So-net無料ブログ作成
検索選択
本:文芸 ブログトップ

「怪物はささやく」パトリック・ネス著:「喪失と浄化の物語」・・・・読み終わると、その意味がわかる!切なくて辛くて優しい本! [本:文芸]

怪物はささやく

怪物はささやく


8点

早逝した作家、シヴォーン・ダウドの未完の作品を原案に書かれた一冊。

13歳の少年コナーの元に、ある夜怪物が訪れる。
怪物は3つの物語をコナーに話すかわりに、4つ目の物語をコナーに語れとささやく。
怪物の語る物語とは。そして、コナーが語らなければいけない物語とは・・・。

表面に見えているものと、裏側にあるものは違うことがある、
視点を変えれば同じ事でも評価が変わってくる、
人には多面性がある・・・・、そんな事柄を、切なさと辛さと悲しさと優しさを
織り交ぜながら、じんわりと認識させてくれる一冊。

添えてあるイラストは白黒で不気味なタッチ、ストーリーの大筋もホラーのようで、
そうでもない・・・、先が見えにくい話だったけど、
読み終わると、「ああ、そうだったんだ」と思える内容で面白かった。

絵本仕立てだけど、小学生よりは、中高生ぐらい、思春期の難しい時期の
子どもたちに読んで欲しい一冊!!
もちろん、大人も楽しめます♪

「シスターズ・ブラザーズ」パトリック・デウィット著:イカれた殺し屋兄弟、ゴールドラッシュのサンフランシスコへ! [本:文芸]

シスターズ・ブラザーズ

シスターズ・ブラザーズ

7.3点

ずる賢い冷血漢の兄チャーリーと、心優しいけど、切れると大変なことになる弟イーライ。
殺し屋であるシスターズ兄弟は、雇い主である「提督」の命令の元、ある男を殺すために、
ゴールドラッシュで沸き立つサンフランシスコへ向かう。

「西部劇」ではあるけど、主人公の二人はもちろん、登場するのはイカれた人ばかり。
一攫千金を夢見、成功したものは下品にそれを誇示し、成功者に媚びへつらうものもあれば、
夢破れて狂う者もいる。
強盗も頻発し、殺人だって当たり前、そんな生き馬の目を抜く(実際抜くシーンもあるんですが(^^;))
ような世界を旅する二人。
しかーし、そこに緊迫感はあまり無し。
というのも、語り手が、少し愚鈍で心優しい弟イーライだから。
その間の抜けた様な語り口が、本来なら、ドロドロとして陰惨なシーンの描写も、
手に汗握る絶対絶命の状況も、変にコミカルな雰囲気にしてくれている。
そして、それがまたこの小説の良さでもある。

殺し屋専門のレストランを舞台に、イカれた殺し屋ばかり登場する平山夢明の「ダイナー」(リンク先感想)に
比べると、登場人物のイカれっぷりはかなり弱いけど、それでも、「ダイナー」でも感じた、
イカれた奴らの醸し出す、人間としての純粋さや、それ故の悲しさが全編に漂い、
欲望に満ち溢れた殺伐とした世界と、人間らしさの対比が際立つ。

何故相手を殺さなければいけないかも不明な、殺し屋兄弟二人の珍道中。
騙し騙され、襲い襲われ、アメリカのゴールドラッシュ時代の旅は、
この作品の登場人物のようにイカれた奴らばかりではなかったろうけど、
それでも、命がけの旅、すごく危険だったろうなーというのも、想像できる。

不思議な魅力があった作品。
特に、心優しくて、使えない馬を大事にし、自分の稼ぎはすぐ人に分け与えてしまったりするのに、
目撃者である、でも罪はない少年をサラっと殺しちゃったりする、イーライのキャラクターが良かった。
面白く読めました(^^)。

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」村上春樹著のamazonのレビューが確かに面白い!! [本:文芸]

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年



出版不況の中、発売日に大行列だった村上春樹の新作「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」。
何で村上春樹ってこんなに人気があるんだろ??と思ってたんだけど、
爆笑問題が「村上春樹」にかみ付く 「人気支えているのはファッションとして読む人たち」』という
記事を読んで、そういうものなのか~と中途半端にだけど納得。

ただ、自分はどうも村上春樹は苦手。
そして、何故苦手なのか、すっごく納得できる答えが、amazonレビューにあったっ!!
1万人以上が高評価! 村上春樹の新作に寄せられた低評価レビューが 秀逸すぎると話題に「本編より面白い!」というのが、
ロケットニュースで紹介されてて、該当レビューを読んだんですが、確かに面白い!!!

そして、自分が何故村上春樹がダメなのかもわかった。
大仰すぎる上、オシャンティー過ぎるからだっ!!
後、ありえねーって思うからかも。

昔から話題だった村上春樹。
しかし、2冊くらいチャレンジしたけど、最初の方で挫折し、一冊も読んでません(^^;)。
「文章が苦手で、読んでてすごくイライラするから」というのが漠然とした理由だったんだけど、
その理由を的確に、amazonのレビューが書いてくれてて、なるほど~と思った。

いやー、このレビュー面白かった!
でも、ネタバレもしっかり書いてあるので「色彩を持たない多崎つくると、
彼の巡礼の年」を読もうと思ってる人は、注意!

「密林の語り部」M・バルガス=リョサ著:アマゾンの未開部族の語り部となった青年を通し、未開部族の直面する問題を説く [本:文芸]

密林の語り部 (新潮・現代世界の文学)

密林の語り部 (新潮・現代世界の文学)

7.5点

少し前文庫版「密林の語り部 (岩波文庫)」も出ました。

ラテンアメリカ文学は、ボルヘスしか知らないし、彼のは幻想文学しか読んでいないので、
普通の長編小説を読むのはこれが始めて。

この本はフィクションだけれど、アマゾンの未開の先住民たちに対して、
侵略してきた白人達や、文明化された人々がどんなことを行ったのか、
先住民たちがどんな悲惨な目にあったのかが(北アメリカのインディアンと同じような感じ)
書かれており、歴史的・文化人類学的側面も持っている。

マスカリータと周囲から呼ばれる、顔半分が醜い痣に覆われたユダヤ人の青年。
彼は、アマゾンに暮らす未開の人々に惹かれ、そこに足蹴く通うように。
作中で語られる「マチゲンガ族」達の伝説と話。
それは、時間の流れや空間を超え、神の話も、過去の話も、個人の日々の体験も、
すべてが同時に語られるものだった。
白人や文明化した人々が、アマゾンに住む未開の民族達に行った、虐殺、奴隷化、様々な弾圧・・・、
それらは、神話の中の事のようにも、語り手が実際体験したことのようにも語られる。
現代社会で、文明と接しながらも、自分達の神と共に生きる人々。
彼らを文明化したり、キリスト教を布教しようとする人々や政策に、
強く反発するマスカリータがとった行動とは・・・。

時間も空間も交じり合ったマチゲンガ族達の話は、神と共に生きるということが、
どういうことなのかを想像させてくれる。
神のお告げに従ったのか、現代人から見れば愚行にも見える、手をかけて育てた田畑を突然捨て、
放浪しだしたりする人々。
軽い病気でも、生きることを諦めてしまい、自ら症状を悪化させるような事をする人々。
自分が殺した獲物には触ってはいけないなどの様々な禁忌を、頑なに守る人々。

それは先日読んだ中世ヨーロッパの人々と信仰、物の考え方・捉え方について、
作中で語られている「灰色の季節を越えて」(リンク先感想)よりも、神があまりにも身近すぎて、
想像し難い思考・生活パターンだ(奈良平安時代の貴族の生活に近い?)。
しかし、それこそが、彼らの文化であり、生き方でもある。

またマスカリータの、「神は空気であり、水であり、本質的に必要であり、
なければ生きていけない」未開の民族の文化と、
「日常生活に何の役にもたたない抽象的な神」の現代人の文化についての言及は、
興味深かった。

徐々に文明化しつつあっても、尚神と共に生き続ける人々の姿は、
現代文明のあり方を改めて見直す視点を与えてくれる。
未開の民族が、非合理的な習慣に囚われていたり、食人の習慣が残っていたり、
タブーをおかした仲間や部外者を、問答無用で追放したり殺したりしていても、
ある視点から見れば、現代人の方がより野蛮だと思えてしまう。

自己利益の為の限りなき自然破壊、搾取・・・・それに直接関与していなくても、
今、この文明社会の恩恵を受けて暮らしている私達は、その行為の上で生活しているのだ。
神を必要としなくなった世界、タブーという歯止めがない世界は、終焉に向かって突き進んでいる気もする。

神と共存する人々の世界と、「語り部」という存在を通して語られる文学のあり方、
そして現代社会へのシニカルな視点、3つの事が融合した興味深い作品だった。
作中で語られる「語り部」の話は、時間も空間も主語も飛ぶので、ちょっと読みにくいけど、
逆に、それがまた独特の雰囲気を醸し出していて面白くもあった。

万人向けじゃないけど、上記3点やラテンアメリカ文学に興味がある人にお勧め。

アマゾンの未開の民族の生活に興味があるのであれば150日間、
アマゾンの未開の民族ヤノマミ族を取材した「ヤノマミ」(リンク先感想)がお勧め!
現代文明とは全く違う人々の価値観などがかいま見えます。

「我が家の問題」奥田英朗著:どの家庭でもありそうな悩み。物事、考え方次第なんですよね♪ [本:文芸]

我が家の問題

我が家の問題

7.5点

久々に「普通の小説」カテゴリに入る本を読んだ(^^;)。

平穏そうに見える家庭でも、1つや2つ悩みはあるもの。
そんな悩みと向き合う人々を、温かい視点で書いた短篇集。

「甘い生活?」-料理、掃除、甲斐甲斐しく尽くしてくれる妻。
甘い新婚生活なはずなのに、夫は帰宅恐怖症に。
「ハズバンド」-夫は優しくて、幸せな専業主婦だっためぐみ。しかし、夫は仕事ができず、
会社のお荷物なことに気がついてしまう・・・・。
「絵里のエイプリル」-両親が不仲で離婚を考えている事に気がついてしまった高校生の絵里は・・・。
「夫とUFO」-突然、夫がUFOが見える、宇宙人と交信できる・・と言い出した!
「里帰り」-結婚して初めてのお盆休み。お互いの実家に里帰りすることになった新婚の二人。
「妻とマラソン」-マラソンにはまる妻。その理由とは・・・・。

家庭の悩みものというと、失業とか、経時的にひっ迫しているとか、愛情が憎しみに変わったりとか、
重いものが多い気がするけど、これは、本当に、中の上くらいの、
身の丈にあった平凡な幸せで満足している普通の家庭が抱えそうな、
ちょっとした、でも当事者にとっては大問題の悩みを、丁寧に書いた作品ばかり。

細やかな心理描写のおかげで、登場人物に感情移入しやすく、また、どんな状況になっても、
夫を、妻を、親を、家族を思いやる気持ちが根底に流れていて、読んでいて温かい気持ちになる。

また、登場人物が、悩みの中でも小さな幸せを見つけだし、前向きに進んでいくのも気持ちが良い。

同じ状況でも、悪い点ばかりを見てグチグチ言う人と、良い点を探して進んでいく人がいる。
前者は、すべてが思い通りに行かない限りずっと不幸、後者は悩んでいても、その内幸せになる。
考え方・捉え方次第で、物事は変わるものなんだなーと改めて思わせてくれた本。

水嶋ヒロ(齋藤智裕)の「KAGEROU」、amazonの評価の方が面白いかも [本:文芸]

KAGEROU

KAGEROU



ホイチョイでも「あるわけないだろ」と突っ込まれていた、
話題の水嶋ヒロ(齋藤智裕)の「KAGEROU」(ポプラ社小説大賞受賞)。

本日発売で評価のほどは・・・とamazonチェックしたら、大量の★1。
でも★5も割と多く、一部ファンなどには受けてるのか?!と思ったら、
★5の評価も・・・・・(^^;)。

amazonの評価を読んでるだけで楽しい!!
駄洒落本との事だけど、買わなくても笑えるという意味では、すごい本かもしれない(^^;)。

この記事の本の画像をクリックすればamazonの評価が楽しめます♪

追記:評価の一部削除されてるらしいです。
どんどん削除されちゃうのかな?

追記2:評価どんどん削除されてますね。600近くあったのが、400未満に(18日現在)。
★5の「鍋敷きに最高!」とかも消されてしまった。
消されてしまった評価の一部はここで読めるはず。

「悼む人」天童荒太著:受け止め方はいろいろあるだろうけど [本:文芸]

悼む人

悼む人

7.5点

自殺・殺人・事故・・・人が亡くなった場所を訪れ、悼む旅を続ける静人。
彼は、死亡の原因や背景には関心を持たず、亡くなった人が、「誰に愛され」「誰を愛し」「どんなことで人に感謝されたか」を問う。
彼の行いに意味はあるのか?
彼の行為を偽善と捉えた記者の蒔野。
癌に冒され、死を目前にした静人の母。
夫を殺し、刑期を終えて出所した女。
静人と関わることで、彼の周囲にいる人の運命もまた変わっていく・・。

直木賞受賞作品。
芥川賞とか、直木賞受賞作品を読むのは珍しくて、この本の感想を書こうと思ったら、
入れるカテゴリーが無くて焦った(^^;)(どんだけ読む本が偏ってるんだ・・)。

人の死を扱った重い内容の作品なので、読む人によって、
受け止め方はいろいろだろうなーと思った。
私自身、説教臭い、夢物語っぽい、偽善的、と思う部分もあった。
しかし、そういう自分の冷めた部分を越えて、感動してしまった。

悼む人、静人の悩み・葛藤は、多くの人も感じることだと思う。
悼むという行為を通じて、生きるということや生き方そのものを、改めて考えさせてくれた本。

久々に、考え方をがつーんと刺激される本を読んだ。
お勧め!!

この本、本屋でも目立つところに置いてある事が多いし、ヒットしてるんだろう。
図書館で借りたんだけど、返しに行ったら、「早く順番が来たんですね!」とびっくりされた。
予約して3ヶ月ぐらい待ったんだけど、その時点で150人くらい待ってたはず。
今は600人以上待ちなんだって(^^;)。


「八甲田山死の彷徨」「聖職の碑」山岳小説2冊 [本:文芸]

八甲田山死の彷徨

八甲田山死の彷徨

 
聖職の碑 (1980年)

聖職の碑 (1980年)

  • 作者: 新田 次郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1980/12
  • メディア: -  8点

 

ちょびさんのブログで紹介されてた2冊を読んで見た。夏に冬山の話を読むのは涼しそうでいいかなぁという気持ちもあった。

読んでいる最中涼しさは感じず、痛い寒さを想像しちゃったんだけど、2作とも良作で満足(^^)。

両方とも映画にもなってるけど、「八甲田山・・」の方はテレビで数回、ちょっと見ただけ。

いつ見ても雪の中を歩いていて、まるで正月の駅伝中継のようだ・・・という印象しかない(爆)。

「聖職の碑」はCMをちょっと覚えてる程度で、全く見てない。

でも、この本を読んで、映画も見たいなぁと思ってしまった。


「八甲田山死の彷徨」は、雪山訓練の為、冬の八甲田山を超えようとした旧日本軍が、その認識不足、準備不足、指揮系統の乱れなどから、次々に倒れていく悲惨な状況を描いたもの。

極寒の雪の山で兵士達が、ある者は眠るように、ある者は錯乱し、ある者は突然倒れ、死んでいく。その壮絶さは、言葉を無くす。著者は、何故このような事件がおきてしまったのか、当時の日本軍の体質を踏まえながら、この悲惨な事件を描いている。

本来の責任者を差し置いて、状況をあまり知らない責任者の上官が実質的に指揮を行う事になった事が、大量遭難につながっているが、上官の指示に盲目的に従ってしまった責任者の態度には、当時の階級社会の歪みも垣間見る事ができる。

また、二つの部隊を競争させたという事も、準備不足で雪山に入る事になった要因である。

八甲田山に入った二つの部隊の内、成功した部隊の責任者の行動も興味深い。部隊の中では人徳者と見える行動をとっているのに、農民など一般の市民に接する時は、相手の立場を考えない、軍人の、権力者の顔を見せたりもする。

このギャップに違和感を感じたが、軍などの権力組織にいると、そういう事もままあるのかもしれないと思った。


 教職は聖職である

今では使う人もいないようなこの言葉がぴったりだと思える作品。生徒達の教育方針を日々考え、生徒達の為に命を投げ出した教師

人々が仕事に責任感を強く持ち取り組んでいた古き良き時代を思い出してしまった。

特に、中盤から後半の遭難シーン、生徒達の為に嵐の山の中を(夏の山ではあるが、気温は非常に低くなっており、雪山にいるのと近い状況)奔走する教師達の姿は感動的だった。

そして、真夏の8月の山でも、一度荒れれば、冬山のような極寒の地に変貌する事、その恐ろしさも感じた。

寒さのために次々に動けなくなる生徒。ちょっとした装備の差、ほんの数メートル先まで辿り付けたかどうか、それが生死を分ける山の厳しさ。そんなものも伝わってくる。

伊藤理佐のエッセイマンガ「ハチの子リサちゃん 」で、超厳しい登山修学旅行の話を読んだ時、伊藤理佐の住んでいた所がとても山の中だったから、登山修学旅行なんてあるんだ・・と思っていたんだけど、長野県ではこれを実施している学校が多いという事を後書きで知った。

さすが、日本の屋根と呼ばれる地帯にある長野県だけのことはある!と変なところで感心。

とてもいい話でした。

 

本:文芸 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。