた自分の心には、あからさまな感動的展開が恥ずかしすぎて・・・(^^;)。

TV版メビウスをある程度見てたら、思い入れもあり、もうちょっと楽しめた気がするので、ちょっと残念。
怪獣がでてくる特撮ベースの小説なら山本弘の「MM9」の方が、
怪獣が出る世界って台風情報みたいに、怪獣情報がテレビやラジオで流されたり、
こんな感じになるのかな?ってのを見せてくれて面白かった。
続編「MM9-invasion-」は萌系アニメ的エピソードが中心になっちゃって面白くなかったけど。
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「アンティシペイション」クリストファー・プリースト編纂:ワトスン、バラード、オールディス、デック・・・個性溢れる短編集♪ [本:SF]

antexipesyon.jpg
アンティシペイション (サンリオSF文庫)

アンティシペイション (サンリオSF文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: サンリオ
  • 発売日: 1987/03
  • メディア: 文庫
8点

1978年クリストファー・プリーストが編纂した、英米SFの旗手8人の作品を集めた短篇集。
ワトスン、シェクリィ、ボブ・ショウ、プリースト、ハリスン、ディッシュ、バラード、オールディスと、
その顔ぶれがすごいですね~!
そして、各自その持ち味が炸裂してて、かなり個性的な作品の揃った短篇集になってます。
古き良き時代の、サイエンス・フィクション、そしてスペキュレイティブ・フィクションを味わえます(*^.^*)。

「超低速時間移行機」イアン・ワトスン著:突然現れた「超低速時間移行機」(タイムマシン)。
搭乗者は明らかに精神に破綻をきたしていた。
しかし、時間と共に、その搭乗者は時間を逆行しつつあるのが、確認でき・・・・タイムパラドックス物の名作!

「隣は何をする人ぞ」ロバート・シェクリイ著:処分市でエディが買った双眼鏡。
それは、研究室から間違って持ちだされたらしい、特別な能力を持つ双眼鏡だった。
幻想小説的なSS。

「闘技場」ボブ・ショウ著:石に模した「地球外頭足類地下石状形態」(E.T.セフアロボダス・
ペトラフォルム)の殺しのテクニックの撮影をする為、ある惑星に降り立ったハーベンとその恋人。
前の撮影隊がこつ然と姿を消した事への不安感と大金への期待。
ペトラフォルムの罠にかかった獲物の悲痛な姿。
「助けるべき」と抗議する恋人の意見を、ハーベンは「意味が無い」と切り捨てるが・・。
未知なる惑星と生き物を題材にしつつも、人間の心の機微がメインにあり、
ちょっとシニカルな風刺があるのがボブ・ショウらしい。

「拒絶」クリストファー・プリースト著:壁を挟み、長年続く戦争。
その国境警備隊に勤務する青年は、ある作家に出会った事から、壁を登ろうとするが・・・。
「壁の向こうの敵も自分たちと同じ」という戦争風刺が入った作品。

「美しき青い鳥」ハリイ・ハリスン著:石油が枯渇し、あらゆる石油製品が高騰し、
パンティストッキングが黄金より値打ちがある世界。
CIAの任務によりイタリアに潜入することになったジュリオ。
スパイ物のように思えて、そうではなく、その世界観を楽しむような作品・・って感じかなぁ。

「老いゆくもの」トマス・M・ディッシュ著:「老いていくもの」と「不死人」が共存する世界。
その日常の一コマを切り取ったような作品。

「ユタ・ビーチの午後」J・G・バラード著:第二次世界大戦で激戦の場となったユタ・ビーチを
訪れたデヴィットは、遥か昔に死んだはずの衰弱した若いナチスドイツ兵と遭遇する。
彼は、そのドイツ兵を救おうとするのだが・・・。
古典SF的な作品。

「中国的世界観」ブライアン・W・オールディス著:資源は枯渇し、「中国的世界観」に
支配されつつある地球。
宇宙空間には、いくつもの居住空間「横道惑星」が作られ、そこには「西洋的価値観」が残っていた。
確率により、その人の遭遇する出来事を予測する機械を作り上げたフェリシティは、
その機械を売り込む為に、地球に降りることになるのだが・・・。
「科学的原理」「合理性」と「中国の易」の比較は、西洋と東洋の価値観の比較でもあり面白い。
「国土を強姦したアメリカ」と、「国土に使役し、贅沢を否定し、『貧困』を立法化しようとする中国」
という視点に立ったこの作品、書かれたのが「1978年」で、この時代、中国はこう思われていたの
だと思うけど、今の中国には全く当てはまらないというのが、笑えるような複雑な気持ちのような。
最後に収録され、中編くらいの長さがある作品だっただけど、東西比較だけでなく、
未来を予想する機械、物語を語るロボット、「横道惑星」の描写など、イマジネーションも豊かで、
面白かった♪

さすがに、古さを感じる部分もあったけど、全体的な作品のレベルはもちろん高く、
名作「超低速時間移行機」や、印象深い「中国的世界観」なども収録され、楽しんで読めました(*^.^*)!
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「屍者の帝国」伊藤計劃×円城塔著:未完の「屍者の帝国」を円城塔が引き継いだ!円城塔の物語になってた・・ [本:SF]

屍者の帝国

屍者の帝国

  • 作者: 伊藤 計劃
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2012/08/24
  • メディア: 単行本
7.3点

「屍者の帝国」は、死者をフランケン化する技術が確立された世界を描いた作品。
屍者達は、単純労働の担い手として、そして恐怖を感じずただ命令に従うだけの兵士として活用され、
その技術は世界中に広まりつつあった。
舞台となるのは19世紀。
この「屍者の帝国」の冒頭の30Pのみを書き、逝去した伊藤計劃。
未完のこの作品を、円城塔が引継ぎ、遂に完成!

底辺に似た部分は持っていても、あまりにも作風が違う2人の作家。
どうなるのか不安だったのですが、評判が良かったので、読んでみました。
でも、うーん、自分はダメでした。

プロローグが伊藤計劃の書いた部分で、第一章からは円城塔。
まず戸惑ったのは、第一章を数行読んだだけで、プロローグで脳裏に浮かんでいたイメージが、
ガラリと一新されてしまったこと。
伊藤計劃の作品は、映画のシーンを見るような、それもライティングが凝ってて、陰影の濃い、
ある特定の色が全体を覆うようなそんな映像が脳裏に浮かぶんですが、
第一章に入った途端、明るく、普通に撮られたような平穏な映像が浮かんできて、
あまりのギャップにびっくりして本を閉じてしまった。
プロローグで感じていた、ジメジメとして暗く陰惨な「屍者」を使役する世界のイメージも消し飛んだし。

傍観者であろうとするが、その世界に囚われ逃れられない伊藤計劃の登場人物に比べ、
円城塔の登場人物達は、渦中にいながらも完全な傍観者。
まず、その辺が違うので、作品から受ける印象も大きく違ってくる。

死者、死んだ人の遺体を「屍者」として使う世界の人々の価値観の根底からの変化、
それによって変わる社会・・・きっと伊藤計劃が書いたのなら、その辺を見事に書いてくれていた
気がするし、その辺が私は読みたかったので、円城塔の書く、「屍者」をそういうものだとすんなり受け入れ、
表面的な変化しか描かれない「屍者」を使う世界は、自分が求めていたものと大きく違ってたし。

歴史上の人物が次々と登場し、文学のパロディ的要素もふんだんに取り込まれたこの作品、
きっと面白いと思う人も多いんだろうけど、自分はホラーが好きなせいもあって、
「死者が屍者として復活させられ、単純労働に携わり、兵士としても活用されている
悍ましい異様な世界」を描いた、もっと重くて、ズーンと来るような話が読みたかった。
円城塔のふわふわした感じの文体は、恐怖や緊迫感、おぞましさを書くには不向きだと思うし、
この本でも、それは感じた。

ストーリーの大きな流れがあるこの作品。
ちゃんとストーリーを追う展開で、サクサク読めるんだけど、途中変な所でごちゃごちゃと脱線し、
それまでの流れに比べて、突然わかりにくくなる部分が現れるのは、
円城塔の本来の持ち味が出てきてしまった部分なんじゃないかと。
きっと、こういうきっかけでもない限り、円城塔はこの手の作品は書かなかったろうなと、
そういう部分を読んで思ったりもした。

ただ「伊藤計劃の『屍者の帝国』」を求めるのでなければ、完成度は高く、
しっかりまとまった作品になっていたのは、さすが円城塔という感じ。
「屍者の帝国」のタイトルや「フランケン化」なんて言葉から連想されるような、
おぞましくてズシンと来るような話を期待する人以外は、楽しめる作品なんじゃないかと。
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「ぼくらは都市を愛していた」神林長平著:相変わらず神林は「曖昧な事柄」に問い続けている [本:SF]

ぼくらは都市を愛していた

ぼくらは都市を愛していた

  • 作者: 神林 長平
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2012/07/06
  • メディア: 単行本

7.5点

世の中にははっきり定義付けできない曖昧なものがたくさんある。
愛情とは?知識とは?芸術とは?
神林長平の作品は、そういう曖昧な事柄への定義付けの試行錯誤が見て取れる事が多いが、
この「ぼくらは都市を愛していた」もそうだった。

今回問われているのは、人の意識と現実の認識。
自分が意識している現実は、その人の脳内で作られたもの。
自分が意識している事が、本当の事なのか、それとも虚構なのか・・・・。
他人と自分が認識しているものが違う時、どちらが正しいと、誰が判断するのか。
人の意識や、現実の認識について、何度も問いが繰り返される。

デジタルデータを破壊してしまう「情報震」。
原因も震源地も不明なそれに襲われた世界は、デジタル機器の使用が不可能になり、
世界の情報網は断絶し、それは世界的な不信感と混乱を産んだ。
人々は孤立し、そして大都市は無人となった・・・。
「情報震」を調査する日本情報軍起動観測隊の綾田ミウ中尉は、大規模な「情報震」により、
本部との連絡が不可能になり、孤立したまま調査のため、7名の隊員を率いて
無人のトウキョウに進駐する。
情報が断絶してしまった世界を綾田中尉の日記形式で描く物語。

それと並行して、上層部の命令により、体の中に人工神経網が作られ、
偽テレパシー機能を持つようになった公安の男のストーリーも進行する。
他人の携帯などのメッセージから、その人の意識を感じ取り、同じ人口神経網を作られた仲間との
テレパシーでの会話もできるようになった男。
彼は、ある殺人現場で、殺人犯と意識が交差するのを実感する。
殺人犯は、自分ではない自分。
そして、彼の仕事上の相棒は、殺害された被害者とシンクロする。
生きているけど、喉を掻き切られ殺された相棒。
犯人を追う中、自分の過去の記憶すら、他人の記憶であると指摘され、その男は混乱する。

情報が断絶した世界と、人工神経網により人々の意識がつながろうとしている世界、
この全く関係無いような二つのストーリーが交錯する時、新たなる真実が見えてくる。

本作の中で印象的だったのは、「都市」の機能。
人間は「互助」を基本として生きる生き物であり、田舎では独りでは生きていけない。
そんな人間を独りで生かす機能を持っているのが「都市」であるという下り。
言われてみれば、大都市ほど、独りで生活しやすいのは確かだ。

そんな都市と人間の関係や、通信手段を奪われた人類の辿る道を、
人の意識・認識について問いつつ描いた秀作。
この作品の基本設定である「情報震」により、通信手段・デジタル機器を奪われた人々の戸惑いや、
世界の変化が、ちょっと掘り下げ不足というか、他の事を描くための一要因でしか無いのが残念。
その辺がもっと書き込まれていれば好みだった気がするけど、そうなると、
別の話になっちゃなーとも思うからしょうがないのか。
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「バナナ剥きには最適の日々」円城塔著:言葉が紡ぐリズムとイマジネーションを楽しむ本 [本:SF]

バナナ剥きには最適の日々

バナナ剥きには最適の日々

  • 作者: 円城 塔
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/04/06
  • メディア: 単行本

7.5点

円城塔の、SFあり幻想小説っぽい話ありの、9編が収められた短篇集。

「円城塔にしてはわかりやすい」と紹介にあったけど、そうかなぁ??と思った。

表題作「バナナ剥きには最適の日々」は、宇宙で終わりなき放浪をする無人探査船に
搭載された人工知能が、友達とか遭遇するかもしれない宇宙人を想像する話で、
シニカルでクスリと笑える部分があるけど、話の根底に切なさが流れていて、いい話だったし、
人工知能と人の感情、妄想と現実との違いなどを考えさせられたり、と奥深さも感じさせる内容。
この話は、かなりわかりやすかったけど、円城塔らしい、掴みどころの無い話もいくつか。

「パラダイス行」は信じること、信じないこと、自分には見えて他の人には見えないもの、
それは本当に無いのか、実はあるのか・・なんて事と左回りと右回りで、測った時長さが違う洞窟の話。

「祖母の記憶」は、全身麻痺で意思疎通ができない祖父を使ってコマ撮り映画を撮る兄弟の話。
ストーリーはわかりやすいんだけど、祖父を道具のように扱う兄弟への違和感とかグロテスクさと、
祖父を大切にしてるし、祖父で映画を撮る行為を当たり前のように肯定する語り手である兄の心理とか
自分の中で、噛み合わず、そこに映像に関する考察とかまで入ってくるので、
一番何が言いたいのか捉え切れない話だった。

「AUTOMATICA」は、文章の自動生成についての定義と考察が論説風に。

「equal」は、物の存在について、イマジネーション溢れるショートショートの連作で語っている。

「捧ぐ緑」はゾウリムシの研究をしている男の話。
「ゾウリムシは信仰を持つか」「機械に魂はあるのか」「光るゾウリムシと進化」なんてのを
合間にはさみつつ、信仰とかそういう事をちょっと考えさせるような内容になっているんだけど、
円城塔らしく、重い話ではなく、ふわふわと軽く、でも、ちょっと考えちゃうよ・・って感じの話。
割りとわかりやすいし、面白いフレーズ、興味深いフレーズが多く、好きな話。

「Jail Over」は、他人の背中を見送って、それが自分の背中ではない理由を考える事から始まる、
他人と自分、わたしは私、あなたな私的なテーマを内包しているように思える話。
でも、他にもいろいろ入っている。

「墓石にと、彼女は言う」は多次元宇宙がきっとテーマの一つなんじゃないかと思える話。

「エデン逆光」は、多くの言葉が溢れ、街を通り抜けた人がいない、
中央に向かって螺旋を描く構造の時計の街の話。

「Jail Over」と「墓石にと、彼女は言う」は、いろいろなシーン、ストーリーが錯綜し
ストーリーの説明は不可能。

どの作品も、円城塔らしい、言葉のリズムの楽しさ、文章の上手さを、
そして、目の前に展開されるイマジネーション溢れる場面を、楽しめるものになってます。
作品の中で、ポツリと、時には長く語られる言葉に耳を傾けると、
何かが掴めそうな気がするんだけど、すぐそれは逃げてしまう・・・
ぶっちゃけ、わかんないって事ですが、わからないことすら楽しい、答えの無い事を
あれこれ考える過程が楽しいのが、円城塔の作品。
掴みそこなった事について、いろいろ考えたり、お気に入りのフレーズを堪能したり、
作品によって喚起されたイメージを楽しんだり、そうやって自由に楽しむ本。

円城塔の言葉の軽快さとか、イメージの錯綜は、読んでて楽しいけど、読む人を選ぶ気がする。
でも、表題作「バナナ剥きには最適の日々」はわかりやすいし、いい話なので、
円城塔に興味がある人は、手にとってみるのもいいと思います(^^)。

多次元宇宙となった世界を短いストーリの連作で見事に描いた
Self-Reference ENGINE」(リンク先感想)もお勧め(^-^)ノ!
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「伊藤計劃記録:第弐位相」伊藤計劃著:映画評が面白い! [本:SF]

伊藤計劃記録:第弐位相

伊藤計劃記録:第弐位相

  • 作者: 伊藤 計劃
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2011/03
  • メディア: 単行本

7.8点

虐殺器官」「ハーモーニー」という傑作を残し早逝した伊藤計劃の、遺作集第二弾。

感想書いたまま埋もれてたけど、冒頭30Pで絶筆となった未完の「屍者の帝国」が、
円城塔に引き継がれ発刊されたのでV(≧∇≦)V(屍者の帝国)、それを記念してサルベージ。

メタルギア関係の短篇2編、散文、そして残りの大半を占めるのがブログで書かれた日記。
日記のメインは映画評。

伊藤計劃が映画好きなのは知っていたけど、これを読むと「好き」ではなく「中毒」に近いものが。
とにかく数を見ているし、その豊富な映画知識の元で書かれる独断と偏見に満ちた映画評はすごく面白い。

駄作だろうと、自分の視点で映画の魅力を語り、興味の無い人にまで見たいと思わせてしまう。
キャシャーンですら見たくなってしまったよ(^^;)。

また「B級映画のネタをやたら端正に撮る」というシャマラン評には、
おおお!!と目からウロコなほど納得!!
シャマラン映画に私がもやもやと感じていたのはこれだったんだ!
映像がキレイで名作風なのに、途中からあれれ~???と思ってしまうストーリー展開。
なるほど、ネタ的にはB級なものを、映像美によって過大な期待を持って見ていたせいの、
もやもやだったんだ。

ありえないカメラアングルを徹底的に排除して撮られているという「マスター・アンド・コマンダー」は、ちょっと見たい。
内容がタイタニックの人間ドラマを排除した、「船」の部分メインらしいので、ちょっと躊躇しちゃうけど。

主役アーサー王を演じる役者のせいで、「すまんすまんといつも謝っているアーサー王」状態に
なってるらしい、制作・カイマー、監督アントワン・フーワクの「キング・アーサー」もちょっと見たい。

超オタク向け設定な「ヘルボーイはすごく見たい!

「バットマンビギンズ」「ナイトストーカー」「ゾディアック」など、気になってたけど見てない映画も見たい。
トニー・スコット(自殺しちゃいましたね・・・・。お兄さんのリドリーの方が可能性がありそう・・と
思えるタイプだっただけに、びっくり!)を応援する運動をしているという「蓮實重彦」の映画評も読みたい。

スピルバーグの「宇宙戦争」評も、「おおっ!」と思った。
そうそう、あの虐殺のすごさ、伊藤計劃がムスカの言葉を借りて「人がゴミのようだ」というのを、
体現している映画だと私も思う。
スピルバーグは、ポツポツとは見てるけど、「暴力」の人だったとは、
この映画評を読むまで気がつかなかったよ。

トゥモロー・ワールド」の評価に関しての言及についてはちょっと驚いた。
「子供が生まれなくなってしまった世界」を描いたこの映画、かなり好きな映画で、とても面白かった。
しかし、世間では「子供が生まれなくなった理由が解明されていない」と批判する声も多く、
最初から「理由を追求する映画ではない」のがみえているのに、何故そこを批判するのか。
それがわからない人間がたくさんいる」というような事が書いてあった。
えーーー、私もそれはびっくりだ!

武器商人が主人公の「ロード・オブ・ウォー」評では、伊藤計劃が指摘している
「自分の残酷さ」というのも、すごくわかる。
世界中、とにかく悲惨な事は山のように置きていて、それに憤りを感じてしまうけど、
結局「自分とは関係ない」ので、最期は傍観者の立場にいる私。
「武器を売ってるけど、人が死なずに済めばいいと思っている」という主人公の言葉は、
そのまま自分に跳ね返ってくる。
武器商人の視線と、世界の悲惨な出来事を見る自分の視線・距離感は、同じであり、残酷・・・・
本当にそうだと思う。

今の便利な生活だって、突き詰めれば世界中の多くの人の犠牲の上に成り立っていると思う。
でも、それを分かっても、自分は便利な生活を捨てられない。
この辺、考え出すと、本当にぐるぐるしてしまう。

伊藤計劃は、映画の批判はあまりしないスタンスだったらしい。
何故なら、薄っぺらい批判は、「自分がバカである」とネット上で公言しているからだと。
いやー、厳しい(^^;)。
確かに、それはわかるけど、

合間合間に挟まれる闘病記は、長いものではないけど、死と向き合うということが、
どういう事なのかを、がん治療がどれだけ体に負担をかけるのかを教えてくれて、
これだけでも、読む価値があると思う。

円城塔が引き継いだ「屍者の帝国」、作風があまりに違うので、心配だったんだけど、
amazon評を見る限り、かなりいいらしい。
今度読もう(*^.^*)!
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本棚が壊れたんだが・・・・ [本:SF]

本棚のいくつかは、元々本棚じゃない棚を使っている。
本って重いので、ヤワな普通の棚では耐えられなかったのか、
その一つが本の重みで壊れた・・・・_| ̄|○。
7段の内、上半分の棚が使えなくなり、そこに入っていた本は床に平積み状態。

その状態で、かなりの期間放置していた。

で、今日、少し整理しようと、床置した本を見てたら・・・・
SFはこれを読め!」(リンク先感想)で勧められていて、読みたいと思っていた
キリンヤガ (ハヤカワ文庫SF)」と「パヴァーヌ (サンリオSF文庫)」を発見w(゚o゚)w!!

ガーン、「キリンガヤ」は古本(と言っても、amazonで送料無料の所で買ったので500円くらいした)で
つい先日買ってしまったよ。
もっと早く、本の整理をしていれば・・・・。

「パヴァーヌ」が出てきたのも嬉しかったけど、カバーがかかっていたのもあって、
これを買ってから20年以上もの間「買いそびれた」と思っていた自分にショック(-_-;)。

本の整理、本気でちゃんとやらないとな~。
整理してると、同じ本2冊とか出て来て、これまたショック受けたりするんだけどね(-_-;)。
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「言葉使い師」神林長平:言葉の禁止された世界、イルカが統括する世界・・珠玉の短篇集 [本:SF]

言葉使い師 (ハヤカワ文庫 JA 173)

言葉使い師 (ハヤカワ文庫 JA 173)

  • 作者: 神林 長平
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1983/06/29
  • メディア: 文庫
7.5点

神林長平は、読めば面白いのはわかっているんだけど、なかなか読む気にならず、
人気があるし、出ている本も多いのに、ほとんど読んでない作家。
どうも、「粗筋」に惹かれるものが無いんですよ。
自分の好みからすると、健全過ぎるというか(^^;)。
でも、久々に一冊読みました。

表題作「言葉使い師」を含む6つの短編を収めた短篇集。

●「言葉使い師」は、言葉が禁止され、テレパシーによる意志の疎通が一般的になった世界の話。
「書かれた文字・文章」の力について、著者の考えが垣間見える話。
●「スフィンクス・マシン」は、絵が描けなくなった芸術家が、その理由を求め、
火星にある「スフィンクス・マシン」に会いに行く話。
機械的・合理的な考え方をする「スフィンクス・マシン」に、芸術とは、絵画とは何かを説明する
やり取りが興味深い。
●「愛娘」は、宇宙で生活する女性の驚くべき変化を書いた短編。
●「美食」味覚が優れすぎている男の、結婚生活。
●「イルカの森」は、イルカが統括する世界に迷い込んでしまった男の話。
そこで、人類は言葉を持たず、イルカに保護されて生活していた。
「知識」についてを考えさせられる短編。
●「甘やかな月の錆」は、母親が母親ではないように感じられ、本当の「母親」を求める少年の話。

神林長平は、簡潔だけど、情景がはっきり脳裏に浮かぶような描写が巧い。
「イルカが統括する人間保護のために作られた森」「火星の砂漠」「テレパシーで見る映画」などの
情景が鮮やかに描かれ、様々な舞台で展開されるどの短編も、その世界を楽しめた。

また「不老不死」「知識」「愛情」「本・文章の力」「人のイメージする能力」など、
作者が語りたい・読者に改めて考えて欲しい事が、テーマとしてしっかり物語に絡んでおり、
その点も良かった。
簡潔で読みやすい文章なので、ライトな印象に傾いてしまう可能性を、
テーマをしっかりと織り込む事で、全体を引き締めている感も。

神林長平って、「スフィンクスマシン」のようというか、知識・芸術・生命・愛情・・・
世の中の曖昧なものを定義付けしようといつも考えているような気がする。
「曖昧なものを定義付けしようとする試行錯誤」。
「曖昧なもの」は変われど、どの作品にも、その傾向が見て取れる。
だから、ストーリーやテーマが全然違っても、どの作品からも共通するものが、著者の思考が感じ取れる。

1980年代の作品なので、その当時、まだ若かった頃に読んだら、
「かなり影響を受けたかな?そうでも無かったかな??」と考えてしまった。
テーマがストレートに語られる分、若い頃に読んだ方が、より楽しめそうな気も。

どの短編もその世界がしっかり描かれ、秀作揃い。
お勧めです(^-^)ノ
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「バレエ・メカニック」津原泰水著:大脳皮質が死滅した少女の見る夢は・・・溢れるほどのイマジネーション [本:SF]

バレエ・メカニック (想像力の文学)

バレエ・メカニック (想像力の文学)

  • 作者: 津原 泰水
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/09
  • メディア: 単行本
7.8点

秀麗な文章で綴られる美しい情景と、胸に何かしこりを残すような物語が印象的だった短篇集
11 eleven」(リンク先感想)がとても良かったので、同じ作者の「バレエ・メカニック」を読んだ。

それぞれ物語を語る視点の主は違うけど、繋がりのある3つの中編「バレエ・メカニック」
「貝殻と僧侶」「午前の幽霊」が収録されている本。
「主人公」ではなく「語る視点の主」という言葉がピッタリくるような、構成と展開になってて、
その辺も著者のこだわりや技巧を感じた。

火星人の乗った巨大な蜘蛛型の乗り物が闊歩し、高速道路を突然津波が襲う。
銅像は苦悶の表情を浮かべながら人を串刺しにし、目の前には突然カルスト台地が広がる・・・。
突如、東京を襲った幻想の洪水。
この「砂嵐」と呼ばれた現象は、海で溺れ大脳皮質が死滅し、植物状態で生かされている
少女が見ている夢なのか・・・。

整いすぎて、どこか金属めいた硬質な文章なのにも関わらず、
物語の根底に流れる切なさ、悲しさが、ジワジワとにじみ出てそれに侵食されているような気分になる。
特に本のタイトルにもなっている「バレエ・メカニック」は、「少女」という存在が持つ無邪気さ、
父親の悲哀とノスタルジー、それが洪水のように物語を覆う溢れ出るイマジネーションの中で
描かれている。
幻想に覆われた世界が、厳しい現実と表裏一体である事が伝わってくるのも巧い。

第二章「貝殻と僧侶」第三章「午前の幽霊」は、そこまでイマジネーション溢れる話ではないが、
一章「バレエ・メカニック」の強烈で切ない世界観が、それら2つの物語を覆うような構成になっており、
最後まで、津原泰水の描く幻想と現実が混ざり合ったような世界を堪能できる内容になっていた。

津原泰水描く世界、少女の脳幹が見た夢の世界を堪能して欲しい。
すごくお勧め(^-^)ノ。

「SFはこれを読め!」谷岡一郎著:SF入門書。懐かしい本がいろいろ紹介されてた。 [本:SF]

SFはこれを読め! (ちくまプリマー新書)

SFはこれを読め! (ちくまプリマー新書)

  • 作者: 谷岡 一郎
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2008/04
  • メディア: 新書
7点

最近のSFの動向を知りたいと思って借りたら、発行日が2008年とちょっと前。
その上、紹介されてる本も、新しいのもあったけど、「懐かしい~!!!」って古典SFがいっぱい。

SFの面白さが語られていて、SF入門書としては、なかなか良い本じゃないかと。

いくつか読みたいと思う本もあった。
古典SFで、昔若気の至りもあり食わず嫌いしていた本で、「面白そう!」と思った本もあったし。
超寡作だけど、テッド・チャンは、すごさを認めている人が多いんだなーと思えたのも嬉しい♪

でも「読みたいと思った本」に関して、問題も。
全く知らなかった本に関しては、問題無し。
でも、「この本、買ったまま本棚に埋もれているような気がする」って本もいくつか。
その中には、買ったか、買ってないか怪しい本もあり、本棚を発掘するのが面倒。
でも一応探してみない内は、買えない・・・。
本棚を発掘するのを考えると頭が痛い。

で、読みたいと思った本覚書、
●「キリンガヤ」マイク・レズニック著:絶滅しそうなアフリカの
「キユク族」のために小惑星に作られた楽園。
古い伝統・価値観を意固地に守る事が良い事なのか、シニカルな視点で書いた本。
・・・・・・・・・・・・これ、一番読みたいなーと思った本。
で、買ったような気もするけど、買ってない気もする本・・・・(-_-;)探すの面倒だなー。
すでに絶版みたいだから、無ければ図書館か古本屋で探すようだし。
●「地球はプレイン・ヨーグルト」梶尾真治著:味覚で意思疎通する異星人とのファーストコンタクトもの。
これも、本棚にあったような・・・。
●「ゲイトウエイ」フレデリック・ポール著:コンタクト物で、「これを読まないのは人生の損失!」とまで
書いてあった。
●「マイナス・ゼロ」広瀬正著:タイムスリップ物。買ってあったので、読もうと思う。
●「山椒魚戦争」カレル・チャペック著:山椒魚が知性をもった話。
気になってたけど、読まないでいたので読んでみよう。
●「月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 207)」ハインライン:
表紙に惹かれなくて読んでなかった本(^^;)。
「SFはこれを読め!」を読まなかった限り、手に取らなかったろうなー。
ちなみに、リンク先は、昔の表紙。今の表紙は違うのになってます(私が知ってたのは昔の)。
●「リングワールド」「中性子星」ラリイ・ニーヴン:ニーヴンは、食わず嫌いして全く読んでなかったけど、
読んでみようかと。
●「竜の卵」ロバート・L・フォワード著:昔、同作者の「ロシュワールド」を読んだら面白かった。
で、この本も読もうと思ってたけど、なんでか放置してた。
●「パヴァーヌ」キース・ロバーツ著:サンリオSF文庫で出た時買い損ない、サンリオSF文庫の
最後の方に出た為少なめで入手困難だと諦めてたら、扶桑社から、訳も良くなって出てたらしい。
扶桑社のも絶版だけど、図書館にあったO(≧▽≦)O!

ここで上げた本でもわかるように、古典の名作が多いです。
他に「地球の長い午後」「幼年期の終わり」アシモフのロボットものなど、
古典中の古典もあるので、「本格SF」をこれから読もうと思っている方はどうぞ(^-^)ノ。
でもSFを読む人って、本気で減ってる気がするな~。

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「道化師の蝶」円城塔著:146回芥川賞受賞。まるで蝶のようにふわふわとした文章が心地よい♪ [本:SF]

群像 2011年 07月号 [雑誌]

群像 2011年 07月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/06/07
  • メディア: 雑誌


「群像」2011年7月号に収録されている第146回芥川賞受賞作品「道化師の蝶」円城塔を読んだ。
今回の芥川賞は、「共喰い」の田中慎弥の発言によって、円城塔氏の受賞が霞んでしまってて
悲しいのですが(田中氏本人も、申し訳無がっているらしい)、いつもより逆に注目されているとも
言えるのかも(^^;)。

円城塔の「Self-Reference ENGINE」は、私がここ数年で出会った本の中では一番好きなもの。
芥川賞受賞の「道化師の蝶」も、「Self-Reference ENGINE」を形作っていた
つかみ所のない不思議な世界観と文章に満ち溢れた作品だった♪

「旅の間にしか読めない本」についての書き出しで始められるこの短編。
その後、飛行機に乗り続けている人物の話になり、世界中を放浪しその国の言葉で
小説を書く正体不明の小説家の話、そして台所と辞書は似ているという始まりから刺繍と言葉の話へ・・・
と展開は、次々と予想しなかった方向へ移っていく。
「Self-Reference ENGINE」には、奇妙な世界、現実に近いけど常識が違う世界、
摩訶不思議な視点、様々な状況・事柄を綴った多数の短編が収められ、
一つ一つは関係なさそうに見える短編が集まり、一つの世界観を構築していた。
そして、この「道化師の蝶」でも、脈絡の無い展開は、微妙なずれを生じながらも、
どこかで繋がり合う。
そして、語られる言葉は、柔らかく曖昧で、文章自体が、ふわふわと飛び回る蝶のよう。

簡単に捕まえられそうなのに捕まらない、突然見失ったかと思ったら、また目の前に現れる、
そんな粗筋すら蝶のような物語。
とても円城塔らしい作品で、文章のセンスの良さ、イマジネーションの豊かさにも脱帽!
文章を読むのが好き!!
という人に、お勧めO(≧▽≦)O!!
円城塔の描き出す、ゆるゆるとした不思議な世界に浸りましょう♪
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「イマジネーションの戦争 戦争×文学」芥川龍之介、安部公房、筒井康隆、伊藤計劃、小松左京、赤川次郎・・etc彼らの書いた「戦争」! [本:SF]

イマジネーションの戦争 (コレクション 戦争×文学)

イマジネーションの戦争 (コレクション 戦争×文学)

  • 作者: 芥川 龍之介 ほか
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2011/09/05
  • メディア: 単行本
8点

集英社の「戦争×文学 コレクション」(全20巻)の5巻。
まだ全巻揃ってませんが、どんどん発刊されているようです。
このコレクションで読んだのは「アジア太平洋戦争」「ヒロシマ・ナガサキ」(リンク先感想)、これで3冊目。

この本は、現実世界ではなく、架空の世界が舞台の戦争をテーマにした作品を集めている。
まず作家陣が豪華!
芥川龍之介、安部公房、筒井康隆、伊藤計劃、宮沢賢治、小松左京、星新一、内田百聞、赤川次郎・・etc。
顔ぶれをみるとわかるように、SF的な作品が多い。

特に第一章の作品は、現実の世界が舞台じゃないからこそ、戦争という現象を多面的に捉え、
戦争が起きる要因、理由、戦争を引き起こす人の思考パターンや愚かさなどを、
強烈に描き出している。
2章は、サブタイトル通り「イマジネーション」溢れる作品が多く、その世界観も楽しめた。

ただ、前半パワーある作品が多かったのに比べ、後半が小粒なのが惜しいっ!

「歴史」カテゴリーに入れようかと思ったけど、SF作品が多いので「SF」カテゴリーに。

【1章】は創作話を通して、現実の戦争の恐ろしさ、醜さを描いた作品。

●桃太郎(芥川龍之介)-鬼の立場から見た昔話「桃太郎」。
平和を愛する鬼を、惨殺しまくる人間、桃太郎。
しかし、それは人々の間では正義の話として伝えられる・・・。
今の戦争も、情報は都合の良いようにねじ曲げられ、勝者側の立場でしか語られない。
負けた方が悪だ。
シンプルなお伽話だけど、実はすごく怖い話。

●鉄砲屋(安部公房)-馬の目島に降り立った、大国の武器商人。
恐ろしいほどの数の渡り鳥が、今年この島を休憩地にする・・と銃の購入を進めるのだが・・・。
言い続ければ、信じる人が増え、それによって大きな人々の動きが起きる。
その波が大きければ、思想統制は進み、反論する人達は弾圧にあう。
この話も、今でも似たような現象がそこかしこで起きているだろうことが、風刺されている。
その上、動きに巻き込まれている人は、その事に気が付かない、もしくは、
自分の立場などから信じる事をやめられない・・というのも同じで怖い。
アメリカのチェイニー国務長官が戦争で大儲けしたように、死の商人達の暗躍や、
そして死の商人達が、「普通の良い人」であることも想像できて怖い。

安部公房は、学生時代、一時期はまってた。
最初の数ページで安部公房らしい、シュールでシニカル、輪郭も描かれている物もぼんやりした、
暗いパステル調の絵を思い出すような世界が広がり、懐かしかった。

●通いの軍隊(筒井康隆)-紛争地帯で、武器を売っている商社で働く日本人サラリーマンが、
売ったマシンガンの不具合修理の為、最前線に「通勤」しなければならない状況に。
筒井康隆にしては、毒の強さは弱いけど、最前線に電車で通勤するという不条理さと、
サラリーマンの悲哀溢れる作品。
社員を消耗品として扱う企業の非常さとその、社命に従わなければならないサラリーマンの姿は、
国家と兵隊の姿と重なる。

●The Indifference Engine(伊藤計劃)-アフリカ紛争で、少年兵として戦場に駆り出された少年たち。
紛争が終わり、平和が訪れた時、彼らの本当の苦しみは始まった。
アフリカの少年兵問題と、ルワンダの虐殺問題をベースに書かれた話。
戦争による心の傷の深さ、憎しみの強さを、これでもかっ!と思うくらい、
辛く、悲しく、陰惨に描いた作品。
既読だったけど、改めて読みなおしても尚、胸にずーんと来る重さがある。

●既知との遭遇(モリ・ノブオ)-戦争をテーマにしたショートショート数編。
最初に掲載されているのが「映画の外の宇宙人-「人類の敵」の発明」。
ヒロシマ・ナガサキに落とされ、多くの人々の命を奪った核。
憎むべきそれは、映画の中で、宇宙人に向け、正義の鉄拳として発射される。
そして、本当に宇宙人が攻めてきた時・・・・他、
どれも3~4Pと短いながらも、ピリっとしまったショートショートが揃っている。

【2章】は、強力なイマジネーションの元に書かれた戦争。
●鳥の北斗七星(宮沢賢治)-烏の群れを軍隊と見立てて擬人化した作品。
宮沢賢治の童話的世界が展開される中、ラストの言葉が鋭い。

●春の軍隊(小松左京)-日本のあちこちで、突然、どこの国同士なのかも不明な戦闘が勃発。
住宅街が繁華街が、そこで生活している人とは無関係に破壊されていく・・・。
戦争とは、平和な生活を突然破壊するもの、それはいつ起こるかわからない、
いつ起きてもおかしくない・・ということを思わせる作品。

●おれはミサイル(秋山瑞人)-数百年の間、飛び続け、命令に従い闘い続ける戦闘機。
戦闘機は、ある時、積まれているミサイル達が会話している事に気がつく。
戦闘機もミサイル達も、戦争する理由をしらない。
ただ、命令の従い、敵と戦うだけだ。
「出来る限り生還する」が第一目標の戦闘機と、「敵を撃ち落として最後を迎える」のが目的のミサイル。
彼らの間には「グランド(地上)クラッター」が存在するという噂があったが、
広大な固体の平面があるなどということは、ナンセンス極まりない事であった。
終わり無き戦闘というシチュエーションがゾッとする虚無感を感じさせ、
また、そのような状況で交わされる戦闘機とミサイルのやりとりは、
いつも死を目の前にしていて、切ない。
センス・オブ・ワンダーに溢れる作品で、面白かった!

●鼓笛隊の襲来(三崎亜記)-戦後最大の鼓笛隊が発生!
台風のような自然災害。
でも襲ってくるのは、大音量で演奏する鼓笛隊の大群。
自然と共存できなくなった人間社会を風刺してもいるが、どこか可笑しく、ほのぼのしている。
重い話ばかりの中、ホッと一息つけるような暖かみがあり、とても好きな作品。

●スズメバチの戦闘機(青来有一)-少年は、裏山に入り、スズメバチと戦争を始めた。
敵とみなしたスズメバチを、最初は罪悪感にかられながら、一匹、一匹と殺していく。
そして、少年の心には大きな変化が・・・。
戦場での兵士の気持ちを、スズメバチを相手に戦う少年の気持ちに反映させた作品。

【3章】は「未来社会の戦争」が中心
●煉獄ロック(星野智幸)-男女は10歳になると、強固に管理・監視されたエリアで別々に生活。
そして、成人すると再び一緒に。
しかし、成人して2年間の間に、相手を見つけ子供を持てなければ、戦場に送られる世界。
歪に管理されている社会の描写は面白かったが、その管理社会が維持されている理由や、
土台になっている世界観があやふや。
途中まで面白かっただけに、あっさり終わってしまって残念。

●白い服の男(星新一)-戦争を忌むべきものとして、人類の歴史に戦争は無かったと、
改ざんしようとする世界。

●リトルガールふたたび(山本弘)-日本は、頭の悪い人間を尊敬するようになり、科学は衰退し、
愚かな民衆に政治は左右され、その結果、とんでも無いことを引き起こす・・。
山本弘の作品は、好きと嫌いが、ほんとにはっきりはっきり別れるのだけど、これは嫌いな方。
最初の方に語られる、「頭の悪い芸能人がもてはやされる」「科学的根拠の無い話をすぐ信じる」
「ネットの記事をコピペしたり、ネットで読んだ誰かの知識を自分の意見のように語り、
自分は知的だと錯覚している」・・・・etcと、きっと作者が思っているだろう、社会批判が延々と続く。
それが上から目線ですごく嫌な書き方がされており、山本弘の作品にありがちな、
語り過ぎ感も強く、読んでいて辟易。
途中から、その状況がエスカレートして、どんどんとんでも系の話になっていくんだけど、
前半の社会批判のリアルさとの乖離が激しく、笑えないし、未来社会を暗示するという怖さも、
感じられなくなっている。

●犬と鴉(田中慎弥)-戦争によって破壊されつくし、荒れ果てた町で、
敵の放った黒い人喰い犬達が人々を襲う。
病弱で、壕の中で横たわる主人公。
狂ってしまった母は、出征した父を探しに出かけたまま行方知れずとなり、
死んだはずの祖母が、「悲しみで満腹になれる」と語りかける。
食料が残っているという古い図書館に、父が籠城しているという噂を聞いた主人公は、
「悲しみで満腹になる」為、瓦礫の中、図書館に向かうのだが・・・。
戦場になった町の殺伐とした状況と、戦争で人を失う悲しみを、幻想的なタッチで描いた作品。

●「薄い街」(稲垣足穂)-立体万華鏡のような構造で、人々は逆さまになって暮らし、
笑ったり話したりすることは、刑法にふれる街。
SFだけど、戦争とどう関係があるのか、イマイチよくわからなかった。

【4章】は、戦争の一端を切り取ったような話。
●旅順入城式(内田百聞)-日露戦争で、多くの死傷者を出し、激戦の末勝利した旅順に
入城する様子を写した、活動写真を見ての、胸に迫る思いを書いた作品。
そのその気持ちはなんとなく理解できるのだけど、「日露戦争」や「旅順(大連)」に関して、
激戦だった・・ぐらいしか自分の背景となる知識が無くて、ピンと来なかった。

●うちわ(高橋新吉)-戦争が起きたと告げる号外。
しかし、狂った詩人は、それを自分を騙す為の嘘だと思う。
戦争云々より、論理的思考は自体は通常の人と同じなのに、出発点や物事の捉え方が違う為、
通常ではありえない考えに至ってしまう狂人の心理描写がとても興味深かった。

●悪夢の果て(赤川次郎)-大学教授である日下。
「教育改革審議会」で、「奉仕活動の義務化」が決定され、日本の未来を憂える。
奉仕活動の中には、「自衛隊の入隊」が含まれており、それが内申に有利、大学入試で考慮される、
就職でも有利・・・国はそういう方向へ持って行き、徴兵制を復活させようとしているのだと。
そして、父親の言う事など全く聞かなくなり、不登校となった息子達郎や、
他の若者達の自堕落な姿から、日本の将来をも憂える。
ある日目が覚めると、家族も立場もそのままに、昭和20年6月10日になっていた。
国の為に命を捨てるのが当たり前のことだと、赤紙を喜ぶ息子。
日本の敗戦を知っている日下は・・・・。
徴兵制、戦争中の思想統制、兵隊に行く若者や家族、周囲の気持ち・・・いろいろな要素はあるけど、
人間ドラマ中心になり、テーマがぼんやりしたものになってしまい、あっさり。
残るものが無かった。

●城壁(小島信夫)-中国の城壁。
城壁内で千年以上も暮らす人々もいる、古くて巨大なそれ。
そこを守備する事になったある部隊では、迷子になりようも無い場所で迷子になる兵が続発する。
隊長の命令は絶対など、軍の上下関係の厳しさ、理不尽な要求でも上官からの命令には
従わなければならない兵士の気持ちなどが、ドタバタした悲喜劇の中で語られている。

2章まではすごく面白かったが、後半は尻すぼみな感じ。
後半も悪くない話はあるんだけど、前半が良すぎるというか。
この本を読む人は、1・2章みたいな話を期待していると思うので、しょうがないのか?

でも、1・2章に収録されている作品は、どれも面白く、すっごくお勧め(^-^)ノ。
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「ジェノサイド」高野和明著:ハリウッド映画のような軽快なタッチの社会派風SF風小説! [本:SF]

ジェノサイド

ジェノサイド

  • 作者: 高野 和明
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/03/30
  • メディア: 単行本
7.5点

「本の雑誌」2011年上半期ベスト1!

難病「肺胞上皮細胞硬化症」に侵された息子の莫大な治療費の為、
バグダットで傭兵として働くイエーガーの元に、破格の報酬の任務が舞い込む。
それは高度な機密扱いの任務で、アフリカで何らかの暗殺任務を行うらしい。
それもその任務は「人類全体に奉仕する仕事」だという。
その頃、創薬化学を専攻する大学院生研人は、急死したはずの父から、謎のメールをもらう。
二人にしかわからない暗号が散りばめられたメール。
それは、父が秘密裏に行なっていた新薬開発の研究を引き継ぐようにとの内容だった。
しかし、父の死の直後から、研人の周りでは不穏な動きが・・・・。
アフリカと日本、全く別々の場所で行動し、立場も違うイエーガーと研人。
この二人を結びつけるモノ、それは人類の存亡に関わる事柄だった。

マスコミを抑えつけ、戦争を引き起こしたブッシュと、軍事産業で大儲けしたチェイニー。
この作品に登場するアメリカ大統領と副大統領は、明らかにブッシュとチェイニーをモデルにしている。
アメリカの闇の部分、大国の傲慢、資源のある国の紛争には積極的に軍事介入し、
その利益を狙う先進国、ルワンダの虐殺、アフリカの内戦や戦争、少年兵士・・etcと、
現代の国際問題があちこちに散りばめられている(この本で言われている事の中には、
いくつかある中の説の一つでしか無いものもあるので、それには注意)。

でも、重い話かというとそうでもなく、ハリウッド映画っぽい軽快なタッチで、
いろいろな問題提起はされているが、それを深く掘り下げるのではなく、
一つのガジェットとして利用している。
SF的な要素もいろいろあるのだが、これまたガジェットとしての利用で、
SF作品とまでも言い切れないものが。
だから、社会派ではなく「社会派風」、SFではなく「SF風」って感じがした(一応SFカテゴリに入れたけど)。

伊藤計劃の「虐殺器官」は、ルワンダの虐殺やアフリカの少年兵士などの問題など、
似たようなテーマを扱っているが、「虐殺器官」がそれらをテーマと深く関わるところに置き、
深く掘り下げ、人間の残酷さや愚かさ、戦場での心理などを、近未来社会という舞台で、
描き出した重いSF作品。

それと比べると、爽快でテンポよく読みやすく、上記した様々な国際問題、
アフリカ紛争地帯に潜入した傭兵たちの戦闘シーンの緊迫感、
そして極秘任務の裏に隠された秘密、薬の開発に関するトリビアなど、
いろいろな要素がうまく絡まり、最後まで一気に読ませる面白さがあった。

そして全く無関係と思われた極秘作戦と難病の薬開発の意外な関係が明らかになるストーリー展開は、
傭兵の作戦展開と、薬の開発のシーンが交互に描かれる。
話がブチっと切れてしまいがちなこの構成は「いいところで!」ってストレスを感じがちだけど、
どちらの話も面白いので、「いいところで切れた!」と言うより「読みたかった続きが読める」って感じで
ストレスがたまらなかったのもGOOD!

日本人が出てこなければ、ハリウッド映画のノベライゼーション、もしくは原作とも思えるような、
人の善き心に対する信頼感とか、未来に対する楽観的視点に溢れているのは、
扱っているガジェットが重すぎる為、物足りなさ感があったけど
(この辺もハリウッド映画を見た後と似ている)、エンターテインメント作品としては、
とても良いできで楽しめました♪
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「くらやみの速さはどれくらい」エリザベス・ムーン著:自閉症の青年から見る世界は不思議な感覚に満ちている。 [本:SF]

くらやみの速さはどれくらい (海外SFノヴェルズ)

くらやみの速さはどれくらい (海外SFノヴェルズ)

  • 作者: エリザベス ムーン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/10
  • メディア: 単行本
7.8点

2004年ネビュラ賞受賞。
「21世紀のアルジャーノンに花束を」と評された作品。

文庫版「くらやみの速さはどれくらい (ハヤカワSF文庫)」も出てます。

幼児期に治療を受ければ自閉症が治る未来世界。
しかし、まだ治療法が発見されない時期に幼児期を過ごした自閉症患者達。
そんな最後の自閉症者の一人である青年ルウ。
日々戸惑う事、困る事は多くても、職も友達も住む所も得て、自立して生きていた。
そんなルウに、職場から、自閉症の最新治療の実験台にならないかとの提案が。
自閉症でなくなるとはどういう事なのか?
自分が自分で無くなってしまうのではないか?
悩むルウは、どのような決断を下すのか・・・・。

自閉症者ルウの視点から語られる世界や、感覚は、すごく新鮮。
数字やカラー、パターンにこだわり、同じ刺激を与えてくれるトランポリンでのジャンプを好むルウ。
ノーマルな人々が自分が当たり前のようにできること、わかることが、できないことに驚く。
また、ルウは、理解できなくても「ノーマルな人々の感覚・感じ方」や「ノーマルな人々が
自閉症者に持つイメージや知識」を知識として持っていて、
普通の人々が自分たち自閉症者に持つ偏見や固定観念による誤解を敏感に察知する。
そして、「自分が頭を動かすと常同症と言われ、普通の人は首筋ほぐしと言われる」など、
自閉症者とノーマルとの評価のされかたの違いに疑問を持つ。
人を不快にしない為に、何故するのかは理解できなくても学び実行しているマナーを、
ノーマルの人々が守らない事や、ノーマルの人々でも悩みがあることを知り、戸惑いを覚えたりもする。

ノーマルの女性への片思い、フェンシング大会への参加、自分を狙ったらしい嫌がらせ・・・・、
様々な出来事を通じて、ルウは、自閉症者のままでいるべきか、治療を受けるべきか、
自問自答を繰り返す。

とにかく、独特の感性を持ち、ある意味純粋な心を持つ、自閉症のルウがとても魅力的に、
描かれており、その独自の世界観、感じ方に触れる事が、この本の楽しみ方だと思う。

一般に言われている自閉症者の考え方、感じ方を、彼ら自身が語ったら、
こんな風に語るんじゃないだろうか・・・と思えるのは、著者の子供が自閉症児だからだろう。

著者本人が自閉症である「自閉症だったわたしへ」に比べると、
普通とは違った感覚を持っていることの苦労、辛さ、混乱、怒り、
自閉症であるが故に陥った悲惨すぎる状況、周囲からの悪意・・・そういう暗い部分は弱い。
この話の場合、現実世界で自閉症者が遭遇する苦しさを描くのではなく、
彼らの持つ世界観の、面白さや良さ、そして特徴などを伝える事により、
彼らを少しでもわかって欲しいという、著者の願いが込められているような気がする。

新鮮で、優しく、そして物悲しく、また人の偏見や、当たり前と思っている物の考え方などについても
考えさせられる本。
すごくお勧め(^-^)ノ!

↓以下完全にネタバレ(ラストが書いてあります)なので、読む人は反転して読んで下さい。

ラストはすっごくあっさりしたハッピーエンド。
読んで、すごく複雑な気持ちになった。
ルウは、治療に成功し、過去の記憶も、天才的な頭脳も残ったまま 普通の青年になり、自分の大きな夢を叶える。
しかし、ラストに登場するのは、感じ方も考え方も変わったノーマルな好青年となったルウ。
作中で、その個性と純粋さが愛おしかった自閉症者のルウはいない。
それが、とても切なかった。

それは、好きだった田舎の風景が、開発の為消えてしまった、
未開の人々の素朴さが、文明化することで無くなってしまった、そんな寂しさ。
当事者にとってはいいことなのに、傍観者としてのわがままなノスタルジー・・・
そんな事を感じてしまった。

また、もし自閉症の治療法が確立したとした場合、
自分の子供がノーマルになり、しなくてもいい苦労をしなくなって欲しいという気持ちと、
自閉症児であることもひっくるめて愛しているその子がいなくなってしまう悲しさ・・・
そんな著者の複雑な気持ちがラストには反映されているような気もした。
自分の子供の成長も、嬉しい半面、寂しさがあるし。
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「MM9-invasion-」山本弘著:本格SF+怪獣小説第二弾・・期待してたけどイマイチだった(-"-;A [本:SF]

MM9―invasion―

MM9―invasion―

  • 作者: 山本 弘
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2011/07/21
  • メディア: 単行本

5点

一作目「MM9」(リンク先感想)がすっごく読んでて楽しかったので期待して読んだ2作目。
しかーし、期待に反してイマイチだった・・・_| ̄|○期待してた分がっかり感がでかい・・。

「クトウリュウ」との死闘の後、眠り続ける人型巨大怪獣「ヒメ」。
その「ヒメ」を移送するヘリコプターに青い火球が接触。
火球から現れたと思われるのは宇宙怪獣。
目覚めたヒメは、宇宙怪獣と戦う。
その現場に居合わせた高校生の案野一騎は、ヒメに憑依した宇宙人からのテレパシーを感知する・・。

前半、宇宙人の憑依により人間並の知能になったヒメと、
一騎のドタバタラブコメみたいな展開が続いて辟易。
これは好みの問題なんですが、ライトノベル嫌いなので、ダメでした。

元々、山本弘の小説はディテールの面白さが好みなんだけど、それが一巻で使い果たされ、
2巻はストーリーメイン、それもラブコメ調・・・ってところで、完全に自分の守備範囲外。
それと、「ガメラと心を通じ合わせた子供」みたいな設定や展開も嫌いで、
それにも当てはまってしまい・・。

戦闘シーンは面白かったけど、「日本を震撼させる緊迫感」ではなく、
「高1の少年とヒメに憑依した異星人ジェミーの交流と、二人の危機!」みたいな話で、
宇宙怪獣が攻めてくる!首都が狙われてる!って緊迫感があまり無かった。

ラブコメ調ライトノベルが好きなら、楽しめるのかもしれない。
一作目と違い、ほとんど楽しめなかった(-_-;)。
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「ここがウィネトカなら、きみはジュディ」時間SF傑作選:テッド・チャン、プリースト、ボブ・ショウ、ワトソン・・・名作揃い♪ [本:SF]

ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

  • 作者: テッド・チャン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/09/22
  • メディア: 文庫
7.5点

大好きだけど寡作なテッド・チャンの短編が収録されていたので読みました。
でも他の作品も粒ぞろいで読んでよかった~と思えた一冊(^^)。

・「商人と錬金術師の門(テッド・チャン)」-中世(古代か?)アラビアを舞台にした、
時を行き来できる門にまつわる話。
テッド・チャンの短篇集「あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)」(傑作!)でも感じた、
説話っぽさを持ちながらも、切なくて、優しい人間ドラマと、摩訶不思議なタイムトラベルのアイディアが
うまく絡んでいる作品。
テッド・チャンらしい、雰囲気が楽しめて満足♪

・「限りなき夏(クリストファー・プリースト)」-写真のようにある一瞬を凍らせる凍結者達。
それから逃れられた主人公が望む事は・・・。

・「彼らの生涯の最愛の時(イアン・ワトソン&ロベルト・クアリア)」-最愛の人を失い、
彼女と合うため過去に行く研究をする主人公。その運命は・・・。
「イアン・ワトソンはやんちゃ」と解説に書いてあったけど、これを読むと、本当にそうだ!と納得。
いい話なのに、笑えちゃうという作品。

・「去りにし日々の光(ボブ・ショウ)」-光が通るのに何年もかかり、過去の情景を映し出すスローガラス。
それを題材にした作品。ボブ・ショウは、人間の機微を書くのがすごくうまく、この作品も、
スローガラスというアイディアと、それにまつわる人間の悲しいドラマがうまく融合している。
スローガラスにまつわる話を集めた「去りにし日々、今ひとたびの幻 (1981年) (サンリオSF文庫)」に
収録されていた作品で、数十年ぶりに読み直しました。

・「時の鳥(ジョージ・アレック・エフィンジャー)」-大金をかけて過去の「アレクサンドリア図書館」に、
観光旅行にでかけた主人公。そこで見たものは・・・。とんでも系かな。

・「世界の終わりを見に行った(ロバート・シルヴァーバーグ)」-未来への観光旅行の話。
観光旅行で見られる地球の終わりより、登場人物を取り巻く社会情勢の方が怖い作品。

・「昨日は月曜日だった(シオドア・スタージョン)」月曜日に寝て目覚めたら、水曜日だった。
消えてしまった火曜日はどこに?不条理ものだけど、描かれる世界が面白い♪

・「旅人の憩い(ディビッド・I・マッスン)」-激しい戦闘が繰り返される前線。しかしそこを離れるほど、
時間の流れが遅くなっていく・・・という設定の作品。
不思議な魅力を持った作品で、かなりインパクトがありました。

・「いまひとたびの(H・ビーム・ハイパー)」-戦闘で意識を失った主人公は、
13歳の頃の体に意識だけが戻っていた。未来を知っている彼が行おうとしたのは??
割りと素直な展開のタイムトラベルもの。

・「12:01PM(リチャード・A・ルポフ)」-「1時間」という時間を延々とループするようになってしまった世界。
主人公だけが、そのループの記憶を持っている・・絶望の中であがく主人公の姿が悲しい。

・「しばし天の祝福より遠ざかり・・・(ソムトウ・スチャリトクル)」-毎日、全く同じ行動をとる
「24時間」が繰り返される世界。人々はそのループの記憶も持っている。
2時間だけ休息時間があるのだが・・。

・「夕方、はやく(イアン・ワトソン)」-毎日朝から夜までの間に800年以上の人類の歴史を繰り返す世界。
朝は掘っ立て小屋だったのが、夕方にはテレビが・・・。
イアン・ワトソンらしい、破天荒なアイディアに満ちた作品。

・「ここがウィネトカなら、きみはジュディ(F・M・バズビイ)」-表題作。
意識が過去にも未来にもタイムスリップし、自分の人生を細切れに生きている主人公。
最愛の女性と再開したことで彼の運命は・・・。

最初の4作が、ロマンス系の時間SFだったので(ラブロマンス嫌い)、どうかなーと思ったけど、
どれも単なるメロドラマにはならず、時間のアイディアをしっかり生かしている展開でよかった♪
アイディア主体の物、面白い世界観を見せてくれるもの・・・バラエティに飛んでいたし、
どれも粒ぞろいで、面白く読めました。
宇宙物に比べ壮大さはないけど、難解なタイムパラドックスものは無く
(その辺期待するとがっかりするかも)、時間SFが好きな人なら気軽に楽しめるはず♪
古い作品も多いので、ちょっと古典的すぎるかなーと思えるものもあったけど、
古くても未だ魅力を持ち続けている作品もいっぱいです(^^)。
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「MM9」山本弘著:本格SF+怪獣小説!読んでて楽しすぎるO(≧▽≦)O!!! [本:SF]

MM9

MM9

  • 作者: 山本 弘
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2007/12
  • メディア: 単行本
7.5点
文庫版「MM9 (創元SF文庫 )」も出てます。
ついでにドラマ化もされてて「MM9 DVD-BOX I(仮) 【期間限定版】」が出ているようです。

「怪獣」が存在するという設定の現代社会。
そこでは、地震や台風と同列の自然災害としての「怪獣災害」が。
「MM」とは、モンスターマグニチュードの略。
モンスターの大きさにより0~9まで。
怪獣の大きさ、被害規模、進路・・・を予測し対策を立てる「気象庁特異生物対策部」の活躍が、
物語の主軸。
次々に出現する、様々な形態を持つ怪獣たちに対して、
「気特対」は有効な手段を見つける事ができるのか?

以前読んだ山本弘の短篇集「まだ見ぬ冬の悲しみも」(リンク先感想)の中に収録されてた、
「加速装置」(サイボーグ009)を使用している側からの視点が秀逸だった「奥歯のスイッチを入れろ」。
山本弘は、アニメなどの設定を、現実世界にリンクさせたものというか、2次創作ものを描かせると
すっごく面白い!!ということを、この本を読んで再認識。

現在の物理法則だと怪獣が存在できないので、作中では「多重人間理論」という説で、
怪獣の存在理由を説明している。
現実の世界と同じように見えて、ちょっとだけ違う世界。

台風情報や地震速報のように「怪獣注意報」が発令され、「怪獣は午前7時現在小笠原沖・・・」
「夜半に関東から中部の太平洋岸に到達する公算」なんてニュースが流れちゃうし、
「怪獣予報」が外れてタクシーの運ちゃんに愚痴られちゃったり、
マスコミから「怪獣の名称は?」なんてせっつかれちゃったりする世界。
「怪獣災害」なるものがある世界だったら、本当にこんな感じなんだろうなーと、
読んでて、ついついニヤニヤしてしまう。
世界観のディテール部分がとにかく楽しくて楽しくて♪

怪獣らしきものを発見、大きさ、形態、不明。
実態調査、進路予想、日本に上陸した時の被害の大きさ推測、警報の発令、
自衛隊への指示・・・スペシャリスト集団「気象庁特異生物対策部」の、対怪獣災害への、
緊迫感あふれる描写を読んでいると、
頭の中でMATのテーマ「ワンダバ」(リンク先Youtube)が勝手に流れてた。
ULTRA SEVEN」(リンク先Youtube)でも不思議じゃないんだけど、
未知の怪獣に立ち向かう緊迫感が溢れてるので、脳内のスイッチは「ワンダバ」をオンにしたらしい
(「ULTRA SEVEN」は、颯爽と怪獣に立ち向かうイメージなので)。

「気象庁特異生物対策部」は、気象庁所属な訳で、「怪獣」という脅威から人を守るという使命の割には、
公務員として地味な活動をしているのも泣けます(「怪獣」を攻撃するのは自衛隊)。
予算が無くて、ヘリコプターも自前のは無いし。
「避難情報」を出して、予想が外れたら・・・なんて悩みも。

ディテール部分はすっごく面白くて楽しめたんだけど、ストーリーが突出して面白い!まで
行かなかったので(ディテール部分の面白さに負けてるというか)点数はちょっと辛め。
もうちょっと登場人物に魅力があったり、語り口に気になる部分がなければ
(「神は沈黙せず」でも気になった、延々と登場人物が語ってしまう部分が)傑作だったのに。

でも、読んでてすっごく楽しかったのは確か♪
読んでて楽しい本、巡りあえて嬉しい本でした。
ウルトラマンシリーズが好きな人に、超絶にお薦めO(≧▽≦)O!
続編「MM9―invasion―」もあるので、近日中に読みます。
※2011/11/1追記:読みました。感想はこちら
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「現代語裏辞典」筒井康隆著:筒井康隆らしいブラックなセンス満載の辞典♪ [本:SF]

現代語裏辞典

現代語裏辞典

  • 作者: 筒井 康隆
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/07/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
8.5点

筒井康隆による現代語の辞典。
12000項目もあります。

一番最初の項目は「愛」。
「すべて自分へ向ける感情。他へはお裾分け」。

他もこんな調子で、筒井康隆らしい、ナンセンスさブラックさに満ち満ち溢れいて、
どの項目を読んでも「ニヤリ」としてしまうこと必至!!

帯に書いてある「辞典:唾棄すべき常識の巣窟。本辞典のみはさにあらず」が納得な一冊!
筒井康隆ファンなら、絶対持つべき辞典。
たまにパラリとページを開いてニヤリ・・・それが正しい使い方(^-^)ノ。
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小松左京氏逝く・・・・ [本:SF]

小松左京氏が肺炎で亡くなったそうです
日本SF会の大御所がまた一人逝ってしまいました(T△T)。
寂しいです。

小松左京氏の作品ですごく好きなのは日本沈没(リンク先感想)。
「祖国がある」というのがどれだけ大切な事か考えさせられた一冊です。

合掌。・°°・(>_<)・°°・。
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「マルドゥック・スクランブル2と3」冲方丁著:面白かった!でも複雑な心境(^^;) [本:SF]

マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustion 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustion 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 冲方 丁
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/10/08
  • メディア: 文庫

マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaust 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaust 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 冲方 丁
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/10/08
  • メディア: 文庫
7.5点

1巻を読んだ時(リンク先感想)は、どこかで見たような、
映画やアニメでありそうな・・・って印象が強かった本書。

2巻、3巻は、逆に「今まで見たことないぞ!」ってな展開になりびっくり。
簡単に言えば、賭博SFアクション。
2巻の中盤から3巻の中盤まで、2冊の内の1冊分ぐらいカジノでのギャンブルシーンが続いてます(^^;)。
で、このギャンブルシーン、手練のディーラーが台詞や態度でお客をカモに仕立て上げていく様、
主人公バロットとの心理戦や駆け引きなどが、見事に描かれ、すっごく面白い!
ウフコックがバロットに指示を出したりディーラーの手の内を解説すると要素もあり、
SF的小道具もきいてます。

最後は、1巻で展開されたような緊迫感にあふれ迫力ある戦闘シーンが繰り広げられ、
ここもまた面白い!

しかし、長い長いギャンブルシーンが面白いだけに、逆に作品トータルで見るとなんて言っていいのか、
微妙というか、手放しで褒められないものが。
内容的には、ちゃんと全体に絡まるように展開されているんだけど、
それでも長丁場のカジノのシーン、完成度が高いせいもあり、
逆にこの部分が別の作品のように浮いてしまっている感じがぬぐえない。

作品の中で主人公バロットの成長や、万能兵器のネズミ、ウフコックとの絆の深まりもちゃんと描かれ、
1巻では上辺だけっぽかった「バロットの心の飢え、叫び」も、
2巻、3巻では、作品に根を下ろしていた。

でもでも、やっぱりSFアクションものと、ギャンブルもの、
2つの全く違う作品が1つに合体した・・・という印象が拭えなくて、
大絶賛とまでは行かないという、不思議な読後感が残る話でした。
面白かったのは確かなんだけど(^^;)。
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「マルドゥック・スクランブル1」冲方丁著:すごく映画・アニメ的だった [本:SF]

マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 冲方 丁
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/10/08
  • メディア: 文庫
7点

娼婦パロットは、賭博師シェルにより殺されかけ、爆炎に飲まれた。
瀕死の彼女を救ったのは、万能兵器のネズミ、ウフコック。
パロットは、シェルの犯罪を暴くのを目的とするウフコックに協力することに。
そんな生き証人のパロットを抹殺する為、かつてウフコックを使い殺戮の限りを尽くしたボイルが動き出す。
生きる意味を探し続ける少女パロット。
戦いの中で、彼女は何を見つけるのか?

エアカーの登場で、エアカーを使える上流階級と、ガソリンカーを使う中流階級、
そして貧困階級などの格差ができた社会。
科学技術の進歩による万能兵器ウフコック。
対する敵も、人体改造により個性的な容貌をし、それにあった武器を使用していたりする。
そういう設定は興味をひくし、少女パロットの生きる為の意味探しも、
ストーリーにうまく絡まっていて面白い。

ただ、どうも、各シーン、頭の中で「どこかで見たような」と思ってしまう自分がいる。
「こんな感じかな?」とあれこれ想像するのではなく、いままで映画、アニメ、漫画で見たシーンの
どれかが当てはまってしまうような・・・。

主人公が美少女で武器を持って戦い、相棒は万能兵器だけど見た目はネズミ、
個性的な殺し屋達がおり・・・うん、やっぱり設定自体が映画とか漫画とかアニメ的。
映画・アニメ・漫画の脚本、ノベライゼーションだと言われてしまったら納得できてしまう感じ。

ビジュアル的なイメージが作り易いのは、著者の描写が上手いせいもあるけど、
それが良い方にも、悪い方にも働いている感じがした。

最後の戦闘シーンは、すごく盛り上がるし、全体を通して面白く読めたのは確か。
でも、スペオペが西部劇の舞台を宇宙に移しただけ・・と言われたのと同じで、
小道具はSF的だけど、科学の進歩で人の意識が変わり、社会も変わる、
そんなSF的な世界の展開、それを読む自分の気分の高揚が無かったのが残念。

若い頃、読んでいれば、また評価も違ったろうなー、
読むのが遅すぎた(と言っても、若い頃にこの本は無かった)思えた一冊。

これ一冊完結物かと思っていたら、途中で話が終わってて焦った。
その内、続きも読んでみようと思う。
全部通しで読んだら、印象もまた変わるかな?
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「メタルギア ソリッド-ガンズ オブ ザ パトリオット」伊藤計劃:元ゲームをやってないのが残念! [本:SF]


メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット (角川文庫)

メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット (角川文庫)

  • 作者: 伊藤 計劃
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/03/25
  • メディア: 文庫
7.5点

コナミの人気ゲームメタルギアシリーズの「メタルギアソリッド4」のノベライゼーション。

虐殺器官」「ハーモニー」などの名作を生み出した伊藤計劃によるものなので、
単なるノベライゼーションに留まらず、小説としても完成度の高いものになっています。

「戦争経済」が発達し、企業による代理戦争が繰り広げられる世界。
ネットワークが発達し、ID管理される武器や兵士。
兵士は体内に注入されたナノマシンにより、感情や痛みを制御され、敵を殲滅する。
主人公ソリッド・スネークは、「ビッグボス」のクローンであり、
生み出された際に遺伝子に組み込まれた仕掛けにより、急激な老いを迎えていた。
70歳を超える衰えた肉体を持つソリッド・スネークが挑むのは、
「全世界的戦争状態」を作り出そうとする同じクローン体の、リキッド・スネーク。
余命僅かなソリッド・スネークは任務を果たす事ができるのか。

とにかく、序盤読み進めるのが辛かった・・・。

ノベライゼーション、それも「メタルギア4」のノベライゼーションであるこの作品。
ゲームをやってなくても楽しめるように、序盤、今までのストーリーが要所要所で説明されてます。
それが辛かった!!

だって、

ゲームやってたら、何倍も面白く読めそう

だったんだもの(-_-;)。

私は「メタルギア」は、全くやってません。
登場人物も、どんなシステムのゲームかも知らないくらい、未知のゲーム。
「スマッシュブラザーズX」に出ているらしく、息子はスネークを知ってたけど
(息子、本を見つけて大騒ぎしてた・・・興味を持って読もうとしたらしいけど1pで挫折してた(爆))。
スマッシュブラザーズシリーズに出るってことは、かなりメジャーなゲームなんだとびっくりしたくらい。

ということで、「メタルギア」に関しては全く白紙の私。
そんな状態で読むのは、もったいないなーとか、いろいろ思っちゃって。

と、序盤、だらだらだらだらと読んでしまったけど、読み進めて世界観が見えてくると、
俄然面白くなりましたV(≧∇≦)V。

国の利益の為ではなく、企業が自分の利益の為に戦争を行う「戦争経済」の概念などは、
戦争なしでは経済が成り立たない「アメリカ」の現状を考えると、かなりリアルで怖いものが。
誰が望むでもなく、いろいろな要素が絡み合い、結果そういうシステムが
世界を支配するようになったメタルギアの世界は、グローバリゼーション化が進む今の世界とリンクもする。

伊藤計劃はメタルギアの大ファンだったらしく、メタルギアの世界観を知ると、
「虐殺器官」などは、メタルギアの世界観がかなり影響してるんだなーとすごく思った。

メタルギアの世界観や、緊迫感溢れる戦闘シーンも面白かったけど、
老いにより限界を迎えている肉体を酷使しても任務を遂行しようとする、
スネークの生き様に感銘を受けました。
自分が何を残せるのか、死にゆく自分が何をすべきなのか・・・
作中、死に直面した登場人物達は自問自答を繰り返す。
病に侵された状態で出筆していた作者の心の叫びとリンクするんじゃないかと、ついつい深読み。

メタルギアをプレイした事がある人なら、すっごく楽しめるはず。
そうじゃないけど、伊藤計劃ファンの人も、彼の描く世界観の由来がわかる作品としてお勧め♪

読み終わったあと、メタルギアの公式サイトでキャラクターの画像とか見ました。
ソリッド・スネークの相棒「オタコン」があまりにダサくてショック(^_^;)。
最初に見た「メタルギアソリッド」のオタコンの画像が酷かった。
他は、まぁまぁ許容範囲だったけど(^_^;)。
雷電は、想像よりカッコよかった~♪

キャラクターを知ってから読むか、知らずに読むかでも印象は変わりそう。
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「伊藤計劃記録」伊藤計劃のファンなら是非!! [本:SF]


伊藤計劃記録

伊藤計劃記録

  • 作者: 伊藤計劃
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/03/19
  • メディア: 単行本

8点

虐殺器官」「ハーモニー」などの傑作を残し、34歳の若さで逝ってしまった伊藤計劃の、
短編、未完の作品、対談、インタビュー、映画評などを集めた本。

短編は「The Indifference Engine」「セカイ、蛮族、ぼく。」「From the Northing With Love」。
また未完の「屍者の帝国」も掲載されてます。

「The Indifference Engine」は、シエラレオネやルワンダの戦争(内戦)を
モデルにしたと思われ、敵民族を殺すのが当たり前と教育された少年兵が主人公の物語。
大人の残酷さ、先進国が施す援助の身勝手さ、純粋だからこそ恐ろしい少年兵の内面。
現実で起きていることの恐ろしさを、仮想の国の事として描いている作品だけど、
伊藤計劃の書きたいものというのはもっと別にある気がする。
人間の理性、正義のあり方とか・・・「虐殺器官」へつながるような作品。

「From the Northing With Love」は、ある特別な立場の男が主人公の話。
意識に関することがテーマで、こちらは「ハーモニー」につながる作品だと思う。

「屍者の帝国」は、ほんと、さわりだけで、これが完成しないままなのが本当にもったいない(T_T)。

小説以外の、コラムや対談、インタビューを読むと、伊藤計劃の考え方がいろいろわかって面白い。
「虐殺器官」や「ハーモニー」に関する、著者インタビューも。
ウィリアム・ギブスン&ブルース・スターリングの「ディファレンス・エンジン」の書評や、
円城塔との対談も。

自分が何で伊藤計劃や円城塔が好きなのかもわかった。

小説を書く時、ディテールを積み上げ、展開だけでつないでいく伊藤計劃。
構造を積み重ねていくいく円城塔。
スタイルは違えど、長期的視野を持たずに書いているらしい。

エピソードの積み重ねで話が進んでいく、先の展開が見えない小説、
そういうのがすごく好きな私にはぴったりマッチしてるんだと納得。

伊藤計劃がこよなく愛する「ディファレンス・エンジン」。
彼が言うには、この話は、物語読みには辛いが、
「世界観」読みにはたまらないという。
この「世界観読み」というのも、自分に当てはまる。

伊藤計劃も指摘しているけど、魔法があっても、宇宙空間に出ても、
単に舞台や小道具が変わっただけで、人々の意識は、今の私たちとあまり変わらない・・っ
ていうのはつまらない。

伊藤計劃の作品は、テクノロジーの発達により、
人の常識や生活が変わった世界を見事に描いていて好きなんだけど、
本人にも、そういう気持ちがあったんだなーと納得。

「虐殺器官」は、イーガンの影響を受けているのははっきりしているけど、
本人は、「イーガンはオプティミスト、自分はペシミスト」だと言っている。
「バラードの心でスターリングのように書きたい」との事。
うううう、是非そういう作品をたくさん書いて欲しかった。
きっと、それはすっごく私の好みだったはず。
バラードの作品、特に破滅三部作の持つ、静かな悲壮感はすごく好きだし。
それが読めないと思うと、本当に本当に残念(T_T)。
きっと、年齢を重ねるごとに、いろいろなテーマで読ませてくれた作家だと思うのに・・・。

読んでて、うんうんと思っちゃう部分は多かった。
もちろん、違う部分もあったけど。

伊藤計劃が最初にSFだと意識して読んだ作品は、ギブスンの「ニューロマンサー」だとか。
すごくカッコいいと感じたらしい。
私も「ニューロマンサー」が日本で出版され、
サイバーパンクサイバーパンクと騒がれていた頃に読んだけど、全くカッコ良さがわかりませんでした(^^;)。
どちらかというと、日本を扱ったSFなら、ベイリーの「禅銃」読んで、
侍で「小姓」と呼ばれている主人公とか、そこで描かれる怪しいジャパンに興味が行ってたし(^^;)。
「ニューロマンサー」がいまいちだったので、その後サイバーパンクにはあまり手を出さなかったし。

でも、伊藤計劃が一番気に入っているらしい
スターリングの「ディファレンス・エンジン」は読んでみようと思ってます♪
調べてみたら、スターリングは、ベイリーを師と仰いでいるとのことなので、面白く読めるかも。

後半の1/2くらいは、ネットに掲載していたという映画評。

かなり独断と偏見に満ちていて、とんがってる部分も。
共感できること、これは違うなーってこと、この映画にはこんな捉え方もあるんだってこと、
いろいろ考えさせられて読み応えはありました。
読んでて面白かったし。
でも、人気のある作品を酷評してることもあるので、カチンと来る人もいるかも(^^;)。

マイケル・ベイは、伊藤計劃もあまり好きじゃないみたいなんだけど(私もいまいち)、
「アルマゲドン」は褒めててちょっと意外だった。

また、ブレードランナーの、細部へのこだわりへの評価とかは、思わず共感。
私はそれプラス、ルトガー・ハウアー萌えもあったんだけど(笑)。
レプリカント役のルトガーは、カッコよかったよ♪
「ヒッチャー」のルトガーも良かったけど。

私は、そんなに幅広く映画を見ているわけではないので(ホラーに偏ってるというか)、
見ていない映画も多かったけど、ここで紹介されている映画でいくつか見たいと思った映画も。

メジャーどころでは「トゥルーマン・ショー」や「プライベート・ライアン」。
他に、「ファイト・クラブ」、スチーム・パンクだと絶賛している「ワイルド・ワイルド・ウエスト」。
バーフォーベン作品ながら、評価が低すぎて見るのをやめてた「インビジブル」も、
伊藤計劃の映画評を読むと、見ようかな??とか思っちゃう。

最近ほとんど見ていない押井守の「人狼」は、
「紅い眼鏡」と同じシリーズだと知って、見ようかな~とちょっと悩んでる。
同じく押井守の「アヴァロン」も悩む。

昔懐かし管理者会萌え「リベリオン」。
かなり微妙でちぐはぐさがある映画らしいので(超管理社会と変なカンフーの組み合わせ)、
見ないような気がするけど、気になったので一応覚書。

「ガメラ3・邪神<イリス>覚醒」も、面白そうだと思ったけど、
ガメラの造形あまり好きじゃないので微妙。

伊藤計劃の「虐殺器官」「ハーモニー」を読んでない人は、まずこの2冊から。
それで伊藤計劃のファンになったら、是非この本をO(≧▽≦)O!!!!
伊藤計劃のファンには嬉しい一冊です♪
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「グラン・ヴァカンス」「ラギッド・ガール」飛浩隆著:「廃園の天使シリーズ1&2」面白いO(≧▽≦)O!! [本:SF]

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

  • 作者: 飛 浩隆
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2002/09
  • メディア: 単行本
8点
ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

  • 作者: 飛 浩隆
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 単行本
8点

飛浩隆の「廃園の天使」シリーズの1と2。
文庫版「グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉」「ラギッド・ガール 廃園の天使 2」も出てます。

1作目「グラン・ヴァカンス」は長編。
2作目「ラギッド・ガール」は、「グラン・ヴァカンス」の背景を成すエピソードを集めた中短編集。

ネットワーク内に人工的に造られたリゾート地<数値海岸>の一区画<夏の区界>。
突然ゲスト(人間)が訪れなくなって千年以上、その区画に住むAI達は、
同じような日々をトレースして過ごしていた。
しかし、その区画を恐ろしい厄災が襲う。
<夏の区画>を襲ってきたモノは何なのか?そしてその目的は。
AI達は、不思議な力を持つ硝視体(グラスアイ)を使い、未知の敵に立ち向かっていくのだが・・。

というのが、「グラン・ヴァカンス」の粗筋。

飛浩隆の描写力は、少し前に読んだ「象られた力」でも感じたけど、
この作品でも、そのすごさに舌を巻いた。

夏のリゾート地を思わせる街並みの描写。
突然現れ、その世界を破壊する<蜘蛛>達と、
破壊される街並み、喰われていくAI。
不思議な力を持つ硝視体のパワーの発現。
ネットワーク世界であることを利用した独特の戦闘。

どれもが目を閉じると浮かんでくるように描写されている。

ネットワーク世界で生きるAI達。
思考や感情は限りなく人間に近く、痛みも味も感じる。
それなのに、自分たちがAIであることを認識し、世界が閉ざされている事も、
自分たちが持つ昔の記憶が起きた事ではなく、設定でしか無いことを認識してもいる。
その部分を違和感なく、描き出しているのもすごい。
この辺、一歩間違うと、とってつけたような設定になってしまうのに、
そのAI達独特の思考が、作品の隅々にまで影響を及ぼしている。

最初に描かれるキラキラと眩いような爽やかなリゾート地の描写は、
突然一転し、恐ろしい力を持つ<蜘蛛>達が町を破壊し、喰らうという凄惨な描写へと切り替わる。
そして、その後、硝視体を駆使するAI達と、蜘蛛達との熾烈な戦いが描かれる。
その合間に語られる、AI達の記憶や人生、そして<夏の区界>の秘密。
ストーリーも、、アクション、センチメンタリズムやミステリーの要素を持つ、
刺激的でを飽きさせないものとなっている。

この著者の作品は、どこか硬質でもある。
冷たい硝子のケースの中に収められた物語を覗くような気持ちにさせる。
しかし硬質なだけでなく、全体を覆う官能性と残虐性が、エッセンスとなり、
この仮想の世界を彩り、物語を奥深いものとしている。

ネットワーク内に構築された世界を存分に楽しめる一冊!
お勧めですV(≧∇≦)V!!

2冊目の「ラギッド・ガール」は、この仮想世界を創り上げるのに必要だったある醜い女性の話や、
この世界を襲ってきた敵に関する話、何故<ゲスト>(人間)が区界に来なくなったかの理由、
この世界の他の区界の話など、より深くこの<数値海岸>の世界を
知ることができる作品が集められている。

「グラン・ヴァカンス」が気に入ったなら是非読んで下さい(^^)。

3作目で完結ということだけど、それはいつ発売されるのだろう・・・。
待ち遠し~いっ!!
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