So-net無料ブログ作成
検索選択
本ノンフィクションいろいろ ブログトップ
前の30件 | -

「捨てる女-突然あたしは何もない部屋に住みたくなった」内澤旬子著:断捨離とはまた違った「物を処分する話」 [本ノンフィクションいろいろ]

捨てる女

捨てる女

7.5点

道端のガラクタなども拾い集めるような著者が、乳がんからの回復をきっかけに、
物を捨てたい衝動に駆られ、いろいろ捨てまくる話。
単に「物を処分する話」ではなく、物を処分しようとしている人なら共感できるいろいろな葛藤、
そして収集したものにまつわるエピソードから著者の人生が見えてきて、面白く読めた一冊!

また、同著者の自分で豚を育てて食べるというのを一冊の本にした
飼い喰い-三匹の豚とわたし」(リンク先感想-面白いよ!)の中では語られなかった、
豚を飼うために借りた廃屋(に近い物件)のゴミの片付けの壮絶な話なども載ってて、
「飼い喰い」を読んでいると、より楽しめる内容になってます♪

まず著者は、半端無く物持ちだったよう。
ガラクタなどですら拾う、捨てられない、収集癖がある・・・それ以外に、イラストと文章の仕事を
「来たら断らない」のスタンスで行っていたため、「いつか使うかも」「また使うかも」という資料が、
大量に堆積。
物に溢れ、寝るスペースしかないような、生活をしていた著者が、物を捨てようと決心したのは、
乳がん治療が終わったあと、狭い閉塞感のあるスペースが耐えられなかったというのが理由らしい。
大病をすると、価値観が変わる、人が変わる事がある・・とか聞くけれど、こういうこともあるんですね。

まずは、ストックしてある食料。
著者は、「腐らない限り捨てられない」と、10年以上放置してあった梅酒の「梅」(梅酒なし)を
食べてみたり(かなり美味しかったらしい)、やはり10年以上前のいただき物をジャムを食べたり。
食べ物を捨てるというのは抵抗があるけれど、腐ってはいないが、明らかに怪しい物体に
なっているものも食す著者には脱帽。
他にも、ちまちまといろんなものを消費してます。
持て余してるストック食材を使い切ると、達成感があるので、思わす共感した部分も。

次が家具。
本を置くために家具を買いまくり、貧乏症のため、貰えるものは全部頂いたり・・・
その結果、亡くなった家主のおばあさんの、ちゃぶ台、ドレッサー、古着、火鉢など、
大量のものを若い頃もらい、それがそのままあったり。
家賃と面積を考え、それらも破棄。

旅行で使っていた思い出が詰まった靴、愛用していた腰痛用のサポーターや、
便利だったウィンドブレーカーも処分。

物にまつわる思い出と、それと別れるほんのちょっとしたセンチな気分と、さっぱり感、
それらが繰り返され、そこから、作者の人となりや人生がかいま見えます。

放置していて、ボウフラ・イトミミズが湧いた風呂なんてエピソードもあったりしますが(^_^;)。
2ヶ月放置していた風呂に、腐臭がしないからと、水を入れ替えずに入るってすごい・・・。
夏場なんかだと2週間くらいで、ボウフラとかイトミミズ湧くんじゃないだろうか?
自分の家じゃないけど、イトミミズ見たいなのが湧いてる風呂を見たことがある・・・。
著者と同じでシャワーでずっと過ごしてて、風呂桶に水を入れっぱなしの結果でした。

第二章は、「飼い喰い」の番外編と、後日談。
著者が退去したあと、怪しいタイバーみたいなのに、なってて、それを訪問したりしてます。
これは「飼い食い」を読んでると、かなり楽しめる章。
読んでなくても、ゴミ屋敷状態の家をキレイにする大変さは伝わってくるし、
ここでも、虫が湧いてるエピソードがあって、おぞおぞできるので(トイレの描写もまたすごい)、
グロ系ホラーが好きな人にはいいかも(^^;)。

この本に収録されているエッセイ(?)を書いている途中で、東日本大震災があったよう。
その影響で、「トイレットペーパー」をやめて、「ジョウロで水洗い」に移行する話も。
風が吹けば桶屋が儲かる的な、原因と結果(^_^;)。

最期に処分に困ったのが、本!
わかる、わかる、わかりすぎるっ!
私も、一時物を捨てまくったし、本も大量に処分したけど・・・・それでも残ってる本。
そして、増殖を続ける本。

著者がどうしたのか、かなり興味津々で読みましたが、元々資料としての本が多い著者。
しかし、それだけではなく、著者の趣味の一つに「本の装丁」があり、
いつか使えると思った本の装丁の材料大量、海外に行った時、装丁が素敵だと、
全く読めないのに買った何語かすら不明な大量の本などもあるという。
そして、自分の大量の原稿も。

大量にある本、地道に処分もしたけど、なかなか減らない←わかる~。
結局、装丁の凝った本や、原画は、「投げ捨て展覧会」というのを開いて売ることに。

一部を除いて売れた古本や原画達。

著者はさぞかしすっきり!と思ったら、本だけは今までと違ったよう。
ぽっかりと心に穴が開いたような、虚無感。
この辺もすっごくわかる。

片付けのハウツー本では全く無いので、その辺を期待して買っちゃうとがっかりするはず。
どちらかというと、彼女の著作を何冊か読んでいて、彼女自身に興味がある人向け。
著者の生き様、考え方などがよく分かる本です。
ただ、普通の片付け本と違い、これを読んで「うおおおお、私も片付けたいっ!」とは
思えないのが、また不思議。
彼女独自のポリシーの元、片付けをしてるからかも(^^;)。

「英国一家日本を食べる」マイケル・ブース著: [本ノンフィクションいろいろ]

英国一家、日本を食べる(亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズ)

英国一家、日本を食べる(亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズ)

  • 作者: マイケル・ブース
  • 出版社/メーカー: 亜紀書房
  • 発売日: 2013/04/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

7.3点

イギリスのフードライターと、その家族による日本食べ歩き紀行。

著者はフードライターだけあって、食に関する造詣は深い。
テレビでも有名な服部幸應や、関西での料理学校のトップ辻芳樹との対談は(それぞれの
調理師専門学校見学の話もある)、日本食の歴史や今に関して考察していて、面白い。
あまりに身近で、自分が知らなかった「日本食」について知ることもできたりした。

でも、そう思える部分もあれば、単なる旅行記的な部分もあったり、
相撲部屋見学+ちゃんこ、ビストロSMAPの収録現場見学など、「日本を全く知らない
外国人の感想」という内容も。

食べ歩きの場所は、新宿のガード下、極上の天ぷら屋、北海道九州沖縄、大阪などで、
「食べ歩き+旅行記+食文化比較・考察+家族の話」などが、入り混じっているせいか、
紹介されている食べ物の数は思ったより多くは無かった。

もっと詳しく食について読みたかった・・・という物足りなさ(特に地方の食文化に関しては)が
あったけど、軽く読めるので、これぐらいが良かったのかと思ったり。

でも、日本の食文化について再考察できる部分もあり、なかなか楽しめた一冊。
2冊目も出ているので、その内読もうと思います♪←図書館に予約してるのでいつになるやら(^^;)。


「『老年症候群』の診察室」大蔵暢著:老人ホームの医者の体験談。老後を考えるためのすごく良い指南書! [本ノンフィクションいろいろ]

「老年症候群」の診察室 超高齢社会を生きる (朝日選書)

「老年症候群」の診察室 超高齢社会を生きる (朝日選書)

8点

老人ホームでチーム医療に取り組む著者による、歳をとると体が若い頃とどう変わるのか、
治療もどう変えていく必要があるのか、そういう視点で、高齢者の病気や、高齢者を悩ます
様々な症状などと、自分の行った対処について、わかりやすく語られている本。

最初の章は「虚弱高齢者」について。
この章を読むだけでも、歳をとることによる体の変化がよくわかる。

長い年月をかけて、体全体が衰えていく。
当たり前の事だけど、なかなかそれをしっかり認識できない。

古くなってあちこちにガタが来た自動車は、様々な部品が劣化し、故障したりする。
あそこを直しても、次が・・・とまた壊れ、最後には買い直した方がよくなってしまう。
元の状態には戻れない。
人間の体も同じで、20代~30代をピークに、全身が弱っていく。
内蔵移植などで部分的なパーツを交換できたとしても、他の部分への負担も大きいし、
全身を交換することは、もちろん不可能(「999」の機械の体でもあれば別だけど)。

もともと弱っている体に、様々病気、そして多くの薬、副作用、不快な症状やそれに伴うストレス、
体が弱ったことによる転倒などの事故、そして老いたことに対してのストレス・・・
いろいろな要因が絡まり、高齢者は「虚弱化」していくという。
それも、入院、怪我、近親者の死などの大きな要因があると、急激に虚弱化が進んだりするという。

「虚弱化」した高齢者には、いろいろなトラブルが起きる。
例えば、あちこち調子が悪くなり、いろいろな病院にかかる。
薬をいろいろもらう。
しかし、虚弱化した高齢者は、薬の副作用も出やすいという。
めまい、食欲不振、頭痛、倦怠感・・・・etc。
いくつもの薬を飲んでいると、それが病気由来の症状なのか、薬の副作用なのか、
医者ですら判断が難しくなるという。

それぞれの症状を治そうとして、いくつもの病院にかかった結果、医療による恩恵より、
弊害のほうが大きくなっている高齢者も、多いという。
また、複数の医者がそれぞれ自分の専門だけを担当しているため、
その高齢者を責任をもって総括してみている医者がいない・・という状態にもなっているという。

また85歳以上の高齢者の場合、一度失った日常生活機能を回復するのは、ほぼ不可能だという。
かなり虚弱化が進んだ80代~90代の母親に、もっとリハビリをさせてまた歩けるようになって
欲しいと望む子供。
でも、虚弱化が進み、残りの人生が短いと思える場合、「また歩けるように頑張りましょう」と
心地良い言葉を盾に、無理にリハビリをするより、残り少ない余命をいかに幸せに過ごせるかを、
考えた方がよいと著者は考える。

20代では、ほとんど差が無い健康状態。
40代になると、持病を抱えていたり、若干の差がではじめる。
この年代くらいから、運動不足とか、栄養の偏りとか、それまでは、放置してても大丈夫
だった体に悪い事の影響が顕著に出始める気がする。
そして高齢者になると、同じ年代でも、元気で庭仕事ができる人がいるかと思えば、
ベッドから自力で起き上がれない人もいる。
加齢により、健康状態は多様化する、だからその人に合わせた治療が大切だと著者は、
本書の中で何度も繰り返している。

病気など医学的な側面だけでなく、脳の機能(認知症等)、精神面(うつ症状←老人性鬱病は、
かなり多いらしい)、日常生活自立度、転倒などの危険度、居住状態、家族や家計など、
高齢者の置かれた立場を包括的に見る「包括的高齢者評価」が大切だと著者はいう。

著者は、老人ホームに入居してきた高齢者の、パーソナルヒストリーを傾聴し、
介護士、看護師、リハビリ療法士など、その高齢者を担当する、様々な立場のスタッフを集め、
定期的にミーティングをしているという。

また、後半の章で触れられているけど、高齢者の入院リスクについて触れられている。
著者の担当している老人ホームは、かなりの医療設備が整っている。
それでも、ちゃんとした病院に入院したほうが、経過観察もより細かく行って貰えるし、
しっかり治療もしてもらえる。
しかし、入院によりせん妄がおき、それによる事故、虚弱化や認知症が一挙に進むリスクも、
かなりあるという。
治療するための入院が、急激に高齢者の状態を悪化させる、入院前は歩けていたのに、
寝たきりになったり、認知症が発症する
ホームや在宅で治療するリスクと、入院するリスク・・・高齢者には、様々なリスクがつきまとう。

また虚弱高齢者は、入院などで筋力などが衰えると、入院前の状態まで回復させることは
困難であり、入院のたびに、体が衰えていく可能性があることなどについても書かれている。

医者も加わった「包括的高齢者評価」の元、ケアをして貰えるというのは、かなり恵まれた
状況だと思う。
本来、すべての高齢者がこういうケアを受けられることが望ましいんだろうけど、
現状ではコスト面で難しい気がする。
著者が担当している老人ホームを調べたけど、入居に2000万、それプラス月30万ほどかかる。
私が知っている、近隣の老人ホームで、これくらいのケアをして貰えそうだと思うところも、
ほぼ同じ料金だった。

逆に言えば、サービスは無料ではないので、安価にこのようなサービスを提供しようとすると、
今でも赤字で問題になっている公的な介護費は、数倍に跳ね上がるだろう。
もしくは、安い給料で人を働かせる状態に拍車がかかるか。

実際、上記の料金にプラス、公的な介護費用が1人に付き月10万~50万ほど、
その高齢者の病気によって、医療保険もかなりの額が使われているのを考えると、
一人のケアに膨大な金額がかかっているとも言える。

お金が全てでは無いけれど、お金があれば、高齢になった時の問題の対処に関して、
かなり充実させることはできるんだなーという、厳しい現実も見える(^^;)。

第二章は本のタイトルにもなっている「老年症候群」について。
加齢による身体の衰えにより、様々な体の不調がでてくることを書いている。

例えば、入院した高齢者が起こしやすい「せん妄」。
これは、入院などで精神的混乱が起き、行動がおかしくなったり、
現状をしっかり把握できなくなること。
若い人ではめったに起きないが、高齢者ではよく起きるという。
それは「脳が衰えている」からだ。
実際、義父が簡単な手術で数日間の入院をした時、麻酔から覚めて、翌日くらいまで、
実の娘のことがわからなくなったり、入院したことがわからなかったり、トンチンカンなことを
言ったりせん妄に陥った。
この本で、せん妄を起こすということは、認知症やパーキンソン病、目が見えにくい、
耳が遠いなど、体が老化している複合的な結果だと言っている。
入院した時、義父は体はとても丈夫で、内臓疾患もなし、しかし入院した翌年くらいには、
アルツハイマー初期の診断が出たので、やっぱり脳の衰えがあったんだなと、思ったりした。

認知症ケアに関する話で、入浴を拒否するようになった入居者を4ヶ月ぶりに入浴させる事に
成功した話が載っていた。
子供と違って、叱ったりできない。
無理にやろうとすると暴れたりする。
本書にも書いて有るけど、認知症ケアは定石が無く、気を長く持って、
試行錯誤を繰り返すしか無いんだと思った。

また、高齢者がかかりやすいのが「老年期ウツ」で、初期症状が認知症と似ているため、
専門医でもなかなか判断がつかず、投薬の効果で確認するしかなかったり、
認知症とうつを併発していたり・・と、診断も難しいし、これも認知症と同じように、
いろいろな弊害がある。

友人の祖母が老年期うつにかかった時の話を聞いたら、その行動はまるでアルツハイマーの
認知症患者のようでした。
その後、入院して回復したらしいので、本当にウツだったんだと思ったり(アルツハイマーは
回復はしないので)。

また高齢者になれば、転倒しやすくなり、これもまた老年症候群と書いてある。
転倒で骨折し、それが原因で寝たきりになる人は多い。
転倒→回復→しかし体が衰えているのでより転倒しやすくなる→転倒→もっと体が衰えて・・と、
転倒で体が衰えると、それが次の転倒につながり・・というケースはよくある。
アメリカには「転倒」の専門家がいるほど、高齢者医療では重視されている項目だそうだ。
また転倒の危険因子には、高齢者が飲んでいる様々な薬の副作用も入っているという。

また、認知症のある高齢者の場合、自分が転倒しやすいという認識が無いため、
短期間に転倒・骨折を繰り返し、あっという間に寝たきりに・・・というのも聞く。
著者も、認知症のある虚弱高齢者の転倒リスクへの介入に関しては、
今のところ絶望的だと述べています。

この辺、病院や施設でも悩みどころなようで、認知症があり動ける高齢者が勝手に動いてしまい、
転倒骨折し、家族から訴えられるというケースも多いよう。
病院などでは、それを防ぐため、そういう危険があると拘束するケースも多いし、
認知症でなくても、転倒の危険がある場合、ベッドから一歩足りとも降りることを
禁止するところも多いよう。
虚弱高齢者で、自分で動ける人の転倒を防ぐめには24時間目を離さないしか無いと思うので、
不可能と言えば不可能だし。

たくさんの薬をもらうことにより弊害についても、いろいろなケースで語られていて参考になる。
ある症状を抑えるための薬の副作用でめまいが起き、めまいを抑える薬で・・・・etc、
いろいろな副作用で全身状態がよくなく、不活発になり、より虚弱化が進行する・・、
1人の医者ではなく、それぞれの専門医にかかった場合、そういうことが起こりやすいという。

尿漏れなどを防ぐ薬には、神経系の動きを阻害する効果もあるという。
日々、部屋にこもりぼーっと過ごしていた高齢者の女性は、尿漏れを受け入れ、
紙パンツにすることにし、薬をやめた途端、ホームのレクリエーションに活発に参加し、
毎日を生き生きと過ごせるようになったという例なども載っている。

他にも最近何かと話題になる「胃ろう」、施設での看取り、悪い事(病気・近親者の死等)を
高齢者に告知すべきか、延命治療をして欲しいかなど、終末期の決定と家族とそれを
話し合うことの重要さなども述べられている。

骨の健康では「理想か現実か」という副題で、高齢者と薬の問題の難しさが語られている。
効果のある骨粗しょう症の薬。
現在はメインの薬は2種類ほどあるが、片方は飲む手順が煩雑で
(起床直後に、180ccの水と一緒に飲み、その後30分は横にならない)、
用法を守らないと胃を荒らしたりする←胃に穴が開いて命に関わったということもあるらしい。
もう一つはそういう手順は無いが、血栓を作りやすいという副作用がある上、
背骨の骨折には効果があるが、手首や大腿骨骨折に関しての良いデータは無いという。
認知症がある方には飲み方にいろいろ決まりがある前者の薬は勧められない。
また、車椅子での生活なら、手首や大腿骨の骨折の可能性が低いので、
後者の薬が合うが、骨粗しょう症の薬一つとっても、他の既往症や、高齢者の状態、
生活環境に関しても考慮しなければいけない等が、よくわかる説明になっている。

またある臨床研究データを比較し、骨粗しょう症の薬を飲んだ100人と、
飲まなかった100人、飲んだ100人の内、その後の3年間で圧迫骨折をしたのは、
飲んだ人12人、飲まなかった人19人。
7人の差のリスク軽減を、薬を服用するリスクと天秤にかけ、どう捉えるかという問いかけもされている。

またあるコレステロールの薬は、心臓発作や脳卒中のリスクを下げるのに5~6年、
骨粗しょう症のある薬は、骨折リスクを下げるのに4.2年かかるというデータを取り上げ、
余命が限られた高齢者に、そのような薬を処方することへの疑問も提示している。

日本は薬が安いため、薬は安易に処方され、飲む方もその効果を詳しく知らないまま
飲んでいるケースが多いという問題点も指摘されています。

また血栓予防のワーファリンという薬に関しては、その薬の血中濃度を一定にする必要性から、
食べ物の制限が厳しく(納豆・青菜などビタミンKを多く含む食材や飲酒などが禁止)、
毎月の血液検査が必要(1人で受診できなければ、毎月家族の付き添いが必要-介護保険では
病院の付き添いは実費になることも多いので付き添いがいなければ、タクシー代、
付き添い代なの家計への負担も大きい)、他の薬との飲み合わせ問題が多いなどの、
いろいろな制約があることと、出血性の副作用がある問題について書かれています。
心臓や、脳梗塞等の予防は、脳出血などのリスクを伴う。
そして、脳梗塞などのリスクが高い人ほど、虚弱高齢者が多く、副作用のリスクも高いという。
ある患者さんでは、脳血栓症を起こすリスクが1年間で2.5%、薬によって1.3%まで下げられるが、
そのぶん、出血性合併症リスクは1.9%になる。
このように、治療してもしなくても、どちらもリスクがあるというのが高齢者医療だと述べられている。

最後の方の章では「治療」か「癒し」かということで、体が衰弱している虚弱高齢者の場合、
老衰に向かっている過程を、「治療可能」と勘違いし、必死になって「治療」することにより、
高齢者の生活の質を軽視してしまっているのではないかという、高齢者医療の問題点についても
考察している。
老いていく事は止められない、治せない、そういう観点も必要で、より長く生きるではなく、
「より良く生きる」発想の転換が必要。

ということで、高齢になった時、体や精神はどう変わるのか。
その時に、どう向き合うべきなのか。
また介護する家族も、それを知っておくことで、親や近親者の老後に向き合えるとともに、
介護や医療との連携もしやすくなる、という意味で、親の介護や自分の老後を考えだす、
40歳を過ぎたら、是非欲しい一冊。
事例も多く、著者の考えは考えとしてその根拠などもしっかり語られている上、
押し付けがましさもあまりなく、自分で考える機会も与えてくれる良い本です(^^)。

「懐かしくて新しい昭和レトロ家電」増田健一著:家電の歴史と、昭和30年代家電コレクションを紹介! [本ノンフィクションいろいろ]

6.8点

昭和28年の発売当時は20万、高卒国家公務員の初任給が5400円だったので、
年収3年分だった「テレビ」。
今で言えば、数百万??
しかし、昭和33年ころには8万ほどに。
それでも高いけど、メーカー努力による値下げによって、どんどん普及したテレビ。

今は無くなってしまった「サンヨー」の出した、「噴流式」の洗濯機。
それまでの「撹拌式」に比べて、短時間に洗え、小型、その上半額ということで、爆発的に普及。
「サンヨー」の歴史を聞くと、必ず「洗濯機」の話が出てきて、細部まで聞いても
面白い(この本は、ちょっと触れているだけですが)。

手洗いは、非常に大変なので、安くて便利な洗濯機の登場は、主婦に大歓迎されただろうなーと
いうのは想像がつく(今、洗濯機がなかったら・・・と思うと、ぞっとする(^^;))。

その他、冷蔵庫、炊飯器、電子レンジ・・・など、今では無くてはならない家電製品の、
初期の姿や、値段、使い勝手などがいくつも紹介されていて、面白い本。
ただ、この内容が書かれているのは「第四章」。

他の章でも昭和30年代の家電を、カラー写真で紹介しているけど、
「かなり個性的で実験的な家電」、「ユニークな家電」中心。
それはそれで面白いんだけど、昭和30年代の家電はほとんど馴染みがなく、
そのせいか、あまり思い入れを持って読むことが出来なかったので、点数若干低め。
そういう、レトロで変な家電が好きな人なら、すごく楽しめる内容なんじゃないかと(^^)。

私は、「第四章」みたいな、家電の歴史的から、当時の生活がかいま見えるような、
内容がメインが良かった。

「鉱物見タテ図鑑」フジイキョウコ著:鉱物の美しさを、いろいろなものに見立てて遊んだ本♪ [本ノンフィクションいろいろ]

鉱物見タテ図鑑 鉱物アソビの博物学 (P-Vine Books)

鉱物見タテ図鑑 鉱物アソビの博物学 (P-Vine Books)

7点

美しい水晶の結晶、真っ青で丸い形が愛らしい「カバンシ石」、十字の形の「十字石」、
綿玉のような「オーケン石」。
鉱物には、自然にできたとは思えない、キレイだったり、可愛かったり、不思議だったりする
造形がいろいろある。

そういう鉱物を、ものに見立てて、遊んだ本。

淡い緑色をした「ぶどう石」の粒を、お皿に乗せてフォークを添えれば、まるで本当のぶどうのよう。
割れると必ずマッチ箱を潰したような形にキレイに割れる「方解石」。
それらをガラスの器に積みあげると、まるでゼリーのよう。
薄い山吹色のオレゴンオーパールをスプーンに乗せれば、まるで崩したゼリーをひとすくいしたみたい!

そんな感じで、鉱物をいろいろなものに見立てて撮った写真がいろいろ。
こんなに不思議な様相を示す鉱物がいろいろあるんだーと、写真を見ているだけでも楽しい(〃∇〃)。
写真に付いている補足には、詳しすぎない程度の鉱物の補足もあり、勉強にもなります♪

なかなか楽しめた一冊でした。

ただ、印刷のせいなのか、元の写真のせいなのか、写真自体がもうちょっとキレイだと・・と
思える写真も(^^;)。
新装版が出ているようだけど、その辺改善したのかな?

「スナックさいばらおんなのけものみち ガチ激闘編」西原理恵子著:女性週刊誌の投稿欄に西原理恵子がアドバイストしてるような本。 [本ノンフィクションいろいろ]

スナックさいばら おんなのけものみち  ガチ激闘篇 (単行本)

スナックさいばら おんなのけものみち ガチ激闘篇 (単行本)

6.8点

西原理恵子が「スナックのママ」的立場で、お客さんの話(読者の投稿)を聞き
アドバイスするというスタイルな「スナックさいばら おんなのけものみち」。

3冊出てて読んだのは「ガチ激闘編」。
他に「スナックさいばら おんなのけものみち 七転び八転び篇
スナックさいばら おんなのけものみち バックレ人生大炎上篇
が出ているよう。

第一章は「ベッドで聞いたちょっといい話」で、シモネタメインで、下世話すぎて苦手でした。

第二章は「女の戦場・お正月を笑い飛ばせ」で、旦那の実家で苦労する嫁の話、
第三章は「ああ、離婚。こうして地獄の沙汰から生還しました」。
世の中には大変な姑、旦那がいるのもわかるんだけど、あまりにもアドバイスが、
上から目線すぎて、ここまで全然共感できず。

しかし、その後「冷蔵庫の残り物上等!我が家のサイテー料理選手権」と
「あの日をずっと忘れない。家族から言われたとっておきの一言」の章は面白かった。

「現場からの声を、聞かせて下さい。なかなか言えない介護の本音」は、
かなり現実的なアドバイスが多い。

ただ、専業主婦をしてると介護保険でいろいろしてもらえず、憎い姑の介護させられるけど、
働いているなら大丈夫ってのは、ないなーと思った。
働いてて、仕事と介護の狭間で死にそうになってる人も多い。
時間にある程度余裕がある介護者が数人いて、手があるため、
一人一人の負担が小さくなってるケースも多いし。
手がかかる老人は、訪問ヘルパーとか、介護保険のいろいろを断固拒否、
施設入居ももちろん拒否!ってなったりするから、手がかかったりするものだし。
ただ、専業主婦していると、訪問ヘルパーなどを頼みにくいってのはあるかもしれない。
まぁ、基本は、介護者の割り切りと、被介護者の譲歩、当事者(とくに被介護者)の性格に、
よるところが大きい気がする。

最初は、下世話なネタ、毒舌ネタ、その後、ちょっと笑えるネタ、現実的なネタ、
そして、最後はいい話でまとめる・・・ってのは、構成的に西原理恵子らしいなーと思った。

最初の3つの章が、全然楽しめなかったので、評価低めだけど、後半は楽しめた。

「認知症明日へのヒント」読売新聞「認知症」取材班:高齢の女性の発症率80%以上、他人ごとでは無い認知症。診断を受けた時人はどういう道を歩むのか。 [本ノンフィクションいろいろ]

認知症 明日へのヒント - 800万人時代を共に生きる

認知症 明日へのヒント - 800万人時代を共に生きる

7.8点

高齢化に伴い、どんどん増えつつある認知症。
世界的も問題になっているが、高齢化が進む日本では、特にその問題は大きい。
80歳以上だと発症率は、4人に1人とか3人に1人とか言われていたけれど、
この本に載せられている研究結果だと、65歳~69歳では3%なのが、
85歳~89歳では41%、95歳以上では80%。
特に女性の場合、男性が高齢になっても発症率が60%前後なのに比べ、
年齢が上がるほど発症率は増え、80代後半には60%~70%、
90歳代には80%近くという数値になっている。

長寿高齢化に伴い、認知症は、他人事ではない、いつか自分もなる可能性が非常に
高い病気だということを、強く実感しなければ、いけない病気だとも思う。
というのも、自分が認知症だと決して認めず、周囲が進めても病院には行かず、
治療が遅れるケースが、すごく多いからだ。
最近増えている独居老人の場合、身内の協力が期待できず、かといって行政が強制的に
介入もできず、本人も危険な状態、その上近隣の人が困っているというケースも
増えてきてるようだし、これからはもっと増えるだろう。
治療が早ければ予後も良いことが多いし、完治しない病気だとしても、進行を遅らせることが
できる可能性も高い。

この本では、世界各国の認知症患者への取り組み、現在の認知症医療の現状、
若年性アルツハイマー病と診断された人たちのその後の生活、
認知症と診断された高齢者へのサポートなど、家族の気持ち・対応・・・etc、
「読売新聞認知症取材班」が著者になっているのが納得な、
いろいろな事例が載っていて、とても参考になる。

認知症と一口にいっても、症状も1人1人違うし、元々の性格の影響も大きい。
また周囲にどれだけサポートしてくれる人がいるかでも全く違う。
なので、数多い事例を知るということは、この後の指針を考えるためにも、参考になる。

若年性アルツハイマー病と診断された男の人は、それにより仕事を失ったあと、
ひきこもり状態になってしまうことが多いらしい。
そこからどうやって立ち直ったのか?

また認知症と診断された人々や、家族の思いなども語られている。

1人暮らしの認知症の高齢者を、どう周囲がサポートしているのか?
認知症を発症した後の、財産管理の問題は?
なども、語られている。

町ぐるみで、認知症の高齢者をサポートしたり、家族が周囲の商店などに協力を依頼して、
認知症になった家族が、今までとあまり変わらない生活を続けられるよう、努力しているケースもある。

また、テレビドラマ等で見かける、「周囲の状況がわからなくなった認知症患者」というのが、
いかに現実から乖離しているのか、その点の説明も多い。
認知症を発症したとしても、かなりそれが進んでいるとしても、感情など、多くの部分は
元のままである。
周囲からおかしいと思われる行動にも、ちゃんと理由があったりするし、人の言葉や態度に、
より敏感に傷ついたりもする。
かなり進んだ認知症の人と会話をしたとしても、認知症だと気が付かないことも多い。
何度か接していると、辻褄が合わないことを言ったりして、あれれ?と不思議に思う、
そんな感じ。
でも、感情などの制御などはききにくくなるので、周囲の対応が悪かったりすると、
ストレスが溜まる環境にいると、問題行動を次々に起こしたりもする。
そういう、認知症患者への理解の入り口にもなる本である。

事例集的なので、一つのことを深く掘り下げてはいないが、「自分もなる可能性が非常に高い認知症」
について、ざっくり知るにはいい本だと思う。
以前も書いたけど、子供が大人の助けを必要とするように、高齢者になった時もまた周囲の助けが
必要になる。
今は若くても、必ず老いは来る。
「迷惑をかけていないから、かけられたくない。自分1人で生きられる」という気持ちではなく、
多くの人が「自分もいつか周囲のお世話になる」、そういうことを認識していれば、
もっと優しい社会になるのではないかと思う。

「水俣病」原田正純著、「苦海浄土-わが水俣病」石牟礼道子著:「水俣病」認定までのルポと、水俣病を描いた文学 [本ノンフィクションいろいろ]

水俣病 (岩波新書 青版 B-113)

水俣病 (岩波新書 青版 B-113)

7.3点

新装版 苦海浄土 (講談社文庫)

新装版 苦海浄土 (講談社文庫)

  • 作者: 石牟礼 道子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/07/15
  • メディア: 文庫
8点

私が、小学生の頃には、すでに「四大公害病」は有名で、それもあってか、
公害病というのは、被害者は認定・救済されていると思っていた。
また「公害」という概念ができたのだから、四大公害病以外の、例えば「森永ヒ素ミルク中毒事件」
など、その後起きた産業による環境汚染や人的被害は、発覚後すぐ対策がとられたに違いない・・・と、
当時思い込んでいたし、今まで深く考える事もなかった。

でも、ふと書店で水俣病関係の書籍を手にとって、知ってるつもりだった「水俣病」について、
ほとんど知らなかったことに気が付き、2冊ほど読んだ。

読んでみて、「水俣病」と「原発被害」は、驚くほど似ている部分があるのに驚いた。

---------------------------------------------------------------------------------------------
「水俣病」の著者原田正純氏は、水俣病発生直後、その原因究明に取り組んだ熊本大学の
研究室に在籍し、原因特定から、被害者の認定まで、水俣病を研究者として見てきた方である。

水俣病が、日本窒素肥料株式会社(チッソ・日窒)の工場排水に含まれた
有機水銀が原因だということは、現在ではよく知られている。

しかし、当時「ハイカラ病」とも呼ばれた奇病の原因を究明するには、数年の月日を要した。

「日窒」の工場排水による水俣湾の汚染は、大正時代から始まっていたという。
漁獲量の激減と、工場排水の関連は、見た目には明らかで(工場排水口の周辺の海は、
ヘドロで汚染され、異臭が漂い、魚も貝も死に絶えていた)、
漁民達は、何度も工場に補償を訴えていた。
しかし、水俣市は、「日窒」ができて発展した企業城下町。
「日窒」は、殿様であった。
市民四万人以上の大半が「日窒」関係の仕事についており、市の税収の大半も「日窒」絡み。
それに対し、貧しい漁民は少数派。
そんな中、「日窒」に補償を求めるのは勇気がいる行動だったに違いないが、
それでも補償を求めているほどに、水俣湾の汚染はすすんでいたらしい。

そして、昭和28年、猫が狂い死ぬ、海鳥が死ぬ・・・などの後、漁村の人間にも、
手足がしびれ、フラつき、人によっては、奇声を発し、癲癇のような痙攣を起こし急死する
者まででた、奇病が流行りだす。
それが水俣病である。
最初は、伝染病、家族の遺伝的病気・・・・など、疑われたが、被害が広がるにつれ、
工業排水に目が向けられるように。

しかし、工業排水には、有機水銀だけでなく、鉛、マンガン、砒素、セレン、タリウム、銅、
酸化マグネシウム、酸化カリウムなどの有毒物質が含まれており(なんでもかんでも
流していたことを知って、かなりショックだった(-"-;A))、
原因物質を特定するだけでも、かなりの困難が伴ったという。

企業側は、その間、のらりくらりと責任を回避し、全く効果の無いフィルターを設置し・・、
水俣病が発生してからも、工業排水は、海に流され続けたという。

はっきりと証拠が突きつけられるまで、認めない企業と、なるべく関わりたくない政府、
責任がはっきりしてからも、誠意の感じられない形ばかりの対応をする企業や政府の態度は、
最近の原発事故でも、見られたことだ。
ついでに言えば、一般の心ない人々の、被害者への差別、偏見も、全く同じである。

この本では、研究者たちによる紆余曲折あった原因究明のための研究、
また当時のデータ、また折々の企業や政府の態度、病気の発生率、症状などが、
淡々と語られている。

それとともに、水俣病が発生した後に起きてしまった、新潟の第二水俣病を取り上げ、
二次的な発生を防げなかったことにたいする後悔や、研究者がやるべきだったことなども書かれている。

そして、最後は公害認定の難しさ。
昭和34年に、やっと原因が工業排水に含まれる有機水銀だとわかって、
公的には一段落したように見えた水俣病。
しかし、その後も、問題はいろいろあった。
発症時期が少し早い、症状が典型的な症例と少し外れている、(最初の頃は胎児の時、
水銀汚染を受けたことによる胎生の水俣病なども例外だった)・・・・などのことによって、
明らかに水俣病と思われる人が、認定されず苦しんでいる状況などにも触れられている。

公害病の、原因を特定することや、企業に補償を求めることの難しさ、
そして、一度起きてしまった環境汚染は、長い年月に渡って被害者を苦しめ続けることが、
伝わってくる本。

「水俣病」を知るための、基本の一冊。

---------------------------------------------------------------------------------------------

「苦海浄土」は、水俣病を発症した漁民たちの姿を描いた文学作品。

最初、ルポ・ノンフィクションものかと思って読んだんだけど、
ところどころにある、長い漁民たちの台詞というか1章分にもなるような独り語りが、
あまりにもキレイにまとまりすぎていたので、違和感を感じて、ちょっと調べてみたら、
水俣病をベースにした、作者の私小説形式の文学作品だった。

漁民たちの台詞は、作者が、彼らの思いを、きっとこう思っていただろうと、代弁したもの。
でも、漁民たちの生活や、水俣病の症例、工場や政府とのやりとり・・・など、
事実を元に書かれたことも多く、原田正純氏の「水俣病」ではあまり触れられていない、
人々の生活や環境の変化、苦悩する思い、置かれた立場などが、
伝わってくる内容で、こころに重く、切なく、響く本だった。

まず、言葉の選び方、構成・・・etc、文章が上手いです。
リアルに現実を描き出しているようで、どこか幻想的にも思える風景描写。
方言で書かれた人々の台詞の心地よさと、それだからこそ伝わってくる時代や場所感。

貧しくても、働けること、自分の食いぶちを自分で稼げることに誇りを持ち、
海での漁を心から楽しみ、海の恵みに感謝し、生きてきた漁民たちが、
突然の奇病「水俣病」に、自分が、そして家族が襲われ、落とされた奈落の深さ、悲しさ。

生き生きと描かれる昔の漁港の雰囲気と、工場排水に汚染され、寂れ果てた漁港の姿の、
愕然とするほどの落差。

当時の水俣市や水俣病患者の様子が、克明に描かれ、その分迫力を持って伝わって来ます。

周囲の冷たい目や差別されることの苦しみ、企業城下町である「水俣市」の人々が、
水俣病患者を敵視するようになる流れ、水俣病患者の周囲への遠慮(公害病認定を
ためらう人も多かったらしい)、水俣病になったことを恥じる気持ち、東京などから来る
マスコミ等知識人から垣間見える、漁民の昔ながらの生活、無知を蔑む視線、
水俣病の様々な症状、水俣病補償問題(これは「水俣病」の方が詳しい)・・・・。
水俣市の発展の歴史は、「日窒」の発展の歴史と連動しており、その流れも書かれている。

そういうことを、織り交ぜながらも、水俣病被害者、そしてその家族、1人1人に、
みな人生が、家族の事を心配する思いが、苦悩が、底の見えない悲しみがあることを、
単なる「数」の1つでは無いということを、胸の奥底に、グサリと突きつけてくる内容になってます。

とてもお勧めな一冊!

「かつて誰も調べなかった100の謎」堀井憲一郎著:「吉野家の牛丼の汁の量を154店舗調査」・・etc、よく調べました!の100調査! [本ノンフィクションいろいろ]

ホリイのずんずん調査 かつて誰も調べなかった100の謎

ホリイのずんずん調査 かつて誰も調べなかった100の謎

  • 作者: 堀井 憲一郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/08/06
  • メディア: 単行本
7.3点

気になった事なら、どんなに手間暇かけても調査!!
「週刊文春」で連載されていたコラム「ホリイのずんずん調査」から、100個をピックアップした本。

「いやー、本当に、よくぞここまで、調べました!!感服!」って内容盛りだくさん。

1997年に出された「この役立たず!―ホリイのずんずん調査」がすごく
好きだったので、十数年過ぎた今、2冊目が出たのは嬉しい♪

牛丼の汁ダクを「憎む」(大げさではなく本当に)著者は、最近吉野家の牛丼の汁が、
勝手に多く盛られていると、154店舗を実際食べ歩き、そのデータを持って吉野家に乗り込んだり、
銀座の寿司屋を何店舗か食べ歩いて、値段を調べたり、
うなぎの有名店に行って、提供時間を調べたり(うなぎは、すごく待つらしい)などの、
食べ物ネタ。
一週間、各局テレビアナウンサーの登場時間を調べたり(これが一番大変だったらしい)、
星一徹がちゃぶ台返しを1回もしていないこととか、日本で初めてテレビでVサインをしたのが、
星一徹なのを調べたりと、ビデオを駆使して調べたテレビネタ。

そうかと思うと、東海道五十三次を実際歩いてみたり、エスカレーターとエレベーターでは
どちらが早いのか、都内いくつかのポイントで調査したりの、アウトドア調査。

25人同時にアマゾンで本を買うと、どれだけ順位があがるか・・・ってネタは興味深かった。
日本人のほとんどができる「ラジオ体操」ネタや(「日本人かどうかを確認する踏み絵にも
なると書いてた)、小説を持ち込まれた時の各出版社の対応、
年賀状が届くスピード(郵便ネタでは、毎日毎日ポストの前に立って、
ポストに書かれている集配時間が正確かなんてのもあった)、
「日本人がみんな切手を集めてた頃-世代間の考えの違い」「ペヤングの法則」など、
ちょっと気になるなぁって小ネタなどもいろいろ。
落語とか、野球ネタも多かったけど、これは自分が興味が無いのでイマイチだったけど、
ネタの幅が広いので、かなり楽しんで読めました(〃∇〃)♪

ただ、コラムが、1995年~2011年までの抜粋なので、ちょっと古いネタも。
クリスマスがカップルのものになった時期」「バレンタイデーが広まった時期」などの調査は、
昔のだからこそで、面白かったけど♪

「おばあちゃんのオシャレ採集」堀川波著、「絶滅危惧種中年男性図鑑おやじがき」内澤旬子著:対極な2冊! [本ノンフィクションいろいろ]


おばあちゃんのオシャレ採集

おばあちゃんのオシャレ採集

  • 作者: 堀川 波
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2013/04/12
  • メディア: 単行本
7点

おやじがき―絶滅危惧種中年男性図鑑

おやじがき―絶滅危惧種中年男性図鑑

  • 作者: 内澤 旬子
  • 出版社/メーカー: にんげん出版
  • 発売日: 2008/11
  • メディア: 単行本
4.5点

どちらも「人間観察図鑑」だけど、著者の視線が対照的。

-----------------------------------------------------------------
「おばあちゃんのオシャレ採集」は、独特の雰囲気を持つ、おばあちゃん達の、
ファッションを、可愛いイラストで紹介した本。
「おばあちゃんファッション」への愛が溢れてます(*^.^*)♪

柄on柄、お出かけにはベルト、レトロな花がらのワンピース、あっぱっぱ、エプロン、妙に派手、
とても上品・・・この本に描かれているおばあさんたちのファッションは、
どれも「うん、わかるわかるっ!」って思えるものばかりで、楽しい♪

服だけでなく、髪型、帽子、そして、カート、杖などにも注目。

「おばあちゃんファッション」って、その人の人生が見えるし、
マイペースな潔さ、個性があって、たまに「いいなぁ」と思う事があるんだけど、
同じようにそう思う著者の気持ちがにじみ出ていて、読んでて心地いい♪

ちょっと背中が曲がったり、お腹がぽっこりしてたり、真剣に買い物メモを見つめてたり・・
そんな細かい部分まで、ちゃんと書いてあり、
あったかいおばあちゃんのイメージを満喫できる本です♪

------------------------------------------------------------------------------------------
「絶滅危惧種中年男性図鑑おやじがき」は、この辺にいるおじさんを、こっそりスケッチして、
コメントと一緒に載せたもの。

前書きに「こぎれいで健康身だしなみスッキリ気を使い・・・中略・・・って中年男子ばかりだったら、
息がつまりませんか?」という周囲に気を使わないおじさん応援コメントが書いてあったので、
中年のおじさんの持つ、「ゆるさ」を愛でる本かと思ったら、全然違ってた。

図鑑には、変なファッションのおじさん、変なことやってるおじさん、髪の毛が悲惨な状態になってる
おじさん・・・・・・・・・etcが、描いてあるけど、愛は全然感じません。

「こんな変なおじさんがいた。みっともない、笑える~」って見下したような視点が多い。
ただ、コメントでは、そういう直接的な言い方は避けられ、事実だけ報告し、中途半端。
建前と、実際に描かれている内容が、乖離してて、モヤモヤする。
元々、「こんな変なおじさんがいて、笑えた」って視点で集められたネタがメインなようなのに、
それを変に隠してるのが、偽善的に思えるというか。

結局、「おじさんが持つほのぼのした雰囲気が大切」ではなく、
「自分より下なおじさんがいるから安心できる」ってのが、著者にとっての本音なんだろうなーと、
著者が本音を変に隠そうとしてる印象が強く、イマイチ。

辛辣なら辛辣で、隠さなければ、まだスッキリしたかもしれないのに。

内澤旬子は「飼い喰い-三匹の豚とわたし」がとっても面白かったので、期待した分、がっかり感も強かった。

「ときめくカエル図鑑」文:高山ビッキ・写真:松橋利光・「森のふしぎな生きもの・変形菌ずかん」川上新一著 [本ノンフィクションいろいろ]

ときめくカエル図鑑 (Book for Discovery)

ときめくカエル図鑑 (Book for Discovery)

  • 作者: 高山ビッキ
  • 出版社/メーカー: 山と渓谷社
  • 発売日: 2013/06/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7.5点


森のふしぎな生きもの 変形菌ずかん

森のふしぎな生きもの 変形菌ずかん

  • 作者: 川上新一
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2013/06/07
  • メディア: 単行本
6点

--------------------------------------------------------------------------------

「ときめきカエル図鑑」は、世界や日本のいろいろなカエルを、カラー写真で紹介した本。

全ページカエル!
写真のカエルは、どれも(たまに違うのもいるけど)愛らしく、本当にときめいちゃう(〃∇〃)♪
ずんぐりしたツノガエル、目が黒く赤いアイラインが愛らしいボリビアネコメアマガエル、
緑色の体に赤と黒の水かき、その水かきでかなりの距離を滑空するというレインワードトビガエル、
ずんぐりむっくりの体が置物のカエルみたいに愛らしいチャコガエル、
自分の子供であるオタマジャクシの為に水路を掘るアフリカウシガエル(以前テレビで観たけど、
父親カエルの必死な姿に感動しました)、造形に失敗したような変な姿のマルメタピオカガエル、
お馴染み日本アマガエル・・・・・、他にも毒のあるカエル、木の葉に擬態するカエル、
カラフルなカエル、顔が潰れたカエル・・・・たくさんたくさん紹介されてます♪

とにかく写真がいいっ!!
解説の文章が、かなり無難にまとめられ過ぎてて、愛があまり伝わってこないのが残念だけど、
その分、カエルへの愛がたっくさんつまったような写真を見ているだけで、和みます♪

童話にもたくさん登場し、置物などにもなっている、身近なカエル。
実際のカエルもやっぱり可愛いのを実感(〃∇〃)♪

最近『カエルだって飼い主にとっては大事な家族。「こべる死んじゃった。」』という
記事を読んだ(観た?)ので、余計にそう思った。
ベニツノガエルの「こべる」可愛いんですよっ!

------------------------------------------------------------------------------------
「変形菌」って、「粘菌」のこと。
「森のふしぎな生きもの 変形菌ずかん」は、その変形菌を、たくさんの写真で紹介している本。

以前、「もやしもん」だったかで、「粘菌」に迷路を解かせてたし、本書でも、
イグノーベル賞をとった「粘菌と迷路」の話が載ってた。

「カビ」みたいなのに、集団が1つの個体のように動く・・・・植物と動物の間にあるようなイメージ。

で、ちょっと興味があったので、読んでみたんですが、あまりにも身近じゃなさすぎて、
全然、のめり込めず(^^;)。

著者は、愛情いっぱいに、変形菌について、いろんな種類を取り上げ、
特徴などを語ってくれるんだけど、それはテッチャンに、各鉄道会社の、
車両について、微妙な違いを愛情いっぱいに事細かに語られるような感じで、
興味が無い人に、興味を持たせる・・・って感じでは無かったんですよ(^^;)。

ということで、全然変形菌については、詳しくなれませんでした。
真面目に作られてて、悪い本じゃないんですけど、
ある程度強く「変形菌」について、興味がある人向けかな(^^;)。

--------------------------------------------------------------------------------

「軍艦島入門」黒沢永紀著:ただの炭鉱の島だっただけじゃない。日本で初めての鉄筋コンクリートマンション・・他にもいろいろな特徴が! [本ノンフィクションいろいろ]

軍艦島入門

軍艦島入門

7.8点

長崎県沖に浮かぶ端島。
かつて三菱の炭鉱があった島で、島に建てられた建物の姿が、島を軍艦のように見せているため
「軍艦島」と呼ばれるようになった島。
既に閉山となり、打ち捨てられて長い年月が経ったけど、最近ちょっと流行ってる(?)、
廃墟探索などで、再び注目されてる島でもある。

「炭鉱」があった島、「廃墟がすごい!」って言うのが、本を読む前に持ってた知識。
炭鉱の島ということで、当時住んでいた人は、過酷な労働や水不足などですごく大変
(どうも「硫黄島」のイメージと被ってるらしい(^^;))だったんじゃ無いかというイメージも。

この本では、軍艦島の歴史、住んでいた人達の生活、炭鉱、そして現在の姿まで、
豊富な写真とともに、詳しく紹介している。

詳細を知ると、イメージとは全然違う事も多く、すっごく面白かった♪

まず、島に建つ建物。
狭い島に所狭しと建てられたビル。
それがこの島を軍艦島と呼ばせているんだけど、この建物の中には、
日本で最初に建てられた、鉄筋コンクリート作りの7階建「アパート」があるという。
1916年(大正5年)に建てられたその建物は、日本の団地の走りだったという。
こんな島に、日本最初のRC造りのアパートが建てられていたとは\(◎o◎)/!

その上、現在の団地の無機質な建物の姿と違い、塩害を避けるなどの理由により、
外周に木製の材料が使われていて、西洋と日本の様式が交じり合った作りになっているという。
また時期をずらして、次々と建てられた為、いろいろな姿、様式の建物が高低差のある狭い土地に、
密集して建てられていること、それらの建物が後付で渡り廊下で連結されていることなどが、
同じ建物が並ぶ本土の団地とは、全く違う、不思議な趣ある風景を作り出しているという。

ちなみに、水がないこの島は、水不足も深刻。
日本で初めて、海底水道がひかれたのも、この島だという。

狭い島に、人工地盤を造り建物を次々に建てたこの島。
緑が少なく、耕作地になるところもなかった為、日本で最も早く、
屋上に畑や田んぼなども作られたらしい。
保育園も屋上に作られていたらしいし、島の北部を埋め立てられて作られた、
小中学校は7階建てで、当時日本最大規模だったとか←公営だったけど、運営費は大半が
三菱の補助だったらしい。

また、台風被害はものすごく、海の側に建っている建物では、高波を目の前でみることができたらしい。

この島の人口が一番多かった時期は5000人以上が住んでいて、人口密度は8万以上。
現在の東京23区の人口密度が1万3千人ほどらしいので、
どれだけ人口密度が高い島だったかが伺い知れる。
また、その狭い島の中に、食堂、食料品店、雑貨店、郵便局、銭湯、医者、そして遊郭まで、
その島で生活するための様々な施設も揃っていたらしい。

そして、昭和30年初期、三種の神器と言われたテレビ・冷蔵庫・洗濯機の家電の
普及が一番早く100%になったのも、この島だったという。
この島が100%な頃、日本全体での普及率は白黒テレビ7%、洗濯機20%、冷蔵庫3%弱だった
らしいので、いかに早かったかがわかる。
当時店で商売をしていた人の話によると、本土とは違い、高いものほどよく売れるという
ことだったので、炭鉱の給料は、高かったらしい。

他に、炭鉱の事も詳しく書いてある。
ここの炭鉱は、海底炭鉱で、島の下だけじゃなく、海の下の広域に炭鉱が広がっているのには驚いた。
海底の下を、どんどんどんどん掘るんだね~!

本書では、「軍艦島」ガイドツアーも、その特徴、メリット・デメリットをあげ、いくつか紹介している。
詳しく知れば知るほど、興味深い「軍艦島」。
行く前に、この本を読めば、何も知らずに訪問するよりも、何倍も興味深く見学できる気がする。
長崎は遠いけど、歴史ある軍艦島の建物群が崩壊してしまう前に、行ってみたいと、
強く思った。

「戦闘機」白石光著:戦闘機の歴史、構造、機能、武器、パイロット・・・いろいろ分かる本! [本ノンフィクションいろいろ]

戦闘機 (歴群図解マスター)

戦闘機 (歴群図解マスター)

7.5点

「ゼロ戦」「F-15」「トムキャット」「Mig」「メッサーシュミット」「Su・・・」、戦闘機にはいろいろ
あるけど、その分類とか、性能とかは、ごっちゃで全然わからない私。

でも、この本は、そういう人に、とってもわかりやすく「戦闘機」というものを教えてくれます♪

第一章のタイトルが「戦闘機とは?」だし(笑)。

その後の章は、以下のようになってます。

「戦闘機の種類」-翼の数による「単葉」「複葉」などの分類。
          プロペラで飛ぶ「レシプロ」と「ジェット」の発動機形式による分類。
          「単発」「双発」などの発動機数による分類・・・etc。
戦記ものなどを読んだ時、いまいち漠然としてた「単発」「双発」辺りのことがわかってよかった♪
また、「陸上戦闘機」「艦上戦闘機」に、求められる性能・機能の違いが、あるというのも知った
(考えれば、なるほどーと思ったりするんだけど、そこまで考えられるほど「戦闘機」について、
詳しくなかった)。
この章は「なるほどなるほど」と思いつつ読んだ。

「戦闘機発展史」
第一次世界大戦で、最初「偵察機」として使われた飛行機。
敵機と遭遇しても、お互いに挨拶して、そのまま別れたりしてたらしい。
しかし、その内に、石などを投げ合うようになり(まだのどか)、その後銃を持ち込むようになり、
そして、専用の銃器が備え付けられるようになり・・・・。
最初はのどかだったんだなーとしみじみしてしまった。
その後は、第二次世界大戦、ベトナム戦争、冷戦時代と、新技術の開発と、
戦闘機に求められるものの変化などの関係などが、わかりやすくまとめられた章。

「機能・機構」主翼形状の変化、尾翼・補助翼の変化、降着制動装置の変化、
むき出しだった操縦席がどう変わったか、エンジン、操縦機構、燃料、燃料タンク・・・
とにかく戦闘機の性能とその変化について、詳しく書いてある本。
この本の中でもっともボリュームがある。
「コックピット内の食事と衛生」なんてことにまで触れられてて面白かったけど、
飛行機の設計などに関する部分は、斜め読みしてしまった(^^;)。

「兵装」戦闘機の武器というと、マシンガンとミサイルのイメージ。
最初は、自分で持ち込んだ銃を打ってたと上にも書いたけど、
最初は銃の設置ですらいろいろ苦労したのがわかる。
そして、ミサイルに関しては、搭載するミサイルの種類や、誘導ミサイルなどについても、
いろいろ解説してあって、「戦闘機の武器」についてのイメージをつかみやすい章。

パイロットと空戦」戦闘機の性能のアップによって、パイロットに求められる資質も変わってくる。
最初は単独で戦っていたのが(無線などが発達していなかった為)、
その内編隊を組むようになったことなど、戦闘機の性能アップによる、戦い方の変化がわかる章。

「開発と運用」どういう点を重視して開発されたのか(時代や、その時の技術で向かう方向は違う)、
開発された戦闘機の運用方法、その他ステルス機などまで。

読み始めた時、「自分には詳しすぎるかも??」と思ったんだけど、一部そういう部分も
あったけど、全体的にわかりやすくまとめてあって、面白く読めたし、
漠然としていた「戦闘機」について、多少はイメージができるようになった♪

「戦闘機」入門書としても、中級編としても、いい本だと思います(^-^)ノ♪

「謎の独立国家ソマリランド」高野秀行著:3つのソマリア。民主主義国家「ソマリランド」海賊王国「プントランド」リアル北斗の拳「南部ソマリア」知らない世界を知るって面白い! [本ノンフィクションいろいろ]

謎の独立国家ソマリランド

謎の独立国家ソマリランド

8.3点

「ソマリア」というと、国家が存在せず弱肉強食「リアル北斗の拳の状態国」とか、
海賊が海外の船籍を襲っている「海賊の国」とか、最悪の治安の国というイメージがあるけど、
実際のソマリアは、上記したリアル北斗の拳「南部ソマリア」、
海賊の本拠地となっている「プントランド」、そしてもう一つ、ソマリアにあって、
平和で民主主義を維持している「ソマリランド」の3つに分かれている。
以前アグネスが、遺書を書いてまで行った「ソマリア」は、この平和な「ソマリランド」。
ちなみに映画「ブラックホークダウン」の舞台になったのは、「南部ソマリア」の首都「モガディシオ」。

この本はタイトルにある「ソマリランド」、副題にある「そして、海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア」
この3つの地域に行った、現地取材ルポが載っている。

一番メジャーだと思われる「戦国南部ソマリア」ではなく、平和な民主主義国家「ソマリランド」が
メインになっている理由は、この本を読むとよくわかる。

対外的にも全く承認されていない「ソマリランド」については、知っていたけど、
平和とか民主主義とか言われていても、対外的なモノ、もしくは一時的なモノじゃないかと、
本書でも著者が書いていた「自称国家」的な言葉がピッタリ当てはまるイメージで、
あまり興味を持っていなかった。

しかし、その思い込みが全く間違っていた事を、この本を読んで知りました!
「ソマリランド」だけじゃなく、「海賊国家プントランド」や「戦国南部ソマリア」についても、
イメージしていたものとは、ものすごく違ってて、目から鱗連続。
まだまだ自分が想像した事なんて、浅い浅い!!と思わされる内容満載!
今年読んで一番面白かったのは、この本かもっ(〃∇〃)!!

「リアル北斗の拳&海賊」のイメージが強い「ソマリア」に、平和な国があるとは信じられない、
そんな「ラピュタ」みたいな国があるのか?と疑問に思った著者が、「ソマリランド」を訪問した時の
ことが、最初の章では詳しく書かれている。

「ソマリアランド」に入る前に聞いた、隣のエチオピア人のソマリア人の評価は
「荒っぽくて、粗野で、嘘つき」。

でも、実際入国してみると、ソマリア人(ソマリランド人)達は、他のアフリカ諸国とは違い、
キビキビと働き、仕事もちゃんとやっている。
銃を持っている人間も見かけず、治安もいい。
驚きだったのは、ホテルのボーイから大統領補佐官の電話番号を教えてもらえ、
即会え、通訳の手配、その後のスケジュールなどをきめ細やかに決めて(半分押し付けだけど)貰え、
その通りに、テキパキとことが運んだ事。

ソマリランドは、自国の通貨をちゃんと持ち(印刷はイギリスでしてるらしい)、
自国の通貨を持つことがいかに大変かということも、本書で触れられている。
世界各地にある「自称国家」とは全く違う、自国の通貨を持ち、ちゃんと選挙も
行われている、そして治安もいい、ちゃんとした「国」なんだそう。
ただ、治安の良さを維持しているのが、国家ではない・・というのもすごい。

ソマリアで起きる戦闘のほとんどは、部族争い。
著者によると、ソマリアというのは、他の民族が少なく、言葉もほぼ共通な「ソマリア人」が
大多数を占めるアフリカでは珍しい地域だそう。
なので、部族争いというのは、同じ民族が戦う、日本で言えば、昔、
「平氏」と「源氏」に分かれて戦ったようなものだという。
本書では「部族」ではなく、「氏族」と表現されている。
他氏族同士が闘い、どこかが勝利を収めると、今度は同氏族内で派閥争いが起きる・・ということを、
ソマリア(ソマリランドも例外ではなく)は繰り返しているという。
そして、その氏族が分家の分家の分分分分分分分分分家まで分かれている為、
かなり複雑で難しい・・・ということで、この本では、わかりやすくするため、
日本の「源氏」「平氏」「北条氏」「藤原氏」などの名前を、分家の名前につけてわかりやすくしてくれている。
で、実際、そうして貰ったおかげで、非常にわかりやすかった。

ソマリランドの中心になっている「イサック氏」だけでも、ハバル・アワル分家、サアド・ムセ分家・・
・・・・・etcetcと、恐ろしく細かく分かれているが、「イサック藤原氏系」とか書いてあると把握しやすい。
プントランドの中心になっている氏族を「ダロット平氏」、ソマリアは「ハウィエ源氏」、
ハウィエ源氏の中でも分家同士でもめた2大勢力を「頼朝系アブガル」「義経系ハバル・ギディル」
など、ちょっとニヤっと思ってしまうような分類で、説明されている。

で、治安の問題に戻るが、ソマリランドの治安を維持しているのは、氏族のつながりだという。
必ずみな、どこかの氏族に属している為、掟破りのことをすれば、自分の氏族から糾弾されたり
するし、他の氏族に手を出せば、その他氏族全体から報復もされるという。
その辺が治安を維持する要になっているらしい。
ただ、逆に言うと、氏族に属していない、もしくは、弱い氏族に属しているということは、
恐ろしいほど立場が弱い、何をされてもやり返せない、弱肉強食的な面は、3地域残っているという。

氏族間のやりとりはかなり明確で、相手の氏族1人殺せば、ラクダ30頭分(だったかな?)、
もしくはそれに匹敵する賠償金を払うことで和解するという。

「ソマリランド」が、何度も内紛を繰り返し、しかし今の平和な状態に落ち着いたのも、
氏族の長老同士の話し合いによるものらしいが、その詳細は、かなり驚くべき事だった。
詳細は本書で。

また、何故「ソマリランド」が治安を回復し、南部「ソマリア」が回復できないかというと、
「ソマリランド」は、貧しい土地で、遊牧民が中心で戦闘が多く、戦闘をやめるノウハウを
持っていたのに比べ、土地が豊かで農耕民族中心、戦闘が少なかった南部ソマリアは、
戦闘をやめるノウハウが無かったのではないかと、「ソマリランド」に住む人々は言っているという。
そういえば、日本も、第二次世界大戦の時、終戦の仕方が下手だった・・と言われてるなーと
いうのを思い出した。
戦争中のルールも、戦闘の多い地域ほど、ルールが多く(女・子供・老人・捕虜を殺さない等)、
それが厳密に守られていて、ソマリランド地域では守られていたけれど、
南部では、それが守られていなかったという。

面白かったのは、ちゃんとした体裁を整えているのに国家として全く認められていない
(ここを認めてしまうと、アフリカなどの民族独立運動を刺激しかねない為)
「ソマリランド」が治安を維持し、選挙もちゃんと行われている背景は、国家として認められて
いないため、外国からの援助も少なく汚職・腐敗などが少ないこと(大臣クラスでも
給料は非常に低い)、資源なども無く、外国からの介入が無いことなども、
要因の1つではないかとの推測。
それはあると思う。
外国からの援助、企業の介入・・・・が、国をダメにしているケースは多いし
(ルワンダの虐殺も、日本も含め外国からの資金援助によって軍備を拡張し、
勢力を拡大した政府によって行われている)、南部ソマリアが、ここまで戦国時代なのも、
過去のアメリカなどによる軍事介入も要因の1つらしい。

「平和で民主主義の国」と聞いただけでは、面白みを感じない「ソマリランド」だけど、
内情を知れば、西洋民主主義とは、かなり違う「民主主義」であり、
それ以外にも、遊牧民の超個人主義的気質のソマリア人が持つ価値観、
考え方は、行動は、新鮮ですごく面白かった。
でも、平和でも、親しくしていても、隙をみせればすぐつけこんでくる(領収書を切らないで
お金を渡したりすれば、貰ってないと大騒ぎする等)、そういう部分は、
著者が取材中辟易していたのも理解できる。

「ソマリランド」の話だけでも、民主主義とは、国家とは、価値観とは・・と、それだけ読んでも
非常に面白い内容、

第5章では「海賊国家プントランド」について語られており、銃を持った護衛に守られての取材
ではあったが、どちらかというと、「銃を持った護衛に監禁され、お金をむしり取られている旅」と
著者は書いている。

海賊行為で潤っているらしく、街なかは、「ソマリランド」よりキレイで発展しているという。
海賊が個人経営なのとか、海賊が跋扈する背景、人質開放の仲介をする政府も、
身代金の一部を貰って潤っている・・・・etc、今まで漠然と「海賊国家」という
イメージしか無かった国の内情が、読むと見えてきて、これまた面白い内容!
これを読むと「海賊行為が無くならない」のもわかる。

そして、第6章はリアル北斗の拳「ソマリア」取材。
こちらは、本気で危険らしく、銃を持った兵士も、チンピラみたいだった「プントランド」とは違い、
制服もきっちりと着こなし管理された兵士。
街なかには、銃を肩にかけてウロウロしている人間が多数おり、あまりに多くて見慣れた後には、
銃の形の流行りのバックかと思えるほどだったという。
何故、そう思ったかというと、20年以上紛争が続いているはずの首都「モガディシオ」は、
廃墟ではなく、明らかに「都」であり、物も豊富、「ソマリランド」や「プントランド」では買えないような、
多種多様の品物、ファッション、日本でいえば、原宿とかのような感じなんだという。
しかし、銃を持った人はうろうろ、外国人はあっという間に拉致、戦闘も頻繁に起きる。
発展しており車も渋滞、その近くで銃撃戦など始まれば逃げられない・・・など、
発展しているからこその恐怖も語っている。

現在、南部ソマリアで勢力を伸ばしているのは、氏族ではなく、イスラム原理主義の「アル・シャバーブ」。
著者はケニアの難民キャンプも取材しているが、難民のほとんどが「アル・シャハーブ」を
恐れて(少しでも逆らえば殺され、子供を兵士に取られ・・・)、逃げてきているという。

危険危険危険、廃墟廃墟廃墟!!なんてイメージだった、「南部ソマリア」も、
全然イメージと違う場所(でも危険なのは確かで、戦闘も多い)だったのも、びっくり。

ドラム缶が置かれただけの、境界線(でも境界気がつかず下手に通ろうとすれば撃たれる)、
町中を走るのは、日本の中古車で(ソマリア全域に多い)、兵士を満載した「○○ようちえん」と
書かれたバスなんてシュールな光景も目にしたという。

ということで、ソマリアの3つの地域、それぞれが、想像を超えた場所だったのに驚愕!
とにかく、面白いし、新鮮だし、考えさせられる事も多く、読んで大満足だった一冊!!

上記したように、今年2013年No1の本は、この本な気がする!
お勧めお勧めお勧めです(^-^)ノ!!

「マンガの食卓」南信長著:「あの肉」「小池さんのラーメン」・・・マンガの食が盛りだくさんで楽しい! [本ノンフィクションいろいろ]

マンガの食卓

マンガの食卓

  • 作者: 南 信長
  • 出版社/メーカー: エヌティティ出版
  • 発売日: 2013/09/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7.8点

マンガで知り、それが実在するかしないかに関わらず、「食べたいっ!」と
思ったことがある人は、多いと思う。
一番有名なのは、「ギャートルズ」の「あの肉」でしょう。

マンガの中に登場する食べ物、料理を、食中心のマンガだけでなく、
小道具として「食」を生かしているマンガも含め、200点以上紹介した、「マンガの食」の集大成!

最初の章は「伝説の”トラウマ料理"がはなつ魅力」として、「ギャートルズ」の「あの肉」、
「男おいどん」の「タテだかヨコだかわからんステーキ」、「ど根性ガエルの「梅さんの寿司」、
「チビ太のおでん」、そして「包丁人味平」の「ブラックカレー」(麻薬入りで病みつき(笑))など、
心に刻まれた「マンガの料理」が、いろいろ紹介されている。

ただ「トラウマ料理」ってネーミングは無いと思う。
「心に強く残ってる」けど、「心の傷」ではない。
トラウマだったら、見るだけでも嫌、思い出したくもないし食べたくない・・・・って料理のイメージなので、
この言葉が文中に出てくるだけで違和感が・・・内容が面白かっただけに残念。
実は、著者とは感性が違うらしく、そういう違和感は、ちょこちょこ感じた。

単なる料理紹介だけではなく、「あの肉」の場合、それが商品化されたものや、
「あの肉」は「アニメ版」で登場したこと、「ギャートルズ」本編の紹介が、
「おいどんのステーキ」も当時の貧しかった時代の学生についての話、
「チビ太のおでん」の構成と、実際サークルKサンクスで発売された「チビ太のおでん」の構成など、
周辺についてもいろいろ紹介されていて読み応えがある。

その後の章も、
マンガに出てくる「美味しそう(と思える)料理」
・五十嵐大介「リトル・フォレスト」のバゲットサンド
・久住昌之×谷口ジロー「孤独のグルメ」の焼肉
・よしながふみ「愛がなくても喰ってゆけます。」の極上フレンチ
・山口晃「すずしろ日記」の金沢の寿司←山口晃がこんなエッセイを出してたなんて知らなかったので嬉しい♪
etc・・・・

「キャラクターの大好物」として「どら焼き」「ハンバーグ」「牛丼」「コロッケ」など有名処の中からは、
「小池さんのラーメン」をピックアップ。
それが生まれた背景や、トキワ荘のエピソードが。
他にも「はいからさんが通る」の「つくね」とか、「伊賀野カバ丸」の「焼きそば」とか、
うわっ、懐かしいっ!!ってのが。
「あしたのジョー」は、マンモス西のうどんが紹介されてます。

第二章では「食事シーンを描く作家、描かない作家」として、
食事シーンが多いちばてつやと、ほとんど無い手塚治虫の比較を筆頭に、
食事シーンや食の好みがキャラクターや、マンガの中の世界観に与える影響を、考察してます。
あだち充VS高橋留美子、浦沢直樹VS大友克洋・・・・etc。
諸星大二郎本人自体が、食に興味があまりなく、マンガの中でも、確かに食事が美味しく
なさそうな事や、ワンピースとドラゴンボールの対比で、ドラゴンボールが初期には、
食が美味しそうなシーンがあったのが、後半は「ドーピングと化している」なんてのが、面白かった。

「小道具としての料理」では、料理が中心ではないマンガでも、料理が小道具として
キャラクターやストーリーのマンガの奥深さを演出するのに、一役かっているマンガ、
深みを出すのに、料理を使うのが上手なマンガなどの紹介が。
・福本伸行「最強伝説黒沢」のアジフライ
・花沢健吾「ボーイズ・オン・ザ・ラン」のカップめん←こんなマンガも書いてたのか~!と思った
・渡辺ペコ「にこたま」のキムチ鍋←小道具としての使い方が上手い!が、恋愛物で、
好きそうな内容ではないのが残念(^^;)
・「グラゼニ」唐揚げチャーハン
・吉田秋生「海街Diary」のちくわカレー←途中で読むのをやめてたんだけど続きを読みたくなった
・米田達郎「リーチマン」のたらいうどん←主夫実録もの(?)。これも読んでみようかと
・荒川弘「銀の匙」の豚丼とピザ
etc・・・・。

「フェティシズムとしての食」や「貧者の食卓」の章も。
いしいひさいちの「バイトくん」の食卓は、切ないほど貧しいけど、学生時代を思い出す(^^;)。

最後の章は、「包丁人味平」「ミスター味っ子」などバトル料理マンガ列伝、
そして、「パン」の「焼きたてジャパン」、寿司の「将太の寿司」、中華の「中華一番!」、
最近では「ダシマスター」という、出汁をテーマにしたマンガまであるという、
細分化する料理バトルマンガの流れ。

そして、「トンデモ化」しているバトル漫画の筆頭として「鉄鍋のジャン!」(ちょろっとしか、
読んでないけど、読みたくなった)が紹介されている。
他に「トリコ」と「ヘルズキッチン」が紹介。

「料理人という仕事」をテーマとしてマンガとして、ブラックジャックをおおいに意識してる「ザ・シェフ」、
「大使閣下の料理人」「包丁無宿」「蒼汰の包丁」「バンビーノ」「美味しい関係」、
そしてあの「ドカコック」(リンク先感想)も。

「作るより食べる主人公」では、もう説明の必要はない「美味しんぼ」がもちろんトップに紹介。
他に「孤独のグルメ」、「孤独のグルメ」のB級グルメガイド版的な「駅前の歩き方」、
全国の駅弁を紹介している「駅弁ひとり旅」、「うなぎだけを食べるマンガ」「う」(ほんとにうなぎだけ
食べてた。これが終わった後「豚肉」を食べるマンガをラズウェル細木は連載中)など。

美味しくなさそうな食事マンガ「鬱ごはん」(リンク先感想、好き♪)が、紹介されてたのも嬉しい♪

実録物では神足裕司と西原理恵子の「恨ミシュラン」(出た時は衝撃だっし面白かった)、
「奇食ハンター」(ネタはいいけど、マンガはつまらない・・・)。

最後の章は、紹介文は短いけど、「クッキングパパ」「深夜食堂」「のんちゃんのり弁」
「おいピータン!!」・・・etc、とにかく、膨大な数の「食」に関するマンガが紹介されている。

「マンガの食卓」を読んで、思った以上に自分が読んでる「食マンガ」が多い事も実感したけど、
それ以上に「読んでない食マンガ」もたくさんあることを知った。

マンガの中の「食」の考察も面白いし、「懐かしい~!!!」って読むのも良し、
逆に「こんな食マンガがあったのか!!」と知るきっかけにもなるし、楽しんで読めました。

ただ、著者が美味しそうと紹介しているマンガの中には、全然そう思えないものも、多かった。
グラゼニの「唐揚げチャーハン」を主人公が食べてるシーンとか、
「極道めし」のおじさんがラーメンをすすっているシーンとか、
中年のおじさんが、汗たらしながら、ハフハフ、ずるずる、くちゃくちゃ・・・ってものを
食べてるシーンって、全然美味しそうに見えないんですよ・・・・・(-"-;A。
男性と女性の感覚の違いなのかな?
ある程度画面がキレイなじゃないと、美味しそうに思えない自分というのにも気が付きました。

花輪和一の「刑務所の中」は、著者は「のどか」と感じてるみたいだけど、
私には全くそう思えなかったし(^_^;)。

「食」って感覚・感性の部分が大きいから、その辺の差もあるだろうけど、
それでも、これだけ大量に「マンガの食」について集めた本なので、
必ず「自分の心に残ってる」「すごく美味しそうと思える」、
「マンガの食」と出会えそうな本です(〃∇〃)♪

マンガが好きで、食べることが好きな人にお勧め(^-^)ノ♪

「ヨーロッパの民族衣装-衣装ビジュアル資料」芳賀日向著:似ているようで違いもいろいろ!ヨーロッパの民族衣装をカラーで! [本ノンフィクションいろいろ]

ヨーロッパの民族衣装 (衣装ビジュアル資料)

ヨーロッパの民族衣装 (衣装ビジュアル資料)

7.5点

ヨーロッパ各国の民族衣装をカラー写真で、たっくさん紹介した本!

「衣装ビジュアル資料」と副題にあるように、衣装の解説は少ないけど、カラー写真は満載!
それも、一枚一枚特別にスタジオなどで撮ったものではなく、各国の民族衣装をつけて
催されるお祭りでの人々の姿を写したものばかりなので、各国のお祭りや、
そこから伺い知れる歴史にも触れることができます。

もう少し解説があった方がいいなーと思う反面、各国、それも同じ国でも地域や時代によって違う、
華やかな民族衣装の写真をたっくさん、たっくさん見るというのは、それだけでも楽しい♪

最初に「チェコ」の民族衣装が紹介されているんだけど、最初に「チェコ」が選ばれたのは見て納得!
手の込んだ刺繍、ボヘミアのレース・・・とにかく、キレイで可愛くてすごくステキ!
2番めに紹介されている「スロバキア」も、凝った刺繍などは似ているけど、刺繍の模様も違い、
赤や白がベースだった「チェコ」に比べ、紺がベースの衣装が多く少し地味。
以前は「チェコスロバキア」と同じ国だったけど、違いがかなりあります。
「チェコ」がオーストリアのハプスブルク家、「スロバキア」は、ハンガリーのハプスブルク家に
支配されていた影響、「スロバキア」がトルコやビザンチンなど、東洋的意匠が織り込まれている
かららしい。

ギリシャの中世のドレスなどの衣装と、イタリア中部のドレスに似ている部分があるのに気がついたり、
ベネチアのカーニバルのマスクのインパクトの大きさ、特異性を実感したり。
イギリスのドレスの歴史を見ると、中世チューダー朝、エリザベス女王の頃のドレスは、
「イギリスらしい」ものだけど、19世紀ヴィクトリア朝のドレスは、フランス・マリーアントワネットの
衣装とすごくよく似ている事、そしてドイツもその時期の貴族の服は、同じ傾向だったり、
各国間の影響が垣間見えたりもします。

スカートにブラウスにエプロン・・・・同じような組合せでも、刺繍も違えば、色も違う、
派手だったり、素朴だったり、地味だったり、メルヘンだったり。
国によって傾向があるけど、同じ国でも、テイストは様々。
被り物も、見たことがあるものから、こんな被り物があるんだっ!と思えるものまで。

とにかく、見ているだけで楽しい一冊です(〃∇〃)♪

「世界で一番恐ろしい食べ物」ニール・セッチフィールド著:「食べ物は文化!」とうい視点はいいっ!でも・・・ [本ノンフィクションいろいろ]

世界で一番恐ろしい食べ物

世界で一番恐ろしい食べ物

6点

「セミ・トカゲの串刺し」「タランチュラの炒めもの」「サソリ酒」「やぎの睾丸」・・・・etc。
キワモノ的な「食材」が、いろいろ紹介されている一冊。

著者が巻頭で書いている
「あなたの「オエッ!」は、誰かの「うまい!」。
「食べ物の美味しさが『きわめて主観的』であり、本書に掲載された食べ物の
写真へのリアクションを左右するのは、育った場所や環境である」
「偏見を捨て、「当たり前」を見なおして欲しい」
という主張(要約・省略してます)は、ものすごく共感!

ただ、読み物として、面白いかというと・・・・微妙。

「世界で一番恐ろしい食べ物は、世界で一番美味しい食べ物だった!」という帯に惹かれて読んだけど、
いろいろな気持ち悪い食材は紹介されているけど、その美味しさが伝わって来ない、
著者が食べていないものも多いのが、まず減点。
「ある地域で、こんな食材が食べられている」というのがわかるだけ。

もう一つ、写真ではいろいろな「食材」が紹介されているけど、「その食材を使った料理」の
紹介は少なめ。
例えば日本ではスーパーでよく見かける「ミル貝」「ホヤ」の紹介。
単に、その姿が「○○などの地域で食べられている・好まれている」なんて簡単な説明付きで、
カラー写真で紹介されてても、、あまり「食べる事」とは結びつかず、
「水の生き物百科事典」・・・・って感じになってしまっている。

動物の章では、顔部分だけそのまま残され、体は皮を向かれ解体されたうさぎ、
牛の胃袋・・・etcが載っているけど、やっぱり、「生き物解剖図鑑」や「生物図鑑」に近いというか・・・。
上記したように説明もすごく短く、「自分にとって気持ちの悪いものを食べる文化」というのと、
紹介されている「食材であるもの」が結びつかないものが多かった。

「オエッ!」って思うのは、その食材が、食べることを連想させる(「バッタがご飯の上に乗っている」とか)
シチュエーションが大事だと思うんだけど、この本は、それが非常に弱い。

ということで、著者の思う「世界ではこんなものが食べられている」という事実はわかるけど、
「食べること自体」はそれをあまり実感できない内容になってしまっている。
テレビなどで、「外国ではこんなものを食べるっ!」ってよくやってる食材が多かったし。

写真がスタイリッシュにキレイに撮られすぎてるのも敗因な気が。
「おどろおどろしい食材」を見て好奇心を満たす・・ってのも弱いし。

日本の食材だと、納豆とか白子なんかが外国人に嫌がられるというのは知ってても、
「海苔」を海を漂う汚物を食べるということで嫌がる西洋人が多いというのは、
あまり取り上げられてないから知らない人もいるか?

海外の食文化や、日本の食文化がどう受け取られているか、ほとんど知らない人なら
楽しめるかもしれない。
「キワモノ食」系は、いろいろ読んでる私からすると、かなり肩透かしな内容でした(^^;)。

「全国飲食チェーン・本店巡礼」BUBBLE-B著:チェーン店にも歴史あり。いくつか行ってみたいお店もあった♪ [本ノンフィクションいろいろ]

全国飲食チェーン本店巡礼 ~ルーツをめぐる旅~

全国飲食チェーン本店巡礼 ~ルーツをめぐる旅~

7点

「吉野家」「びっくりドンキー」「すき家」「餃子の王将」「バーミヤン」「フレッシュネスバーガー」・・etc、
馴染みのあるチェーン店の、本店・1号店・ルーツ店など、全国48店舗を自腹巡礼し、
そのチェーン店のルーツ・歴史と共に、ざっくりと紹介している本。

最初に紹介されている築地にある「吉野家」1号店は、「築地」という立地と、
「吉野家」のこだわり、そして「1号店」でしか味わえなさそうな要素がありとっても魅力的。

また、「びっくりドンキー」のルーツ店、岩手県の「ベル」は、ドアマンがいるファミレスとしても有名で、
ここも行ってみたいと思った店舗(というか、前から興味津々だったので、紹介されてて嬉しい)。

1号店や本店らしい「特別感」があるお店の紹介は面白かったけど、
「1号店に来たんだ~」という思い入れが無いと、「同チェーン店の他の店と変わらない」と
なってしまいそうなお店も多い。

また、思ったより近いところに「1号店」があってびっくりした店も。
すかいらーくグループ「バーミヤン」の1号店は町田市だし(きっと前を通ったことがある)、
「カツヤ」は、相模大野だし。
「えっ、家の近くにも1号店が??」なんて、嬉しい発見があるかも?

オールページカラーで、写真も豊富、巡礼したお店の雰囲気が伝わってくるのはいいけど、
お店の説明がもうちょっと詳しくて読み応えがあれば、もっと良かったのに。

紹介されているお店のほとんどが、良く知ったお店なので、チェーン店をよく利用する人は、
読めば楽しいです♪

「誰も知らない「無添加」のカラクリ」西島基弘著:国が安全だと言えば安全なのか?? [本ノンフィクションいろいろ]

誰も知らない「無添加」のカラクリ (青春新書INTELLIGENCE)

誰も知らない「無添加」のカラクリ (青春新書INTELLIGENCE)

  • 作者: 西島 基弘
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2013/05/02
  • メディア: 単行本
5点

食品添加物を嫌がる人、避けたい人は多いと思う。
理由は「体に悪そうだから」。

もちろん国内メーカーの食品は、国の安全基準を守っている。
でも、本当に、国の安全基準って大丈夫なの??

アスベストの規制の遅れとか、薬害エイズとか、昔の公害病とかの印象から、
国が信用できない・・・と思っている人も多いんじゃないかと。

で、この本、そういう不安に答えてくれてるかというと、全然違って、
東京都の健康安全研究センターに勤務していた著者の視点、
「国が安全だと言ってるのは絶対安全。何で消費者は無駄に不安がるんだ」
という視点で語られているため、多くの消費者の不安には、全く答えていない内容になってます(^^;)。

発がん性なんて、強い発がん性はともかく、何十年もの間、多くの人を追跡調査する必要があり、
「国が安全だと言っているから、全く発がん性の心配は無い」なんて結果を出せる人は誰もいないと思う。
もちろん、あまりにも添加物を不安がって、あれも食べられない、これも食べられない、
何でみんなこんな危ないの食べてるの、キーー!!とかストレスをためてる方が
体には悪いとは思うけど(^^;)。

もちろん参考になる話も、いろいろあったのも確か。

例えば「もやし」の袋によく書かれている「無漂白」。
もともと、「もやし」って漂白しないものだそう。
でも、「無漂白」って書いた方がイメージがいいから、そう書いてあるんだとか。
確かに「漂白してない」んだから、嘘は書いてないというのがメーカーの言い分らしい。

無添加」「保存料無添加」と表示されているものにも、本来何も添加されていないのが普通なのに、
敢えて「無添加」とか「保存料無添加」と書かれているものもあるそう。

保存料の代わりにもなり保存料として表示の義務が無い「日持ち向上剤」(グリシン等、
調味料としても使われる←現在はPh調整剤に変わっているらしい)を使って
「保存料無添加」を謳ったりというのも、よく行われているとか。

そうやって、メーカーがこぞって「合成着色料・保存料無添加」は安全・品質が良いと宣伝するので、
使っているのは「とても危険だ」というイメージを消費者に植え付けているとも書いている
(これはあると思う)。

最近では、保存料というのは、食品を長持ちさせる為、それだけではなく「食中毒」など
命にかかわる危険を避ける為のものでもあり、むやみに怖がるのも良くないというのも、
言われるようになってきたけど。
保存料の不使用が食品廃棄量を増やしている、そして食品のコストを上げていると
いうのも言われているし。

「天然のが安全」で「合成が危険」という思い込みについても、
天然の着色料「アカネ色素」に発ガン性が認められたり、
また合成の場合、使用料が少量で済むが、天然の場合、大量に使う必要がある、
(大量にとった場合の方が、影響が大きくでる可能性は高いんだろうな)、
そういう面を無視して、合成はダメだと頭から否定する事への疑問も書いている。

ただ、化学的に合成された「合成酢」と発酵で作られた「醸造酢」、
どちらも化学式は同じ酢酸で、醸造酢の方が不純物が多い為、口当たりがまろやかで味はいいが、
健康の為に「酢」を飲むのであれば、「合成酢」も「醸造酢」も同じ酢酸なんだから同じ!
という著者の考えはわかっても、食べ物ではないものから合成されたものへの拒否感というのは、
なかなか払拭するのは難しいと思う。

「虫」はタンパク質豊富な栄養価の高い食べ物だと言っても拒絶する人が多いように、
ちゃんと美味しく調理されても「ゴキブリ」や「ネズミ」などを食べるのを嫌がる人が多いように、
そういう生理的部分の拒否感を消すのは難しい。

著者が消費者は「安全」と「安心」を取り違えていると書いているが、
多くの消費者は食べるものに「安心」も欲しいのだ。
自分が「嫌」と思うものが含まれているものは、食べたくないんだと思う。

また着色料としては「リボフラビン」と呼ばれている食品添加物は、
サプリだとビタミンB2に、保存料として「トコフェロール」と表示される食品添加物は、
サプリだとビタミンEに、栄養強化剤の添加物「チアミン塩酸塩」は、ビタミンb1、
またペットボトル入りお茶に表示されているビタミンCは、酸化防止剤代わりに添加されているし、
「アスコルビン酸」という表記で食品添加物としても使用されているなど、
名前が変れば、ビタミンが食品添加物として利用されているという内容も。
この辺は知識として知っておくといいと思う。

この本で、「健康に気を使って食品添加物は避けている人が、サプリを飲んでいる人がいる」と
書いてあったけど、そういう人はそんなにいるのかな?
添加物はそれほど気にしてないけど、サプリは嫌って人は、知り合いに割りといるけど。
薬はあまり飲みたくない・・・って気持ちと同じなんだと思う。
確かに、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)は、通常の食事から摂っている場合は過剰摂取は起きないけど、
何種類ものサプリを飲んでいると、過剰摂取になり、その場合、足りないよりとても危険というのも
あるので、サプリに頼り過ぎるのは怖いのもわかるけど(私は、たまに鉄とカルシウムのサプリは
飲みます(^_^;)、自分の食事の栄養管理を数年やった時、どうしても不足しがちだったので)。

その他、「コラーゲン入りの化粧品は意味が無い」(肌からは吸収されない、コラーゲンを
食べるのも似たようなもので、消化されて分解されちゃうからね)。
「レタスに含まれている食物繊維はかなり少ないのにレタス○個分」となぜ表記されているのか。
健康食品やサプリで食物繊維を取り過ぎるとどんな危険があるか(通常の食べ物の摂取で
摂っている限りは普通平気)。
「特定保健用食品」は薬ではないので、効果は少なく、食生活を見なおさない限り大きな効果は無い。
「コレステロール0のマーガリン」を選ぶのは、摂取量が微々たるものなので無意味。
「上白糖は漂白されていて危険、三温糖は体にいいと信じているのは間違い」
(上白糖は結晶で白いだけだし、上白糖を何度も作った後の残りで焦げた色が三温糖の色、
ミネラルは多少入っているけど、普通の砂糖の摂取量だと影響が無いほど微量
←不純物が多いので味はまろやか)。
と、いろいろおもしろい話も載ってたけど、うーん、これは無理、強引過ぎという話も。

中国の工場を1つ・2つ見学しただけで、しっかり管理されてて素晴らしかったし、
日本の検査体制もしっかりしているので、中国産は安全と言い切ったり、
発がん性は、動物実験をしっかりしているから大丈夫。
動物は人間よりデリケートだから、動物実験して大丈夫なら大丈夫みたいな話があったり。
その辺が信じられないからこそ、みな不安なんだと思うんだよね。

後、最初にも書いたけど、生理的拒否感の問題。
食べ物だって、みんな化学式で書けるものでできてるし、天然物も、工場で合成されたものも
化学式が同じだから同じってのは、なかなか受け入れるのが難しい人が多いと思う。
食べ物ではない石油から作られたタール着色料を安全だからと受け入れるのは、
もし「うんこから作られた醤油だけど安全」のがあっても、嫌なように難しいかと。

そういうのを、「なぜこんな当たり前のことがわからないんだろう」って視点で書かれても、
説得力に欠けるというか。

天然物が安全という信仰・盲信も、胡散臭くて苦手なので、その辺で面白いことが書いてあるかなぁと
期待して読んで、まぁそういうことも書いてあったんだけど、全体的には強引にまとめ過ぎかなという印象。
もうちょっと語り口が違えば、印象も違った気がするんだけど。

「ゼロからトースターを作ってみた」トーマス・トウェイツ著:現代文明のすごさと、個人の無力さを実感! [本ノンフィクションいろいろ]

ゼロからトースターを作ってみた

ゼロからトースターを作ってみた

7.3点

その辺で売っている普通の安いトースター
それを、0から自分で作って見ることを、卒業研究にしようと決心したイギリス
ロイヤル・カレッジ・オブ・アート」の院生である著者。

単に、その辺にあるものを組み合わせて作ろうってレベルじゃない。
自分で材料を調達・加工・組み立てする、もっと詳しくいうと、「鉱石を採取し、精錬し、加工し・・」を、
本当に0からのレベルでの挑戦。

多くの先進国の鉱山というのは、掘り尽くされたとか、環境汚染とか、人件費とか、
コストや環境の問題で閉山しているところが多い。
まず該当する鉱石を自分で採取するというのが厳しい。

鉄は、閉山した鉱山には行ったが、爆薬を使ったり、時間もかかる採掘はあまりにも
難しかったため、管理人から鉄含有量の多い鉄鉱石を貰ってくる。
その後、鉄鉱石から、鉄の抽出。
16世紀の資料を元に、お手製溶鉱炉を作るが、できたのは、叩くと砕けるダメダメな鉄。

金属が語る日本史: 銭貨・日本刀・鉄炮」だったと思うんだけど、
刀鍛冶が鉄鉱石から鉄を抽出する作業のデータを事細かにとっていて、
その職人芸にびっくりした記憶がある。
昔ながらのカマドで、微妙なレンガの積み方、フイゴの風の送り方、燃料の状況などを
微調整しつつ、温度を管理し(温度計なんか無いのに)、鉄を抽出していた。
とても一朝一夕で得られる技術ではないと思ったし、刀用の製鉄は、日本独自の物なので、
同じものとは言えないとしても、古代、ヒッタイトが鉄の技術を隠していて、
それがヒッタイト滅亡まで広まらなかったというのもなんとなくわかるほど、温度管理は難しいのだと思う。

人類史の初期に使われていた銅などに比べ格段に難しいよう(銅は、単体でも結晶するし、抽出も楽)。
著者はどうしたかというと・・
あっと驚く「現代文明の利器」を利用して鉄を抽出」してました(^^;)。

そして、トースターの外枠に使うプラスチック。
鉄などの金属は、熟練さえすれば、大変でも、自力で作れるけど、
プラスチックだけは、絶対無理、これぞ「工業製品」というものなのが、読むとわかります。
「重油」を手に入れようとして、「重油」にどれだけ毒性があるか危険なのか説明されたり、
「タンカー1船分」なら受注できる(^^;)と言われたり、
まず材料の調達すら普通の人には絶対無理。
そして、加工の工程も、大規模な工場で何工程も何工程も経る必要があり、個人では絶対不可能。
ここでも、著者の試行錯誤が続きます。

最後にどんなトースターができたのかは、本書を読んでもらうとして(ある物がどうしても
用意できず、すごく危険な物体になっている(笑))、
古代文明の技術でも、未だ解明されていないものがあるように、
今、もし文明が失われた時、それをもう一度再現するというのが、いかに難しい事なのかを
実感できる本になってます。
今使われている技術の中にも、「偶然の産物」ってものがベースになっているものは多いし。

今私達の周囲に溢れているありふれたものの多くが、人類の進歩の歴史の集大成なのがわかります。
「社会」があるからこそ、自分の今の生活があるというのも。

学生であった著者の試みは、ある意味、無謀(その無謀さが若者らしくていい)、
そして勉強不足も感じるけど、逆にそれだからこそ、身近に、
自分の身に置き換えて考えられる内容なのが魅力(^^)。
準備のための研究を重ね、準備万端で行ったとしたら、かなり小難しい内容になってたと思うし。

気軽に読めて、面白くて、ためにもなる、興味深い本でした(^-^)ノ。

「カラスの教科書」松原始め著:身近なのに、あまり知らない「カラス」に親近感を少し持てる本♪ [本ノンフィクションいろいろ]

カラスの教科書

カラスの教科書


7.5点

動物行動学、それも「カラス」を研究している著者による、カラスに関する知識がいっぱい詰まった本。
そして、著者のカラスへの愛もいっぱい詰まってます♪
この本のように、研究対象への愛が感じられる本って好き♪
今までも、「寄生虫」「ダニ」そして「うんち」に対してまで、研究対象への愛が溢れた本を
いろいろ読んだけど、この本の対象は「カラス」。
著者は、「カラスなんてものを研究して・・・」って感じで書いてるけど、
まだ「マシ」なんじゃないかと思ってしまった(笑)。

日本では、遭遇率が非常に高いカラス。
でも、都市部にカラスが繁殖している国ってそれほど多くないらしい。
よく見かけるのは「ハシブトガラス」と「ハシボソカラス」。
2種類いるのは知ってたけど、この本では外観の違いだけじゃなく、
かなり違う2種類のカラスの習性についても語られていて、興味深い。

都市部に多いのは「ハシブトガラス」で、ゴミ袋を漁るのも「ハシブトガラス」。
このゴミ袋をあさる行為、ハシブトカラスにとってはすっごく自然な習性の延長にあるというのも、
面白かった。

カラスはペアになって縄張りを作る。
だから、群れているカラスというのは、ペアがまだ作れない若造だったりあぶれ者だったりするらしい。
群れがいる場所というのは、人通りが多かったり落ち着かなくて、巣作りに向かない場所、
どのカラスの縄張りにもなっていない場所なんだそうだ。

「ハシボソガラス」が抱卵すると、雄が餌を運ぶらしいけど、美味しい餌は、運ばず、
全部雄が食べちゃったり、逆に、それを雌が見つけてねだり倒して雄から貰ったり、
餌を隠す習性があるカラスが、お宝「アイスキャンディー」を埋めてしまった事が書いてあったり、
個性あふれる行動が、たくさん紹介されていて、ほのぼの♪

フィールドワークの大変さなどもわかるので、これから大学でそういう分野に進みたいなんて
人にも楽しめる内容。

実用的(?)なのでは、カラスが人を襲う理由(滅多に無いらしい)、カラスに襲われない為の、
ハウツーも載ってます。

賢くて、行動に愛嬌や個性があってどこか人間ぽいところもあるカラス。
読んでいると、すごくカラスが可愛く思えます♪

先日見た、「子供のカラスが、ヤマアラシの刺を抜いてもらいに人間のところに来た」という
動画の子ガラスなんて、むちゃくちゃ可愛かったし♪

ただ、カラスって近くで見ると怖いんですよね・・・・。
私の父が母と結婚する前、巣から落ちた雛を育てたカラスを飼っていたらしく(基本放し飼い
だったらしいけど、かなり慣れてたよう)、いくつか面白いエピソードをきいたので、
親近感はあるんだけど、いざ、近くで見ると、あの太いクチバシはやっぱり怖い(^^;)。

飾りっけの無い語り口で、面白おかしくカラスの事を語ってくれる本♪
近くにいるけど、遠かったカラスが、とても身近に思えると思います(^^)。
次にカラスを見かけたら、面白い行動をしてるんじゃないかと、少し観察しようかと
思ったり←利口だから、観察するのが難しいようですが。

ぶ厚いけど、字も大きく、読みやすいので、本の厚さに引かず、気軽に読んでみて(^-^)ノ。

「タイの田舎で嫁になる-野性的農村生活」森本薫子著:カルチャーギャップがすごい!でも、日本社会を省みる機会にも♪ [本ノンフィクションいろいろ]

タイの田舎で嫁になる―野性的農村生活 (JVCブックレット)

タイの田舎で嫁になる―野性的農村生活 (JVCブックレット)

  • 作者: 森本 薫子
  • 出版社/メーカー: めこん
  • 発売日: 2013/06
  • メディア: 単行本
7.5点

タイのイサーン(東北タイ)のムクダハン県の農村に嫁に行った日本人の著者。
タイ、それも田舎!農村!で暮らすということがどんな感じなのか、
そのカルチャーギャップにもめげず、それを受け入れ明るく語ってくれる著者の包容力も気持ちいい♪

日本でも、都市部に住む人が、農村などにお嫁に行けばかなりのカルチャーギャップがあるはず。
Iターンなどで田舎に移り住み、理想とは違う現実にぶつかり挫折する人も多いというし。
著者の場合、異国であるタイ、その上田舎の農村なので、とにかくそのギャップはすごい!

自然の中で暮らすということは、虫も多い。
日本でも虫を怖がってちゃ田舎暮らしはできないと思うけど、それ以上なようだ。
以前キャンプで自然を満喫して帰ってきた友人が、「将来田舎暮らしもいいなー」と言っていたので、
「こっちに比べて虫がすごいよ」と言ったら、即「無理だ」と諦めてた(笑)。
自分の田舎だと虫を怖がる人(特定の苦手な虫がいるとしても)は少ないが、
首都圏だと、男の人でも苦手って人が多くてびっくりだった。

食事は基本自給自足に近い。
自分で作った作物、育てた家畜、近くの池などで捕れた魚、その辺に生えている植物だけじゃなく、
著者の住む地域では、イモリ、蛙、虫なども普通に食するらしい。

飲水は雨水。
水浴びの水は、ためて置いたものが多く、ボウフラを食べてもらうのに魚が泳いでいたり、
濁っていたり。

自給自足で無駄の無い生活って憧れる部分もあるけど、食べたことがない食べ物への
抵抗感は年齢を経るにつれ大きくなっているので、もう既に自分は順応できない気がする・・・。
嫁に入って、最初は抵抗感があったり、美味しいと思えなかったものでも、受け入れ、
普通に食べている著者の順応力はすごいなーと素直に感心。

肉類は自分で育てた家畜を殺して食べる
屠殺すれば近所におすそ分け、逆に近所からもおすそ分けが貰え、
食べ物の分かち合いが日常的に行われてるので、お金が無くなっても
飢えることはないだろうと、著者は言っている。

また、食べ物は自給自足に近くても、ちゃんと家電製品などはひと通り揃っているとの事。

「人のものは自分のもの、自分のものは人のもの」、私的私有概念が曖昧な部分があり、
他人が、自分の家の物を勝手に食べたり、持って行ってしまったりすることも多いという。
その代わり、自分がそれをやっても文句は言われないが、著者は最初それにストレスを感じたよう。
その辺も「郷に入れば郷に従え」という感じで、考え方を変えて対応している。

他にイサーンの農業に関して(収入だけに目を奪われ、支出の計算をちゃんとしないので、
儲かってるかどうかわからないが、気にしていない)、子育て、老後などについても語られている。

冠婚葬祭、子育てや老後に関しては、親類縁者や共同体が全員で協力する。
だから老後の心配はいらない。
子育ても、日本のように「自分のやり方・こだわり」が通用しないが、
その分周囲の手助けがたくさんあり、気楽だともいう。
人間関係が密接な為、田舎のうわさ話・人間関係の煩わしさについても多少語っているが、
「人間関係の煩わしさと無償の助け合いはセット」と、なんでも長所と短所があり、
その辺が表裏一体なのも、著者はちゃんとわかって受け入れている。
好き嫌い関係なく、苦手だからといって逃げず、適度な距離を探して助け合う、それが大事だとも。

時間に関してはルーズ。
時間に追われおらず、時間を無駄にしてはいけないという概念が希薄な為、
何かあれば、誰でも手を止めて手助けしてくれるという。
以前読んだ「世界幸せ紀行」で、「ブータン」にも同じような概念があった。

細部は違えども、昔の日本の農村を思わせる情景も多かった。
でも、そこで暮らすには、かなりの寛容さが必要なのも実感できる。
また、学歴軽視(子供小学校で十分)の親も多い、子供の将来を子供自らが
選べないなどの問題点もある。

でも、このタイの農村の生活には、日本では得られない安心感があるという。
何かあったとしても周囲が助けてくれる、自分が死んだとしても、子供達は、
誰かがしっかり面倒を見てくれるだろうという、社会への信頼感。
老後もそう。

「ほどほどの近所付き合い」ではなく、「みっちりくっついた近所付き合い」から生まれる社会への信頼。
困った時、周囲のサポートがたくさんあるというのは、魅力的だけど、
人間関係も大変だし、助けて貰えるのは助かるが、その分の自分の労力だってすごい。
でも、そういう損得を計算してしまう時点で、ダメなんだろうなーとも思う。
損得計算をすれば、その場、その場で、不満もでやすい。
それが「当たり前」と感じられるのが大事なんじゃないかと。

現在日本では、他人のサポートはあまり期待できないので、国のサポートに期待してしまうが、
それも費用が肥大化し破綻しかかっている。
モデルとなっているスウェーデンなどの福祉も財政難でかなり大変なよう。
周囲のサポートも期待できない、国のサポートも期待できない、それが多くの人の、
不安につながっているのだろう。
でも、いろいろな知識を得て、「昔は当たり前」だった近所の互助が、
「当たり前」と思えなくなった今(宅急便ですら近所のを預からなくなったし)。
必要なのは「自立」、そして自分でどうしようも無くなった時は「諦め」しか無いのかも。
そして、運が良ければ家族がサポートしてくれると(^^;)。

サラっと明るくタイの嫁生活が書かれていて、気軽に読めるし、
でも、全然環境の違う「タイの田舎」にお嫁にいった著者の置かれた環境と、著者の考え方は、
今の日本の現状を改めて考える機会与えてくれる。
お勧め(^-^)ノ。

「すぐわかるヨーロッパの装飾文様―美と象徴の世界を旅する」鶴岡真弓著:日常的に目にする良く知った西洋風文様の意味がよくわかる! [本ノンフィクションいろいろ]

すぐわかるヨーロッパの装飾文様―美と象徴の世界を旅する

すぐわかるヨーロッパの装飾文様―美と象徴の世界を旅する


7.8点

「ぶどう」「シュロ」「蛇」「ユニコーン」「イルカ」「波模様(ストリギリス)」「組紐」
「エッグアンドダーツ」「ひねり紐」「渦巻(スパイラル)」「動物文様」・・・・西洋の絵画、
家具、建物・・・etcを彩る様々な文様。

洋食器の模様、装飾など、小物などにも頻繁に使われ、日常生活でもほとんどの人が、
毎日どこかで目にし、親しんでいるヨーロッパの紋章。
でも、「何かの花」「何かの実」「何かの葉」と漠然と思っていたり、「ユリ」「ぶどう」「ホタテ貝」など
何かはわかっても、何故それが使われはじめたのかの意味を知らないものも多いと思う。

様々なデザイン・種類がある「ヨーロッパの装飾文様」、それらの由来、意味、
歴史的背景、歴史的な変化などを、その発祥により時代別に、古代から近代まで、
オールカラーで解説した本。

最初の章「古代」(エジプトなど)だけでも、知らなかった発見がたくさんっ!
円の中心から放射状に花びらを配置した「ロゼット」が、紀元前の「アッシリア」で生まれたこと、
「葉をデザイン化したのかな?」「柱の上部分に装飾があるなー」なんてぼんやりと認識していた
文様、装飾が、「ナツメヤシの葉(パルメット)」のデザインだったり、
ロータス(睡蓮)」のデザイン化だったり、元を知ると「おおっ!」と思うものが多かった。
またそれらの装飾が好まれた理由や、デザインの元になった物がイメージするもの(豊穣等)
などが解説されていてとても面白かった。

ヨーロッパの食器の飾りや絵画で、「苺と似てるけど、違うようだしこれ何?」と
思っていたものが「マツカサ」なのもわかった。
「マツカサ」だろうなーって思う事もあったし、また海外の「アイテム探し」をすると、
「マツカサ」がよく出てくるのも不思議だったんだけど、ヨーロッパでは「マツカサ」が
「豊穣・生命力の凝縮」のイメージがあることなど、日本のイメージとは違う事も興味深い
(古代ローマ時代から使われていて、イタリア・カサマツの実が食糧に向いていた事も関係あるらしい)。

「単なる渦巻きの文様」と思っていたものの中には、ケルト文明の「生命感を反映した独特の
渦巻文様」があったりもする(近現代のデザインで復活し、見れば「おおっこれがっ!」と思うはず)。

他にも「単なる模様」と思っていたものにも、似ていても種類が違っていたり、ちゃんと名前がついていたり、
歴史的背景があったり、いろいろ知ることができたのも嬉しい♪

どこかで見たことがある、ある意味日常親しんでいる、様々な装飾文様。
漠然と「よく使われる装飾文様」と認識していたものが、その歴史的背景や意味を知ることによって、
それが使われている様々なものや、絵画を見る楽しみ、面白さが倍増するはず!
また、日本とは違う、ヨーロッパの世界観がわかるのもいい♪

興味深い内容満載、オールカラーなので装飾文様もわかりやすく、コンパクトにまとまっていて、
読みやすく(初心者向けです)、とても面白かった!
特に古代・中世から使われている装飾文様を知りたい人に、お勧め(^-^)ノ!!
(近代に近づくと、元々の情報が多い分、1~2Pの説明だとちょっと物足りないので)。

「巨大津波-その時ひとはどう動いたか」NHKスペシャル取材班:津波が来るまで1時間10分、その間人々は何故逃げなかったのか?? [本ノンフィクションいろいろ]

巨大津波――その時ひとはどう動いたか

巨大津波――その時ひとはどう動いたか

7.5点

宮城県名取市閖上地区。
3.11東日本大震災の時、津波到達が一番遅かった地域にも関わらず、多く被害者を出した。
津波による名取市の被害者のほとんどが、この閖上地区の方だという。
5000人ほどが住む地区で、700人以上の死者が出たという。

地震発生から、津波到達までの1時間10分間の間、人々が何をしていたのか、
何を考えていたのか、粒さな取材で、「何故人々は逃げなかったのか?」を問う本。

まず、1丁目~7丁目まである閖上地区の中で、住民の24%が津波により亡くなった
(他の地区は10~13%前後・・それでも多いのだが)2丁目の住民の方たちに取材をし、
震災直後の行動を聞いている。

2丁目は、3~6丁目よりも海から離れているのに被害者が多かったというのも特徴的である。
多くの人々は、揺れは大きかったが建物の崩壊などはなく、津波は来ないだろう、
来ても大きくないだろうと、家の片付けをしている最中に津波に飲み込まれたらしい。

専門家の話によると「人は避難したがらない動物」なんだそうだ。
日常生活で普段と違う事と出会うことは頻繁にあり、それに過敏に反応しすぎると、
生活に支障をきたしたりする。
そのため、異常な状態に直面した時、それを無視してしまう「正常性バイパス」という
メカニズムを持っているという。
しかし、真の緊急事態に直面し避難しなければいけない時にすら、
「たいしたことはない」と思いたがるこの機能が働き、避難しなかったりするという。

また多くの人が避難しないと、一人だけ大騒ぎしたり、率先して避難するのがはばかられたりも
するという。
危険を感じて避難した人の話の中には、平然と片付けをする人たちに、一緒に避難するよう声を
かけるのをためらったりしたという事や、声をかけても、危険性を感じてくれなかったという内容が出てくる。

以前、テレビで、知らない人10人ほどを会議室に集め、そこに煙が流れ込んで来たら?という
実験を行なっていた。
一人を除いては仕掛け人。
部屋に煙が充満し、危険な状態なのが明らかなのにも関わらず、他の人々が騒がないと、
被験者も同じように落ち着いて席に座り続ける人が多かった。
この心理はよくわかる。

人々が避難場所にしていたが、最後の大津波警報で告知された10mの津波
(最初の頃の予測は3mほど)には耐えられないと思われた公民館。
10mの津波の事を知った人間が、大声でもっと高台に逃げろと叫んでも、
そこに避難している人々の反応は鈍かったという。
叫んだ人、そしてそれを聞いた人の、その時の気持ちも取材で語られている。

また、親はこどもを心配する。
子供を心配した親たちは、子供がいる小学校や保育園などに向かう。
小学校が幸いにも高台にあったため、運良く助かった人々も多かったという。
小学校が低い場所にあれば、もっと被害は増えていただろう。
海に近い保育園は、園長先生が「怖がりだった」お陰で、「大きな地震の後は、津波が来る」という
想定の元、以前から避難の打ち合わせが行われており、迅速に園児たち全員の避難が
できたという。

「津波てんでんこ」という、津波が来たら自分のことだけを考えて逃げろ!という考え方がある。
確かに、家族を迎えに、探しに行った為に、津波にのまれた方も多い。
しかし、逆に、周囲の助けがあったからこそ助かった人も多い。
単純に「これがいい」と言えないのが、緊急事態の対応だ。

ただ、この本の中に書かれていたエピソードの一つは、とても複雑な気持ちになった。
近隣の独居老人を避難させようと、家に残ると言い張るその老人を30分以上説得し、
近所の夫婦も説得に加わり、やっと避難したが、すでに遅く、
説得した人の妻・説得に加わった近所のご夫婦、そして老人の5人が亡くなってしまったというケース。
最初に独居老人を説得した方だけが、津波にはのまれたが、運良く助かっている。
彼は、妻や近所の方を巻き込んでしまったことを後悔しているが、
もし、独居老人を見捨てても、やはり後悔しただろう・・と語っている。

閖上の場合、防災無線が震災と同時に壊れてしまった事も、被害を拡大させた一因らしい。
また、多くの方が、ワンセグでのテレビはもちろん、ラジオですら聴かなかったこと、
そういう行動をとってしまった要因についても書かれている。

緊急事態にどう対応すべきなのか・・・・は、その時々で違う。
そして、「避難したがらない、危険そうな状況でも、大丈夫だろうと思おうとする」という気持ちもわかる。
東日本大震災直後、その後どうなるかわからなかったけど、一度家に戻った後、
仕事のため、家からかなり離れたところまで車で出かけた自分。
大雨で前が見えないほどの時、見通しが悪い事の危険性や、道路が冠水したりしてる
可能性を考えつつも、車を走らせてしまう自分。
今までは、それで問題は無かったけど、それが命取りになるかもしれない・・と怖く思う。
でも、「危険→回避行動」がとれない・・・。

別の本で読んだ、別地区の話だが、津波で助かったある一家の話で、周囲になんて思われようと、
大きな地震が来た時は、必ず高台に逃げていたというエピソードがある。
その家庭のおばあさんが、昔、津波で家族全員を失ったため、それが家訓のようになっていたという。

被害がほとんど無かった、東京多摩地区に住んでいる方で、東日本大震災直後、
公民館のような集会所に、とにかく非難してかなり長い間そこにいた
(ほとんど人はいなかったと言ってた)という方もいる。
「万が一」の場合、このような行動が役に立つのだろう。

でも、やっぱり難しい・・・。
この本を読んで、緊急時の自分のとるべき行動、判断基準を、今一度考えなおしてみるのがいいと思う。

「重力とは何か-アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る」大栗博司著:わからないけど、わかりやすい(^^;)! [本ノンフィクションいろいろ]

8点

何でこれを読んだのか、きっかけを忘れたけど(何か別の本を読んで、それで曖昧だった事が
「わかりそうな気がした」からな気がする)、読んで正解O(≧▽≦)O!!の本でした。

タイトルにある「重力」についてだけでなく、物理の歴史、最新の研究について、
アインシュタイン相対性理論、ウラシマ効果、ブラックホール(ブラックホールの中、
ブラックホールが蒸発する「ホーキング放射」・・etc)、ホーキングの説、量子力学、
そして超弦理論まで、詳しいけど、わかりやすく解説してあり、とてもおもしろかったし、
新たなる知識もいっぱい!!

でも、恐ろしいほど難しい現代物理について(「物理学者の思考ってどうなってるのだろう??」と
この本を読んでて思ったし、一番の謎はそれかも←それぐらい想像できない事を思考してる)、
もちろん根本的にわかったわけではなく、ほとんどが「わかったつもり」になってるだけなんですが
(他の人に、この本で「わかったつもり」になった事を、整理して説明しようとすると、きっとワヤヤになる)、
それでも、大雑把なイメージだけはつかめます♪
この手の入門書を読んでも、なかなかイメージすらつかめない事を考えると、
例えなども多用され、かなりわかりやすい内容。
ブラックホールの表面に内部の情報が映し出されている??とか、
超弦理論が何故有力なのかとか、興味深い内容盛りだくさん!!

で、この本を読んであることに気がついた!!
私が量子力学に興味を持つきっかけになったのは、グレッグ・イーガンのSF万物理論」。
この作品の中で「物理的実在の根底にある論理=万物理論」と書かれ、
量子力学が関係してることはわかったけど、量子力学自体が当時完全に知らないものだったのもあり、
その後、量子力学の本を幾つか読んだ。
で、量子力学が理解できないものだというのを実感した(笑)。

そして、この本の中で何度も繰り返されている、
「一般相対論と量子力学を融合させた究極の統一理論」というのが、
イーガンの作中で言われていた「万物理論」の事なんだなーと認識。
何故、相対論と量子力学が融合することが大切なのか、融合すると何故究極の理論になるのか
などの説明も書いてあります。
そして、究極の理論に一番近いらしい「超弦理論」。
他の本でも読んだことがあるけど、この本が一番イメージしやすかった♪

重力、ブラックホール、量子力学、相対性理論などに興味がある人にお勧め(^-^)ノ。

「よくわかる元素図鑑」左巻健男著、「美しい鉱物」、写真がキレイな2冊! [本ノンフィクションいろいろ]

よくわかる元素図鑑

よくわかる元素図鑑

7.8点

美しい鉱物 (学研の図鑑)

美しい鉱物 (学研の図鑑)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 学研教育出版
  • 発売日: 2013/02/26
  • メディア: 単行本
7.3点

またまた元素・鉱物関係の本。
------------------------------------------------------------------------
「よくわかる元素図鑑」は、amazonなどで見ると表紙の印象が、
世界で一番美しい元素図鑑」(リンク先感想)に似ている。

原子番号30番の亜鉛辺りまでは、説明もわかりやすく、それなりに詳しく、楽しんで読めた。
ただ、多くの元素が、2ページで紹介され片方が写真、片方が文章なので、文章量はあまり多く無い。
その中でかいつまんで説明してあるので、「水素原子4個が融合してヘリウム原子が一つ作られます」
のように、「あれれれ陽子と中性子の数が合わない??」と一瞬悩んでしまうことも。
重水素とか三重水素が、中性子とか陽子を放出するなど、何段階が経て、
ヘリウム原子ができるのは、他で調べないとわからない←以前読んでたけど、忘れてたので、
調べ直した(^^;)。

で、この本、写真がすっごくキレイなのが印象的!
鉱物結晶の写真も多いし、一つの元素からできてる金属結晶の写真も多く、
それがとてもキレイ(〃∇〃)!
金属の結晶樹などは、見ていて、とても楽しい♪
「世界で一番」かどうかはわからないけど、「世界で一番美しい元素図鑑」と、
タイトルを入れ替えた方がしっくりきそうな感じが。

内容的には「世界で一番美しい元素図鑑」の方が面白かったけど、
こちらにしか書いていないことも多いので、両方読んでも楽しめると思う♪

---------------------------------------------------------
「美しい鉱物」は、いろいろな鉱物を、その特徴ごとに紹介した本。

「形が不思議な鉱物」では、メロンのような色合いの「ウォーターメロン」(リチア電気石-トルマリン)、
砂漠の薔薇、六面体の結晶が美しい「黄鉄鉱」、綿毛みたいな「中沸石」など、
自然にこんな鉱物ができるんだw(゚o゚)w!ってな鉱物が紹介されている。

「色彩が美しい鉱物」の章では、「蛍石」、色が変わる「アレキサンドライト」、
顔料に使われる「孔雀石」「藍銅鉱(アズライト)」「ラピスラズリ」などの紹介。

「レアメタルが採れる鉱物」の章は、「リチウムが採れる『ペタル石』『リチア輝石』」、
「バナジウムが採れる『カバシン石』(これキレイで欲しいっ)」「バリウムが採れる『重晶石』」など。

「宝石・貴金属になる鉱物」の章は、ダイヤモンドトパーズ、オパールなどの原石が。

最後の章は「鉱物早見図鑑」として、元素鉱物(自然金・自然銅・自然蒼鉛等)、
硫化鉱物(黄鉄鉱、辰砂、針ニッケル鉱等)、ハロゲン化鉱物(岩塩、蛍石等)、
酸化鉱物(コランダム、スピネル、金紅石等)、炭酸塩鉱物(菱苦土石(マグネサイト)、
菱マンガン鉱(ロードクロサイト)等)、リン酸塩鉱物(モナズ石、トルコ石、燐灰石等)、
砒酸塩鉱物(ミメット鉱、スコロド石等)、珪酸塩鉱物(オパール、石英、曹長石等)・・・・etcと、
それぞれ代表的な鉱物と写真が掲載されている。

この本も写真がキレイなのと、内容はかなりあっさりだけど、カラー写真満載で552円と安いので、
手元に置いてちょっと見るにはとてもいい♪
鉱物の超入門本として読むには楽しいと思う(^^)。

「心理学大図鑑」キャサリン・コーリン著:「心理学者大図鑑」という内容。たくさんの説が紹介され読み応え満点! [本ノンフィクションいろいろ]

心理学大図鑑

心理学大図鑑


7.5点

「心理学大図鑑」というので、療法とか用語集かと思って読んだら全然違ってて、
いろいろな心理学者の功績やその説について、紹介している本だった。

最初の章は「哲学的ルーツ」として、西暦190年頃のローマの哲学者であり自然学者であった
ガレノスの、人間の気質を多血質・粘液質・胆汁質・憂鬱質(黒胆汁質)に分けた四気質論や、
17世紀の哲学者デカルトの精神の身体の分離について示した「心身二元論」、
19世紀の哲学者キルケゴールの「真の自分自身を受け入れることこそ、絶望の対極」であるなど、
心理学につながる哲学の諸説が紹介されている。

「心理学」というのは、初期は哲学との境界が曖昧だったというか、
本書で説明されているように、「哲学」と「生理学」をつなぐ学問が「心理学」という見方も
できるって事に、何か目から鱗。
学問というか、科学として、何か胡散臭いイメージがあったのは、
この辺からきていたらしい。

他にこの章では「意識の定義付けの難しさ」を説いたウィリアム・ジェイムズ、
「記憶の維持の研究」をしたヘルマン・エビングハウスなども紹介されていて、
「心理学」というものが、哲学的な側面や生理学的側面を持っているということを、
強く再認識させられた。

2章は「行動主義」についての章で、生理学的な側面から心理学にアプローチした説について、
有名な「パブロフの犬」など、科学的に検証するのが不可能な内面の心的状態は放置し、
科学的に検証可能な外的刺激に対する反応を研究したものがメイン。

報酬があった反応は刻み込まれ、報酬がなかった行為は抹消される(動物実験)」という
エドワード・ソーンダイクの説、「環境にかかわりなく、訓練しだいで何にでもなりうる」
(人間もパブロフの犬のように、条件付けできるって感じ?)というジョン・B・ワトソンの説、
ポジティブな強化とネガティブな強化」などについて研究したB・F・スキナー、
動物の刷り込みに関して研究したコンラート・ローレンツなどが紹介されている。

3章は、「心理療法」で、有名なフロイトやユングなどが登場!
超自我とかアニマとか、高校生ぐらいの時は、ドキドキした記憶(笑)。
でも、心理療法は、後半でこの方法を批判した学者が言っているように、
治療者の主観の影響が大き過ぎて、後になると、胡散臭いイメージが強くなった。
自分の心理学が胡散臭いってイメージは、この辺から来てる感じが。

「~すべき」という気持ちを抑圧すべきだというカレン・ホーナイの説、
自分が認識しているものは客観的真実ではない、自分自身が「真実」を構築しているという
フィリッツ・パールズの説など。
心的健康のための気持ちの持ち方(自分を信頼する・自分に責任を持つ・現在の瞬間に生きる・
無条件にポジティブな眼差しで自分にも他者にも遇するetc)を説いたカール・ロジャーズの
「人間中心療法」や、「私たちは苦しむことなしで十全な人間になることはできない」
(苦しみも通常の人生の一部)というロロ・メイの説などは、仏教などの教えでも
聞きそうな内容だと思った(^^;)。

「合理的な信念が健全な情動的帰結を生み出す」(ネガティブな事が起きた時、それをどう
捉えるかで生き方が変わる、合理的に反応できるか、自分がダメになってしまうと信じこんで、
実際ダメにしてしまうか)というアルバート・エリスの説のように、思考パターンに関する説も多め。

「善人だけが憂鬱になる」という説を説いたドロシー・ロウのいう、「公正な世界への信念」
(善行は報われ、悪事は罰せられる、世界は公正で理にかなった場所であると思い込む
気持ちがあると、悪い事が起きた場合、自分の何が悪かったかと自責の念にとらわれる)と
いうのは、確かにあるなーと思ったり。

4章は「行動心理学」が無視していた「知覚」「意識」「記憶」に焦点をあてた「認知心理学」について。
これは、コンピューターの技術革新や人工知能の発達により、「脳を情報処理装置」とみなす
新しい考え方で、「行動心理学」の理論を覆しただけでなく、「心理療法」も非科学的とした。

認知心理学の章ではカルト教団などに入信した人が、信じる説(世界の破滅の日)などが
実現しなくても、何かしら自分自身を納得する説を探し出しその確信を変えない事などから
「確信をもった人がそれを変えるはまずない」と論じたレオン・フェスティンガーや、
「中断されなかった課題に比べ、途中で中断された課題は、記憶に残る可能性が増す」という
研究結果を発表したブルマ・ツァイガルニク、コップに半分入った水を「半分しかない」と感じるか、
「半分もはいっている」と感じるかなど、同じ状況を人がどう評価するか、人の気質に注目した
アーロン・ベック、エピソード記憶と意味記憶の2種類の記憶方法があると気がついたエンデル・
タルヴィング、「できごとと情動は一緒に記憶のうちに貯蔵される」(幸せな時は、幸せな記憶を
思い出しやすく、不幸な時は不幸な記憶を思い出しやすい)と、記憶と気分の関係を説いた
ゴードン・H・バウアー、人間の記憶の曖昧さ、歪められやすさについて研究し
「私達が心のそこから信じていることが必ずしも真実だとは限らない」としたエリザベス・ロフタス
(誤記憶を植え付けるという実験は興味深かった)など、面白い説が多かった。

第5章「社会心理学」では、社会組織の個人に対する影響に関する研究で、
有名なリチャード・グロスの実験などが紹介されている。
これは、普通の人々が、権威がありそうな人に命令されると、被験者が苦しんでいても、
電気ショックのレベルをどんどんあげてしまったという実験で、実験に関わった65%が、
最大値までレベルをあげたという、一般の人が、命令によって残虐なことを行うことを立証した
実験である。
また、ホラー映画の題材にもなっているフィリップ・ジンバルドーの「スタンフォード監獄実験」
(学生を、完全服従の囚人と、囚人を意のままにできる看守の立場に分けた事で、
起きた恐ろしい状況から、善人を悪事に走らせる社会や制度について言及)も紹介されている。

他にも、アメリカで、貧しい人たちが食べるものだと思われていた内臓肉を、
第二次世界大戦中の食糧危機対策の為、一般の主婦に食べてもらうよう
アプローチ方法を模索したクルト・レヴィンの研究(社会の常識が変化していく過程)、
集団の中でみなが間違った答えを選んだ時、被験者はどう回答するかという実験を行い、
社会的同調への衝動の強さを研究したソロモン・アッシュ、
「繰り返し見たものを好きになる、好みは理性的ではない」としたロバート・ザイアンス、
「悪い人には悪いことが起こり、善い人には良いことが起きる」という思い込み
(安定した秩序だった世界に住んでいると思いたがる)ことから起きる、
犠牲者批判(レイプ被害者が逆に非難されるなど)の構造を研究したメルヴィン・ラーナーなど、
社会的影響の怖さがわかる内容が多かった。

第6章「発達心理」では、ジャン・ピアジュの説を筆頭に、大人のミニチュアだと
思われていた子供が、実際は、ある段階を経て大人になっていくことの研究や、
教育方法などについての研究が述べられている。
教育論に関しては新しい説がでると、それに翻弄される・・という事が繰り返される上、
子供が望まなくても実験体になってしまう(詰め込み→ゆとり→詰め込み・・・学校教育指針の
変更なども)ケースも多く、ううむ・・・って部分も。
母親がいない子供は、成人すると犯罪をおかす率が高いとか。

第7章は「差異心理学」で「人格(パーソナリティ)」「個人差」などについての研究で、
「人格を恒常的で固定的にして不変のものとみなすどんな理論も間違っている」と、
人格形成への内的力(遺伝子型)と外的力(表現型)の影響を論じたゴードン・オルポート、
健常者を精神病院に入院させる実験を行い、「精神病院の中では、だれが健常で誰が
異常なのか見分けがつかない、精神病の診断は客観的ではない」としたデイヴィッド・ローゼンハン、
他に、多重人格の研究などに関する紹介も。

心理学者1人につき1~8Pほどのページを割き(多くは2p前後)、図なども取り入れ
わかりやすく説明してあるけど、元々1冊~数冊の本で発表される内容の要約だったりもするので、
具体例が足りなさすぎてピンと来なかったりすることもあるし、簡単に説明されすぎて、
自分がわかったようで、きっとわかってないなーって内容も多かった
(複雑なことをあまりに簡略化して説明されると、真実とは微妙にずれた説明になっちゃう事が
科学などではよくあるけど、それ)。
なので、ある程度心理学の知識がある人向けとも言える内容だったけど、
「心理学」という分野の発展を知ることは、人の心理研究がまだまだだってことや、
「悪い事をしたら罰を受けるべき」など、当たり前のことと思っていたことの心理的背景など、
すごく興味深い内容が詰まっていて、とても面白かった♪

心理学に興味がある人は、読んでみて下さい(^-^)ノ。
きっと新しい発見もあるはず♪

「世界で一番美しい元素図鑑」セオドア・グレイ著は、むちゃくちゃ面白い!「元素図鑑」中井泉著 [本ノンフィクションいろいろ]

世界で一番美しい元素図鑑

世界で一番美しい元素図鑑

8.3点

元素図鑑 (ベスト新書)

元素図鑑 (ベスト新書)

  • 作者: 中井 泉
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 2013/04/09
  • メディア: 新書
6.5点

元素の本、二冊。

----------------------------------------------------------
「世界で一番美しい元素図鑑」は、それぞれの元素を、特徴を捉えた簡単な説明と用途、
そしてその元素を使った様々な物や、元素鉱物などをカラー写真で紹介した本。

で、これが面白かったO(≧▽≦)O!
とにかく、ウイットに富んだ著者の主観入りまくりの説明がいい!

「アルカリ金属であるナトリウムは、水素を発生させ、水と激しく反応する。」
普通なら、そんな感じの説明なんだけど、この本では、
「仮に大きなナトリウムの塊を湖に投げ込んだら、数秒後に大爆発が起き、その際、
事前にどれだけ防護手段を講じるかが、スリリングで面白い経験になるか
人生おしまいになるかの分かれ目です」(一部略)と書いてある。
「スリリングで面白い」と著者は感じたんだろうなーというのが伝わってきて笑ってしまった。
このアルカリ金属と水の激しい反応、著者はかなり好きらしく、アルカリ金属で原子番号が一番大きい
フランシウム(Fr)の項目では、22分と短い半減期のせいで塊を作れず、
そのせいで、湖に投げ込めないことを残念がってます(笑)。

硫黄(S)の説明では、「硫黄は悪臭がします。どう贔屓目にみても答えは同じ。
粉末でも臭く、固体結晶でも臭く、燃やしたら・・・」と臭いことを強調。
フッ素(F)は、反応性が非常に高いことを「ほとんどすべてのものを無差別に攻撃する伝説的存在」と
説明されてたりします。
炭素(C)のところでは、「ダイヤモンドは特に希少なわけでも、際立って美しいわけでも、
永遠なわけでもありません。デビアス・ダイヤモンド社が作った神話で、それがなければ価格は
1/10程度」とちくり(いろんなヒーリング効果・健康作用に突っ込んでいる章も)。
ジルコンの章では、ダイヤモンドより、ジルコンの方がいいとまで書いてます。

科学的説明もちゃんとありますが、とにかく、「つかみはOK!」的な、わかりやすく面白い、
そして印象に残る説明がたくさんあって、各元素についての「イメージ」がすごく捉えやすいです。

また著者の主観に満ちたコメントも、いい味出してます。
「ニオブ」(Nb)では、その名前の由来、ギリシャ神話のニオベの話を取り上げ、
「ニオベはアルテミスとアポロンに子どもを全員殺されて、悲しみに暮れました」という文章に続けて
「私は、FBIに、ニオブ製の品物一点を押収されて悲しみに暮れてます」と、
悲哀に満ちた自分の体験が語られたり(eBayでゲットしたニオブ製品がとんでもないものだったらしい)。

金属の鋳造が大好きらしい著者は、鋳造がしやすいらしい錫(Sn)については、
「おお、スズ!なんと愛おしい元素でしょう。ほとんど無害。永遠に銀色に輝き、溶かしやすく、
細工の細かい鋳型で鋳造でき、値段もそんなに高くない」というべた褒めの文章で章が始まります。

塩素(Cl)では塩素ガス(敵も味方も同じくらい死者が出た)の兵器利用に触れ、
自分が塩素ガスを少量吸い、病院送り瀬戸際になった体験を、
「筆舌に尽くしがたい苦痛で、鼻にバーナーの炎を突っ込まれた感じがした。
塩素ガスで死ぬのは想像を絶する悲惨さに違いない」(要約)と書いてたり、
本人の、面白い体験談も満載。

また「ロジウム」(Rh)の章では、需要や投機筋の関係で、その価格の変動が大きかったことが書かれ、
レアアースなどの、経済的なエピソードも語られていて、その知識の幅の広さも感じます。

読んでて、これだけ笑えた元素図鑑は初めて。
その上、わかりやすく、ちゃんとためにもなる!
「世界で一番美しい」というより「世界で一番おもしろい」ってタイトルの方があってる気が。

ただ、説明文自体は短いので、本来なら説明されていてもおかしくない内容が、
省かれていたりもするし、詳しく説明されないとわかりにくい部分もあるので、
説明が詳しく読みやすい「元素 (図解雑学)」(リンク先感想)も合わせて読むと、
元素についての理解がすごく深まる気が。
元素について勉強したいなら「元素 (図解雑学)」と、この「世界で一番美しい元素図鑑」の
2冊を合わせて読むのが、現在のところの自分の一番のお勧め♪

写真が多いけど、お子さん向きではなく、高校生以上(中学生だと補足も少なく厳しいかも)、
大人向きの元素図鑑、というか、大人が読んでむちゃくちゃ楽しめる元素図鑑です(*^.^*)。
すっごくお勧め(^-^)ノ。
いやー、読んでて楽しかった~♪

-------------------------------------------------------------------------------
もう一冊の「元素図鑑」は、一つの元素について1Pの説明と、1Pのカラー写真で紹介した本
(元素番号が大きくなってくると、ほとんど解明されていないので、説明がもっと短くなりますが)。

その元素の特徴、用途、歴史的背景などが文章で紹介され、その元素鉱物や、
使われている物などがカラー写真で紹介されています。
前半、馴染みがある元素については、それなりに面白いんだけど、
後半になると、説明も「元素と周期表が7時間でわかる本」(リンク先感想)と同じように、
教科書的な一般的な内容ばかりになり、カラー写真での紹介も、同じような銀色に光った金属の
塊である、元素鉱物の写真が続き、敢えてカラー写真を使っているのが勿体ないと感じてしまうなど、
後半尻すぼみな感じが(「世界で一番美しい元素図鑑」では、本人が元素コレクターでもあるので、
後半、ネタが少なくても、頑張って、頑張って写真を載せてるのが、コメントでよくわかります)。

上記した「元素と周期表が7時間でわかる本」より、ちょっとだけわかりやすい本だったって感じでした。

「移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活」高野秀行著:日本での様々な外国人コミュニティを紹介! [本ノンフィクションいろいろ]

移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活

移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活

  • 作者: 高野 秀行
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/11/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
7点

成田にあるタイ寺院には、タイ人が集い、西葛飾にヒンドゥー教寺院は、
日本でありながら、インドにいるような雰囲気に。
沖縄県日系ブラジル人は、鶴見コミュニティを作り、ロシア正教会では、昔ながらの祈りが捧げられ、
中華学校では、お弁当は必ず温める

日本に移り住んできた人々のコミュニテイは、各国の文化を色濃く残し、
日本でありながら、異国の様相を示している。

タイトルは、「移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活」であるが、
彼らの食生活を通して、彼らの日本での生活や文化を紹介しているルポで、
食生活については、表面的で、それほど詳しく語られていない。
というか、著者が食について語れるほど、食に対する知識が無いって感じがした(^^;)。
キムチの「熟成の度合いで味の変化を楽しむ」要素を、日本には無い文化と評したり
(日本だって、自分で漬物を漬けている人は、同じ事を体感している)、
他でも、著者の食に対する知識の浅さが見える表現がちらほら。

でも、国によって違う人々の考え方、日本での独自の生活などが、紹介されていて面白く読めた。

特に印象的だったのは、インド人の話。
日本にあるヒンドゥー教の寺院は、ヒンドゥーはヒンドゥー系でも、
新興宗教「ハレークリシュナ」のものばかり。
それが「ヒンドゥー教寺院」を名乗っている。
日本で言えば、天理教などが「仏教寺院」を名乗っているようなものと、著者は言う。
日本人なら、これは「仏教ではない」と行かないだろうが、インド人は気にしない。
それについてあるインド人に「インド人は寛容だ」と伝えると、
「インド人は『寛容』なのではなく、『排他的ではない』だけ」と答えたという。
「寛容」は「相手が間違っていても許す」態度、
「排他的ではない」は、「いろんな考え方があって、どれが正しいとか間違っているの
ではなく、どれも正しいことを理解する事だ」とのこと。

以前、別の本でインドのことを読んだ時、高貴だと崇められるグルが金儲けに奔走するという、
日本人なら相反すると感じることをインド人が認めていて、不思議だったんだけど、
この辺の考え方から来るんじゃないかと思った。
でも、インドでは、相変わらず親族殺人(娘がカーストの違う男性と恋愛した事により、
家族に殺害される等)も田舎では多いらしく、これですんなりインド人の事がわかったわけでも
ないんだけど。

以前「だれも知らなかったインド人の秘密」(リンク先感想)を読んだ時思った、
インド人の不可思議さの答えの一つが、この本でわかった気がした。

他にもロシア正教会の事や、ムスリムに寿司好きが多い事など、いろいろ興味深い記述が。
日本のあちこちで、いろいろな外国人コミュニテイが形成されているということ、
身近に自分の知らない世界が作られていることを実感できる本で、面白く読めました。

「三つ星レストランの作り方: 史上最速でミシュラン三つ星を獲得した天才シェフの物語」石川拓治著:シェフ米田肇の伝記的本 [本ノンフィクションいろいろ]

7点

電子機器メーカーをやめ、フランス料理の世界に飛び込んで、たった12年ほど、
そして自分のフランス料理の店をオープンさせて1年5ヶ月目に、
ミシュランの三つ星を獲得したという米田肇氏の、波瀾万丈の人生を描いた本。

最初の章は、米田肇氏の作る、何通りもの加熱方法を駆使し、
部位ごとに完璧な火の通りに調整された、子羊(だったかな?)のローストの描写があり、
無茶苦茶美味しそう!!

フランス料理に関して、子羊のローストのエピソードのような、
知られざる工夫とか、味わいとか、美味しいものとか、そういうエピソード満載なのを
期待して読んだんだけど、料理の描写は多々あれど、詳細な記述は少なく、
メインは、小学生の頃「いちりゅうのりょうりにん」に憧れ、それを、
驚くべきほどの集中力と行動力と努力、そして持ち前の恐ろしいほどの完璧主義な
性格によって、実現させたシェフ米田肇氏の、軌跡が描かれた一冊。

どこまでもどこまでもどこまでも目的に向かって進んでいく米田肇氏の姿は、
「すごい!!」と思えるけど、すでに目的に向かって進むより、安穏とした日々を過ごしたい
私にとっては、読むのが遅すぎな本という感じ。
私は、美味しい料理の詳細が、たくさん読みたかった(^^;)。

「肉を切る」ただそれだけの事でも、びっくりするぐらい奥深い事や、
フランスと日本の料理人の修行の違い(見て覚える日本と、なんでもかんでもオープンに
教えてくれるフランス)、他にもフランス料理に関する面白いエピソードが入っていて、
面白く読める部分も多かったけど、やっぱりメインは、米田氏の軌跡。

「これから何かをしよう!!したいっ!!」って、若い人に読んで欲しい。
ただ、スポーツもできるし、絵も上手、そして勉強もできる(やればすぐ身につくタイプ)と、
米田肇氏はもともとなんでもこなせるタイプなのに、
それに加えて常人離れした努力もしているので(常人離れした思い込みの強さもあり、
それによって躓いたエピソードなども入ってますが)、
自分とは違い過ぎる、こんなの無理・・って、思っちゃう人もいるかも(^^;)。

エジソンの「天才は1%のひらめきと99%の汗」の言葉、解釈は2通りあるけど、
その片方、「99%の努力があっても1%の閃きがなければ無駄」なんじゃ・・・と思えたりしたし。
そう思えてしまうのが歳なのかもなぁ・・・(-"-;A。
前の30件 | - 本ノンフィクションいろいろ ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。